在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/09/08
専門外来での治療を在宅医療へ引き継ぎ、通院負担を軽減した慢性疼痛患者の事例
タイトル
専門外来での治療を在宅医療へ引き継ぎ、通院負担を軽減した慢性疼痛患者の事例
要点サマリー
慢性腰痛と変形性膝関節症を有する80歳男性に対し、今後の通院負担増加を見据えて訪問診療を導入した事例である。これまで整形外科へ定期通院し、膝関節注射を含む治療を受けていたが、身体機能の低下により本人の通院負担が大きくなり、遠方に住む長女による通院支援にも限界があった。そこで、膝関節注射に対応可能な医師を訪問診療の主治医とし、専門外来で行っていた治療を在宅へ引き継ぐことで、必要な治療を維持しながら整形外科への定期通院を終了した。ケアマネジャーにとっては、訪問診療導入時に既存の治療内容を整理し、在宅で継続可能な医療を確認することで、本人・家族双方の通院負担を軽減できることを示す症例である。
基本情報
年齢・性別:80歳・男性
居住地:該当なし
世帯構成:夫婦のみ
キーパーソン:長女(別居・遠方在住)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険1割
介護保険:要介護1
診断名
・慢性腰痛
・変形性膝関節症
導入の背景
慢性腰痛と変形性膝関節症に対し、整形外科へ定期的に通院し、疼痛管理や膝関節注射などの治療を継続していた。
しかし、身体機能の低下に伴い、今後も外来通院を継続することが本人にとって大きな負担となることが予測された。また、同居する妻も高齢であり、遠方に居住する長女が継続的に通院同行することにも限界があった。
一方で、通院を減らすために訪問診療へ切り替えることで、それまで整形外科で受けていた治療が中断されることは避ける必要があった。
そこで、膝関節注射にも対応可能な医師を訪問診療の主治医とし、日常的な健康管理と整形外科領域の治療を自宅で継続できる体制を整えたうえで、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、慢性腰痛や変形性膝関節症による疼痛の程度、歩行状態、活動量、日常生活への影響を継続的に確認した。
これまで整形外科で受けていた膝関節注射についても、訪問診療時に実施できる体制を整えた。これにより、必要な疼痛治療を維持しながら専門外来への定期通院を終了することが可能となった。
日常的な全身管理と慢性疼痛への対応を訪問診療の中で一体的に行うことで、本人の身体的な通院負担だけでなく、家族による通院支援の負担軽減にもつながった。
また、遠方に居住する長女とは必要に応じて本人の状態や治療方針を共有し、直接的な通院介助を行わなくても療養状況を把握できる体制を整えた。
医療対応の詳細
主病
慢性腰痛、変形性膝関節症
対応内容
・慢性腰痛および膝関節痛の継続的な評価
・疼痛コントロール
・歩行状態、活動量、ADLの確認
・変形性膝関節症に対する膝関節注射
・専門外来で行われていた治療内容の引き継ぎ
・日常的な全身状態の管理
・遠方に居住する長女への情報共有
医療処置
・膝関節注射
支援のポイント
・通院が完全に困難となる前から、今後の通院継続可能性を評価する
・訪問診療導入前に、専門外来で受けている診察や処置の内容を具体的に整理する
・在宅で継続可能な治療と、引き続き専門医受診が必要な治療を区別する
・必要な処置に対応可能な医師を調整することで、治療を維持しながら通院回数を減らす
・疼痛だけでなく、歩行能力やADLへの影響を継続的に確認する
・遠方家族については直接的な介護力だけで評価せず、情報共有を通じて療養支援に参加できる体制を整える
考察
本症例は、単に通院困難を理由として訪問診療へ切り替えたのではなく、専門外来で行われていた治療を在宅医療へ引き継ぐことで、治療の継続性と通院負担軽減を両立した事例である。
訪問診療への移行を検討する際には、疾患名や処方薬だけではなく、現在どの医療機関でどのような処置や治療を受けているのかを把握することが重要である。専門外来で行われている治療の中にも、対応できる医師や体制を整えることで在宅へ移行できるものがある。
本症例では、膝関節注射に対応可能な医師が訪問診療を担うことで、整形外科への定期通院を終了しても必要な治療を継続することができた。結果として、本人の身体的な負担と家族の通院支援負担の双方を軽減することにつながった。
ケアマネジャーにとっては、「通院できなくなったら訪問診療へ変更する」という視点だけでなく、現在受けている医療のうち何を在宅へ移行できるのかを事前に整理し、本人にとって無理の少ない診療体制を医療者とともに設計することが重要である。
付記情報
・診療科:内科、整形外科
・病態・症状:その他
・世帯構成:夫婦のみ