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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

①パーキンソン病の基礎知識

在宅医療の基礎知識2020/04/10

①パーキンソン病の基礎知識

パーキンソン病の基礎知識

在宅医療の現場でも介入の機会が増えてきたパーキンソン病。今までに関わったことのある関係者様も多いのではないでしょうか。しかし、実際にはパーキンソン病についてよく知らないという方も多いはず。そこで、今回はパーキンソン病の基礎的なことをお話させて頂きます。

パーキンソン病はどんな病気?

神経難病と呼ばれる病気の中でもパーキンソン病はもっとも患者数が多い疾患で、神経変性疾患に分類され、厚生労働省の指定難病となっています。人口10万人当たり100~120人の患者がいると言われており、発症年齢は50~60歳代が最も多く、且つ、男性よりも女性の患者の方が多いとされています。
通常私たちは、大脳皮質からの指令が筋肉に伝わることによって動いていますが、パーキンソン病は、大脳皮質からの伝令をスムーズにしている調整役のドパミンがドパミン神経細胞が壊れることで異常に減少し、発症します。健常者であっても年齢を重ねることでドパミン神経細胞は減少していきますが、パーキンソン病はそれが急速に減る病気で、結果として、「体がうごきにくくなる」、「震えが起こりやすい」といった症状が現れます。

パーキンソン病が発症する原因

なぜ、ドパミン細胞が減少するのでしょうか。発病のきっかけは、遺伝的要因に神経毒などの環境因子が加わって起こると考えられていますが、実はまだはっきりとはわかっていません。環境因子に関わる、食事や職業、住んでいる地域など、原因となりそうな部分の研究はされているものの、特定はできていないのが現状です。また、遺伝性に関しては、患者のほとんどが孤発性であると報告されており、遺伝性を示してはいません。α-シヌクレインというタンパク質の異常蓄積により、中脳黒質の神経細胞が少しずつ減少し、その機能が失われてくると先述のドパミンの減少を引き起こすと考えられています。

パーキンソン病はどう診断されるのか

パーキンソン病を疑うきっかけになるのが、震え、歩きにくさ、動作の遅さ、体のこわばり、ろれつがまわらないなどです。もちろん、これらの症状は他の疾患が隠れていることも多くあります。パーキンソン病と他の疾患では治療法も全く異なるため、しっかりと区別する必要があります。
どのように、パーキンソン病を適切に診断するのでしょうか。国内外でパーキンソン病の診断基準が作られていますが、診断基準に共通する点は、まず「運動症状」(※運動症状については後程説明します)の有無を確認し、続いて、パーキンソン病の裏付けとなる症状と、パーキンソン病以外の病気の裏付けとなる症状を照らし合わせて、パーキンソン病かそれ以外の病気であるかを判断します。つまり、“消去法”ですね。

◆Movement Disorder Societyの診断基準

1.動作が遅くなることを必須条とし、加えて手足や体幹のこわばり、手足の震えの2つの症状の内、少なくとも1つがあれば、「運動症状あり」と判定します。
2.「運動症状あり」と判定した場合には、パーキンソン病の可能性が高い症状(支持基準:ドパミン補充療法で効果があった、臭いがしなくなった、MIBG心筋シンチグラフィの異常など)とパーキンソン病が否定できる症状(除外基準:薬によるパーキンソン病に似た症状、3年以上続く下肢のみの症状、小脳障害など)を照らし合わせて診断を進めていきます。このように、パーキンソン病の診断は問診と診察を中心に行いますが、その判定は神経内科の専門医でも難しいケースがあります。そのため、診断をより確実なものにするために複数の検査結果を参考にします。◆主な検査の例
・MRI脳画像検査
・脳血流スペクト検査
・MIBG心筋シンチグラフィ
・ドパミントランスポーターシンチグラフィ
・嗅覚検査

パーキンソン病の症状

パーキンソン病の症状には運動症状と非運動症状があります。

運動症状

パーキンソン病の発症初期からみられる症状。特徴的な症状として、静止時振戦、無動、筋固縮、姿勢反射障害の4つです。運動症状は左右いずれか片方に発症することが多いですが、徐々に両方にみられるようになります。
・静止時振戦:何もしないでじっとしているときに震える
・無動:動きが遅い、歩くときに足が出にくくなる
・筋固縮:肩、膝、指などの筋肉が固くなって、スムーズに動かしにくい
・姿勢反射障害:姿勢が崩れたときに転倒しやすくなる

非運動症状

運動症状の他にみられる症状
・自立神経症状:便秘、頻尿、起立性低血圧・食事性低血圧、発汗、むくみ、冷え、性機能障害
・認知障害:遂行機能要害、物忘れなどの認知症症状
・嗅覚障害:においがしない
・睡眠要害:不眠、傾眠
・精神症状:うつ、不安症状、アパシー、幻覚・錯覚、妄想
・疲労や疼痛、体重減少

パーキンソン病の薬物療法

ドパミン系薬剤

・L-ドパ
パーキンソン病治療の中心となる薬剤。L-ドパは脳内で代謝されドパミンに変わり効果を発揮します。効果の出現が早く、ほぼすべての患者に有効ですが、長時間使用を続けると運動合併症がでる可能性があります。・ドパミンアゴニスト
ドパミン受容体作動薬ともいわれる。脳内でドパミンと同じようにドパミン受容体に結合し効果を発揮する。L-ドパと比べると運動合併症を生じにくい反面、それぞれのドパミンアゴニストに使用上の注意があるため、患者ごとに使い分けられている。徐放材や、貼付材もあり、より安定した効果が期待できるようになっている。

非ドパミン系薬剤

・MAO-B阻害薬
ドパミンを脳内に長く留まらせる
・COMT阻害薬
脳の中へ移行するL-ドパを増加させる
・アマンタジン
脳内のドパミン神経からのドパミン分泌を促進します
・抗コリン薬
ドパミン減少に伴って相対的に過剰になるアセチルコリン(もう一つの伝達物質)を抑えて、両者のバランスをとる
・ドロキシドパ
減少しているノルアドレナリンを補充します
・ゾニサミド
運動合併症(ウェアリングオフ)を改善する
・アデノシン受容体拮抗薬
ドパミンと反対の作用をするアデノシンを抑えることでドパミンとのバランスを回復します。

まとめ

今回は、パーキンソン病の基礎知識のまとめをお届けしました。パーキンソン病は神経難病の中でも最も研究が進んでいる疾患と言われています。しかしながら、未だに多くの人々を苦しめている病気です。現段階では「治癒」よりも「症状緩和」を目指すことが治療の目標となっています。パーキンソン病という難病を抱えた方々が少しでも自分らしい生活を続けていけるよう私たちが力を合わせてサポートしていかなければなりません。