在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/07/27
在宅輸血を含む療養計画を立てたものの、病状悪化により病院での看取りとなった骨髄異形成症候群患者の事例
要点サマリー
骨髄異形成症候群・骨髄増殖性腫瘍により、貧血、血小板減少、白血球増加が進行していた88歳男性に対し、自宅療養と輸血継続を目的として訪問診療を導入した事例である。基幹病院では赤血球および血小板輸血を定期的に受けていたが、病状悪化と通院負担の増大を踏まえ、在宅輸血を含む支援体制を検討した。しかし、訪問診療初診後にめまいが出現し、家族の希望で基幹病院を受診した結果、そのまま入院となり、病院で最期を迎えた。ケアマネジャーにとっては、在宅療養を希望していても病状の進行によって方針変更が必要となることを前提に、本人・家族の希望と安全性の双方を継続的に確認することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:88歳・男性
居住地:名古屋市東区
世帯構成:夫婦のみ
キーパーソン:妻(同居)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険1割
介護保険:要介護2、負担割合1割
診断名
・骨髄異形成症候群・骨髄増殖性腫瘍
・脾腫
・高血圧症
・高尿酸血症
導入の背景
骨髄異形成症候群・骨髄増殖性腫瘍に対し、基幹病院の血液内科へ通院し、赤血球および血小板輸血を定期的に受けていた。
経過中に右上肢を中心とした発赤、腫脹、疼痛と高熱が出現し、重症蜂窩織炎の診断で入院治療を受けた。その後、一度は自宅へ戻り、基幹病院での外来診療を再開した。
白血球数の増加に対してヒドロキシカルバミドによる治療が継続されたが、貧血と血小板減少も進行しており、薬剤の増量は困難な状態であった。末梢血中の芽球やLDHの上昇もみられ、原疾患の著明な悪化が疑われた。
通院による輸血継続が徐々に困難になることを見据え、自宅療養と在宅輸血を含む医療体制の構築について相談があり、訪問診療導入に至った。
妻が主たる支援者であったが、高齢夫婦のみの世帯であり、他県に住む子どもたちからの支援も安定していなかったため、妻の介護負担や急変時対応を含めた支援体制の整理が必要であった。
介入内容と経過
訪問診療では、基幹病院から輸血の実施目安や治療内容について情報提供を受け、血液検査結果と全身状態を確認しながら、自宅で輸血を継続するための計画を検討した。
赤血球輸血についてはヘモグロビン値、血小板輸血については血小板数を目安とし、基幹病院と訪問診療側で役割や対応方法を共有する方針とした。あわせて、白血球数や貧血、出血傾向、感染症状などの変化を確認し、妻が急変時に相談できる連絡体制の構築を進めた。
しかし、訪問診療初診の翌朝にめまいが出現した。家族の希望により基幹病院を受診したところ、外来での対応は困難と判断され、そのまま入院となった。
病状は進行しており、訪問診療による在宅輸血を開始する前に、入院中に最期を迎えた。在宅療養計画を立てていたものの、本人の状態と家族の希望に応じて病院での療養へ方針を変更した事例である。
医療対応の詳細
主病
骨髄異形成症候群・骨髄増殖性腫瘍
対応内容
・貧血、血小板減少および白血球増加の病状評価
・血液検査結果に基づく輸血必要性の検討
・ヒドロキシカルバミドの内服状況と治療経過の確認
・感染症状、出血傾向、めまいなどの状態変化の評価
・基幹病院血液内科との診療情報共有
・在宅輸血の実施方法と支援体制の検討
・妻への病状説明および急変時対応の共有
・病状変化に応じた入院療養への方針変更
医療処置
輸血
※在宅での実施を計画したが、病状悪化による入院のため実施には至らなかった。
支援のポイント
・輸血を継続している患者では、通院可能性と今後の病状進行を早期から評価する
・在宅輸血を検討する際は、実施基準、検査方法、緊急時対応を基幹病院と共有する
・在宅療養の希望があっても、急変時には入院へ方針変更する可能性を事前に説明する
・本人と家族が在宅療養に何を期待しているかを確認し、輸血実施そのものを目的化しない
・高齢の妻だけに観察や判断を委ねず、子どもや医療機関を含めた連絡体制を整理する
・在宅での看取りに至らなかった場合も、療養場所の変更を支援の失敗と捉えず、安全性と家族の希望に沿った結果として評価する
考察
本症例は、進行する血液疾患に対して在宅輸血を含む療養体制を検討したものの、訪問診療開始直後の病状悪化により、病院での看取りとなった事例である。
在宅医療導入時には、自宅で過ごすことを目標としていても、病状が急速に変化し、計画どおりに在宅療養を継続できないことがある。特に骨髄異形成症候群・骨髄増殖性腫瘍では、貧血、出血、感染、白血球増加など複数の問題が同時に進行する可能性があり、在宅で対応できる範囲を継続的に評価する必要がある。
在宅輸血は通院負担を軽減し、自宅療養を支える選択肢となり得る一方、輸血前後の観察、急変時対応、基幹病院との連携など、十分な体制整備が求められる。本症例では実施前に入院となったが、訪問診療側と基幹病院が情報を共有し、病状に応じて速やかに療養場所を変更したことには意義がある。
ケアマネジャーにとっては、在宅看取りの実現のみを目標とせず、本人の状態と家族の不安に応じて療養場所を柔軟に見直し、どの場所でも本人と家族が安心して過ごせるよう支援する視点が重要である。
付記情報
・診療科:内科、血液内科
・病態・症状:がん
・世帯構成:夫婦のみ