在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/07/27
慢性心不全とCOPDによる救急搬送を繰り返す高齢男性に対し、早期相談体制を構築した事例
要点サマリー
慢性心不全、COPD、心房細動を有し、夜間から早朝の呼吸苦による救急搬送を繰り返していた87歳男性に対し、訪問診療を導入した事例である。在宅医療では、体重、浮腫、食欲、SpO2、呼吸状態を継続的に確認し、具体的な連絡基準を設定することで、症状増悪時の早期介入を可能とした。ケアマネジャーにとっては、急変時の対応方法を伝えるだけでなく、家族が迷わず相談できる基準と連絡先を整え、判断負担を軽減することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:87歳・男性
居住地:名古屋市緑区
世帯構成:夫婦のみ
キーパーソン:妻(同居)
保険・福祉情報
医療保険:医療保険利用
介護保険:要介護3
診断名
・慢性心不全
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・心房細動
導入の背景
妻と二人で生活しており、慢性心不全とCOPDにより、息切れや下肢浮腫を繰り返していた。特に夜間から早朝にかけて呼吸苦を訴えることが多く、そのたびに妻は、救急車を呼ぶべきか、自宅で様子を見てよいかの判断に悩んでいた。
救急搬送を4回経験しており、搬送後に入院となる場合もあれば、経過観察のうえ帰宅となる場合もあった。対応が一定しないことで、妻は体調変化をどのように判断すればよいか分からなくなり、夜間に眠ることへ強い不安を抱えるようになっていた。
本人も、呼吸苦が生じるたびに病院へ行く生活に疲れを感じていた。このため、疾患管理だけでなく、体調変化時に相談できる医療体制を整え、急変前に介入することを目的として訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、呼吸状態、脈拍、浮腫、体重、食事摂取量などを継続的に確認し、慢性心不全、COPD、心房細動の管理を行った。
訪問看護とも連携し、体重増加、浮腫の悪化、食欲低下、SpO2低下、夜間呼吸苦などの変化を継続的にモニタリングした。
妻が相談のタイミングに迷わないよう、体重が2kg増加した場合、会話時の息切れが強くなった場合、食事量が半分以下となった場合など、訪問診療へ連絡する具体的な基準を設定した。
軽度の浮腫や呼吸状態悪化の段階で相談を受け、必要に応じて薬剤を調整できる場面が増えたことで、重症化する前の対応が可能となった。結果として救急搬送は大幅に減少し、本人と妻の双方が安心して在宅生活を継続できるようになった。
医療対応の詳細
主病
慢性心不全、COPD、心房細動
対応内容
・呼吸状態および循環状態の継続的評価
・体重変動や浮腫の確認による心不全管理
・SpO2および呼吸苦の変化の確認
・心房細動を含めた脈拍と全身状態の管理
・症状増悪時の薬剤調整
・訪問看護との情報共有
・家族への症状観察方法と連絡基準の説明
・急変前に相談できる連絡体制の構築
医療処置
該当なし
支援のポイント
・救急搬送の回数だけでなく、家族が体調変化の判断に困っている状況を把握する
・体重、浮腫、食欲、SpO2、呼吸苦など、日常生活で確認できる項目を共有する
・「悪化したら連絡する」ではなく、体重増加や食事量低下など具体的な連絡基準を設定する
・軽度の変化でも相談できることを家族へ繰り返し伝える
・訪問診療と訪問看護で観察項目と対応方針を統一する
・本人の病状管理と並行して、妻の睡眠不足や精神的負担を支援する
考察
本症例は、慢性心不全とCOPDによる症状増悪だけでなく、体調変化時の判断を妻が一人で担っていたことが、在宅生活継続上の大きな課題となっていた事例である。
慢性心不全やCOPDでは、呼吸苦や浮腫などの症状が日によって変動しやすい。家族にとっては、どの程度の変化なら経過を見てよいのか、どの段階で医療者へ連絡すべきかを判断することが難しく、不安から救急要請につながる場合がある。
本症例では、訪問診療と訪問看護が具体的な観察項目と連絡基準を共有し、軽度の変化から介入できる体制を整えたことで、重症化と救急搬送の予防につながった。ケアマネジャーにとっては、家族へ判断を委ねるのではなく、迷った時点で相談できる関係と導線を構築することが重要である。
付記情報
・診療科:内科、循環器内科、呼吸器内科
・病態・症状:心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・世帯構成:夫婦のみ