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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

症例紹介 在宅医療2021/11/05

パーキンソン病と直腸癌末期を抱えながら独居で在宅生活を続けているケース

利用者及び家族の状況

利用者 73歳 男性 独居 妻は死別 いとこが唯一の身寄り

主病

主病 パーキンソン病 直腸癌末期 転移性肺腫瘍 人工肛門増設

依頼までの経過

便通過障害回避のために2020年11月18日に東部医療センターに入院し、11月30日腹腔鏡下人工肛門増設術施行。

S状結腸双孔式ストマ増設。

経過良好であり、2020年12月28日自宅退院。

退院時のタイミングに合わせてまずはストマ管理支援のために訪問看護サービス導入し介入を開始。

その時点でのADLは自立。

パーキンソン病治療のため東部医療センターの神経内科通院にて投薬。

肛門部からの腫瘍突出があるが手術による切除は困難。

リハビリパンツ使用下、浸出液や擦れにて時々出血している状態。

疼痛強く2021年4月疼痛緩和のため肛門部腫瘍に対し放射線治療実施。

前立腺への癌転移あり2021年1月より泌尿器科にてリュープリン注射、ビカルタミド内服開始。腫瘍熱と思われる37~38度の発熱を繰り返したためロキソニンと頓服にて対応。

ストマパウチは週3回交換。円背や手指振戦、座位保持による肛門疼痛強くパウチの交換が一人で困難であり、訪問看護での介助が必要な状態。皮膚トラブルも多く適宜軟膏使用しスキンケア実施している状況であった。

2021年7月、それまで外来のみでのフォローを継続していたが、振戦強く通院の負担大きいと主治医が判断し、訪問診療の導入を提案。本人も通院困難感を強く訴えたため、ちくさ病院にて訪問診療開始となる。

介入時の状態

パーキンソン病 Yahr分類3.5 2009年~T病院脳神経内科がかかりつけ

2009年頃からの歩行障害にて発症した。

T病院の脳神経内科にてこれまで通院加療していた。

Wearing offとpeak-dose dyskinesiaも認められおり、適宜薬剤調整していた。

直腸癌末期状態(肛門浸潤、前立腺浸潤、多発性肺転移)2020年11月~

人工肛門増設状態(腹腔鏡下人工肛門増設術、S状結腸双孔式ストマ)2020年11月30日~ T病院 外科かかりつけ ストマパウチは週3回交換。

肛門部はロゼックスゲルとジフルプレドナート塗布

前立腺癌 2020年~直腸精査中に発見。重複癌。T病院泌尿器科かかりつけ

ビカルタミド内服+リュープリンPRO皮下注射

訪問診療開始後のこれまでの経過

初回訪問 21年7月7日

四肢のジスキネジア(不随意運動の一つ)が出ており、書類を取りに行かれる際も這って室内を移動していた。

パウチは円背と汗で剥がれやすい状態となっており、汚染も強い。

肛門部に関しては、オムツを装着しており、腫瘍は出ているがかなり小さくなっていると訪問看護師さんより報告あり

評価

肛門周囲部びらんや発赤などあり。放射線障害+軟便によるかぶれや真菌感染も合併している可能性あり。

肛門部の疼痛は放射線治療後から軽快。

医療用麻薬は未使用だが、初診時時点ではまだ不要と判断。

パーキンソンの症状は内服薬の追加でoff症状(症状が急に悪くなる状態)が軽快されている様子がみられた。

ジスキネジアはあるが、off症状が強ければ状況をみてDOPA(パーキンソン病の症状緩和を目的とする治療薬)を増量する方針(紹介状には、まずは夕食時のDOPA増量を考慮と記載あり)

21年7月20日 訪問時

本人より夜のパーキンソンのふるえが目立つと訴えあり。

四肢のジスキネジアは出ているが前回よりも少ない印象。

歩行にて2階に仕事用のカメラを取りに行くことができた。

肛門周囲部びらんや発赤などあるが、亜鉛華軟膏や抗真菌薬塗布開始でかなり軽快がみられ安定している。

21年7月27日 訪問時

ライカや2眼レフカメラなどを持ってきて写真の話を楽しそうにされる。

食事量も変わりなくよく食べられているご様子。

パーキンソン症状に関しては夜の不随意運動が全身に出ており、本を読もうと思っても読めない。16時~18時頃ジスキネジアが出現することもあると訴えあり。

肛門周囲部びらんは以前よりは改善しているが、少し痛みあり。

ジスキネジアあり、動きづらい時間も一日に複数回あり、“本を読む”、“時計のばねを入れ替える”などの作業ができなくなっているとの訴えなどより、夕食後のメネシットを増量(0.5T追加)することとした。

それまで

・メネシット配合錠100 1錠 分1 起床時

・メネシット配合錠100 1錠 分1 昼食後

・メネシット配合錠100 0.5錠 分1 15時内服

・メネシット配合錠100 0.5錠 分1 夕食後

21年8月3日 訪問時

薬を増量したが、「今のところ手足の使いやすさは劇的に変わりはない」とのこと。

肛門部びらんも含めて、経過観察とした。

21年9月7日 訪問時

本人よりパーキンソン症状に関して、「夕方の薬を増やしてから調子が良い気がする」とのこと。「朝のこわばりもなくなりました」と報告あり。

肛門周囲部に関しては座ると軽度の痛みはあるが、痛み止めを使わなくても良い程度まで軽快している様子。

状態としては非常に安定している。

21年10月19日 訪問時

パーキンソン症状、全身状態ともに非常に安定している状態が続いている。

本人より、気温の変動にてパーキンソンのすくみ足が目立つとのことで訴えあり。

まずは薬の増量よりも室温調整などをお願いした。

以上。

結果

パーキンソン病症状と直腸がん起因の肛門周辺部のトラブルをフォローしながら、自宅で過ごしたいという患者様を支えている事例です。

ケアマネージャーさんを中心に、適宜サービス担当者会議を行うことはもちろん、ACPのノートを本人様了承のもとで作成し、チーム全体で共有することで、「今」本人が望んでいることや、不安に思っていることなどをキャッチアップしながらQOLの向上に努めています。

現在はパーキンソン症状、肛門周囲部のトラブルも軽快してきており、本人様も安定して過ごされています。

ちくさ病院 総合内科医

 

【パーキンソン関連情報】ちくさ病院コラム

 

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