在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/09/28
通院負担の軽減と慢性疾患管理を目的に、訪問診療へ移行した心不全・皮膚疾患患者の事例
要点サマリー
慢性心不全とアレルギー性皮膚炎を有する78歳女性に対し、本人の身体機能低下と家族の通院同行負担を契機として訪問診療を導入した事例である。病状は比較的安定していたものの、外出準備や移動、待ち時間を含めた通院そのものが負担となっていたため、月1回の訪問診療を基本として慢性疾患管理を継続した。心不全については体重、浮腫、呼吸状態などを確認し、皮膚症状については皮疹や掻痒感、外用薬の使用状況を評価した。ケアマネジャーにとっては、病状の重症度だけでなく、本人・家族にとって通院という方法を無理なく継続できるかを評価し、状態が安定している段階から訪問診療を選択肢として検討することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:78歳・女性
居住地:名古屋市内
世帯構成:親子
キーパーソン:長女(別居)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療制度
介護保険:要介護1
診断名
・慢性心不全
・アレルギー性皮膚炎
・高血圧症
・脂質異常症
導入の背景
慢性心不全に対して外来通院を継続し、定期的な診察と内服治療によって比較的安定した状態を維持していた。
しかし、身体機能の低下に伴って歩行速度が低下し、外出時には休憩を必要とするようになった。診察そのものだけでなく、自宅から医療機関までの移動、受付、待ち時間などを含めると、通院が本人にとって大きな負担となりつつあった。
これまでは同居する次女が通院に同行していたが、仕事や予定を調整する必要があり、家族側の負担も増加していた。
一方、本人は基本的な日常生活動作を維持しており、できることは自分で行いながら、住み慣れた自宅で生活を続けたいという希望を持っていた。頻回なサービス利用や施設入所を希望している状況ではなかった。
また、アレルギー性皮膚炎については、季節や体調によって皮疹や掻痒感が変動するため、外用薬の使用状況を含めた継続的な評価が必要であった。
本人・家族と相談し、病状が大きく悪化する前から訪問診療へ移行することで、通院負担を軽減しながら慢性疾患管理を継続する方針となった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、血圧、脈拍、体重、呼吸状態、下肢浮腫などを確認し、慢性心不全の状態を継続的に評価した。
服薬状況についても確認し、本人が無理なく治療を継続できているかを把握した。ある訪問時には、本人から夕方の下肢浮腫について相談があり、診察で軽度の浮腫を認めた。体重推移や食事・水分摂取状況、服薬状況を確認し、大きな呼吸困難は認めなかったことから、心不全増悪の可能性を念頭に経過を観察した。
家族には、急な呼吸苦、短期間での体重増加、浮腫の増強など、心不全悪化時に注意すべき変化を具体的に説明し、異常時には本人だけで判断せず相談するよう共有した。
アレルギー性皮膚炎については、皮疹、発赤、乾燥、掻痒感などを確認し、外用薬の使用状況を評価した。症状が改善すると本人が自己判断で外用薬を中断することもあったため、訪問看護とも情報を共有しながら、症状に応じた使用方法を確認した。
その後も心不全に大きな増悪はなく、皮膚症状についても必要に応じて訪問看護と連携しながら対応した。月1回の訪問診療を基本とすることで、本人は通院負担を減らしながら定期的な医学的評価を受けることができ、次女の通院同行負担も軽減した。
医療対応の詳細
主病
慢性心不全、アレルギー性皮膚炎
対応内容
・血圧、脈拍、体重の定期的な確認
・呼吸困難、下肢浮腫、体重増加など心不全増悪兆候の評価
・服薬状況の確認
・心不全治療薬の継続および必要時の調整
・皮疹、発赤、乾燥、掻痒感など皮膚状態の評価
・外用薬の使用状況の確認
・季節や体調による皮膚症状の変化への対応
・訪問看護との情報共有
・家族への心不全悪化サインの説明
・状態変化時の相談・診療体制の確保
医療処置
該当なし
支援のポイント
・病状が安定していても、通院そのものが本人や家族の負担となっていないかを確認する
・通院可能かどうかだけでなく、外出準備、移動、待ち時間、受診後の疲労まで含めて評価する
・家族が通院同行を継続できることを前提とせず、就労や生活への負担を確認する
・心不全では、自覚症状だけでなく体重や浮腫など客観的な変化を継続的に確認する
・家族に相談すべき症状を具体的に伝え、状態変化を抱え込まない体制を整える
・慢性皮膚疾患では、症状改善後の自己中断も想定し、外用薬の使用状況を継続して確認する
・本人の自立性を維持するため、必要以上にサービスを増やさず、状態に応じて訪問看護などを組み合わせる
考察
本症例は、重篤な病状悪化を契機とするのではなく、本人と家族にとって外来通院の負担が大きくなった段階で訪問診療へ移行した事例である。
訪問診療の必要性は、寝たきりや終末期といった状態だけで決まるものではない。日常生活の多くを自立して行えていても、医療機関まで移動し、待ち時間を経て診察を受ける一連の行動が大きな負担となる場合がある。特に家族の同行によって通院が成立している場合は、本人のADLだけでなく家族の負担も含めて評価する必要がある。
また、本症例では月1回の訪問診療を基本としながら、心不全の増悪兆候や皮膚症状の変化を確認した。病状が比較的安定しているからこそ、過剰な介入ではなく、本人の生活を維持できる頻度で医療との接点を確保することが重要であった。
ケアマネジャーにとっては、「まだ通院できるから訪問診療は早い」と判断するのではなく、現在の生活を維持するために通院という方法が適切かを考える視点が重要である。病状が大きく悪化する前から訪問診療へ移行することで、本人の自立した生活を保ちながら、家族の負担軽減と慢性疾患の継続管理を両立できる可能性がある。
付記情報
・診療科:内科、循環器内科、皮膚科
・病態・症状:心不全、その他
・世帯構成:親子