在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/07/27
慢性呼吸不全終末期の高齢男性に対し、在宅酸素療法と緩和ケアを併用しながら自宅看取りを支えた事例
要点サマリー
慢性心不全、COPD、慢性呼吸不全により呼吸苦が進行していた80歳男性に対し、在宅酸素療法と緩和ケアを中心とした訪問診療を導入した事例である。本人は自宅での療養継続と看取りを希望しており、同居する長男、次男と療養方針や急変時対応を共有しながら支援体制を構築した。ケアマネジャーにとっては、慢性呼吸器疾患の終末期において、治療の継続だけでなく、呼吸苦を軽減しながら本人が望む場所でどのように過ごすかを早期から家族と共有することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:80歳・男性
居住地:該当なし
世帯構成:親子
キーパーソン:長男(同居)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険
介護保険:要介護3
診断名
・慢性心不全
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・慢性呼吸不全
導入の背景
慢性心不全およびCOPDに対して外来通院を継続していたが、呼吸苦や体力低下が進行し、外来受診そのものが大きな負担となっていた。
在宅酸素療法を導入していたものの、安静時にも呼吸苦がみられるようになり、症状増悪による入退院を繰り返していた。病状の進行に伴い、通院や入院を中心とした療養を継続することが、本人の身体的負担となっていた。
本人は可能な限り自宅で過ごしたいという希望を持っており、家族もその意向を尊重していた。このため、慢性疾患管理と呼吸苦の緩和を行いながら、自宅看取りも見据えた療養体制を構築する目的で訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、呼吸状態、浮腫、体重変動、全身倦怠感などを継続的に評価し、慢性心不全と慢性呼吸不全の管理を行った。
呼吸苦に対しては在宅酸素療法を継続し、本人の苦痛や生活への影響を確認しながら緩和ケアを並行して実施した。病状の改善のみを目標とするのではなく、過度な負担となる治療介入を避け、本人が自宅で穏やかに過ごせることを重視して支援方針を調整した。
長男、次男に対しては、呼吸苦の増強、意識状態や食事摂取量の変化など、終末期に起こり得る状態変化を繰り返し説明した。急変時に救急搬送を希望するか、どのような状態まで自宅で支えるかについても話し合い、家族が判断を抱え込まない連絡体制を整えた。
本人と家族が自宅で過ごすという目標を共有したことで、病状変化への不安を軽減しながら在宅療養を継続できるようになった。
医療対応の詳細
主病
慢性心不全、COPD、慢性呼吸不全
対応内容
・呼吸状態および循環状態の継続的評価
・在宅酸素療法の管理
・呼吸苦に対する緩和ケア
・浮腫や体重変動の確認による心不全管理
・本人の苦痛と生活状況に応じた治療方針の調整
・家族への病状説明および急変時対応の共有
・在宅看取りを見据えた支援体制の調整
医療処置
・在宅酸素療法
支援のポイント
・呼吸苦や体力低下による通院負担を確認し、早期に在宅医療導入を検討する
・酸素飽和度などの数値だけでなく、本人の苦痛や生活への影響を評価する
・治療継続と生活の質のどちらを優先するか、本人の意向を継続的に確認する
・家族へ終末期に起こり得る症状変化と相談の目安を具体的に説明する
・救急搬送や看取り場所に関する希望を事前に整理し、多職種で共有する
・家族が呼吸苦への対応を抱え込まないよう、緊急時の連絡導線を明確にする
考察
本症例は、慢性呼吸器疾患の終末期において、疾患の改善だけでなく、本人がどこでどのように過ごしたいかを支援方針の中心に据えた事例である。
COPDや慢性呼吸不全では、急性増悪と一時的な回復を繰り返しながら病状が進行するため、療養の最終段階を判断しにくいことがある。そのため、状態が大きく悪化してから看取り方針を決めるのではなく、入退院の反復や安静時呼吸苦がみられる段階から、本人と家族の希望を確認しておく必要がある。
訪問診療では、在宅酸素療法などの医療管理に加え、呼吸苦を緩和し、本人が望む生活を維持する役割が求められる。ケアマネジャーにとっては、医療処置の調整だけでなく、家族が病状変化を理解し、迷った際に相談できる体制を整えることが、自宅看取りを支える重要な要素となる。
付記情報
・診療科:内科、呼吸器内科、緩和ケア科
・病態・症状:心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・世帯構成:親子