症例紹介 在宅医療2021/11/11
パーキンソン病(YahrⅢ) 認知症ありの事例 在宅で本人・家族の希望をかなえることができ、ADLの改善に至ったケース
利用者及び家族の状況
<利用者> 88歳 男性 パーキンソン病(YahrⅢ) 認知症あり 要介護3
<家族構成> 80代の妻と次女、孫との生活 (主介護者は妻)
訪問診療開始までの経過
左大腿骨転子部骨折のため、入院されるも、入院後から認知機能低下が進み、経口摂取も進まず、リハビリに抵抗がみられた。
環境変化による認知機能の悪化で食事困難となっている可能性が高いと判断され、自宅へ退院し経過をみることとなり、在宅サービスの調整が進められ、訪問診療依頼に至った。
訪問診療開始後の経過
退院後初診の際、嚥下機能低下が著明であること、経口摂取で必要最低限のカロリーをとるのは難しそうなことなど、ご本人・ご家族の思っていた状況と実際の状態が異なることが判明。
これは退院前カンファレンスがなかったことも一因かと考えられた。
そこで、改めて現状をお伝えした上で今後、どのようにしていくかを話し合い、方針を決定した。
一時期、点滴対応の時期があったが、家族は誤嚥のリスクを承知で経口摂取を強く望まれる傾向にあった。
その後、経口摂取量低下は徐々に改善し、訪問診療が始まって約6カ月の時点で摂取良好となった。
食事摂取量の改善に伴い、痰が溜まることも増えたが、自身で対応ができている。
訪問看護、訪問マッサージ、デイサービス等を徐々に利用していくことで寝たきりになっていた時間が少なくなり、体が動かしやすくなった。
退院直後は訪問看護による摘便であったが、介入から約10カ月が経過した現在では自己排便が可能な状態になっている。
結果
本人の気力や周りのサポートにより希望通りの在宅生活ができ、食事摂取量改善に至った。
食事摂取量の改善後、訪問マッサージやデイサービスを活用することで体を動かす機会を得たこともあり、摘便が必要な状態から自己排便ができるまでになった。
★事例から学ぶ大切なポイント★
本人・ご家族の明確な意思があり、方針決定が比較的しやすかった症例。
できることを増やしていくためには地道な行動が必要であるが、医療・介護がうまく連携できたため徐々に進めていけた。
ちくさ病院 総合内科医
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