在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/07/15
レビー小体型認知症による夜間不穏と老老介護負担に対し、介護者支援を含めた訪問診療を導入した事例
要点サマリー
レビー小体型認知症と慢性心不全を有し、幻視や夜間不穏によって外来通院と在宅介護の継続が困難となっていた89歳男性に対し、訪問診療を導入した事例である。在宅医療では、認知症症状と身体状態を継続的に確認するとともに、訪問看護による不穏時対応の共有やショートステイの調整を行い、高齢の妻の介護負担軽減を図った。ケアマネジャーにとっては、本人の症状だけでなく、主介護者の睡眠不足や精神的負担を在宅医療導入の重要な判断材料として捉える必要性を示す症例である。
基本情報
年齢・性別:89歳・男性
居住地:名古屋市昭和区
世帯構成:夫婦のみ
キーパーソン:妻(同居)
保険・福祉情報
医療保険:医療保険利用
介護保険:要介護3
診断名
・レビー小体型認知症
・慢性心不全
導入の背景
妻と二人で生活していたが、レビー小体型認知症の進行に伴い、幻視や夜間不穏が強くなっていた。知らない人が家にいる、誰かが外にいると訴え、夜間に外へ出ようとする場面も増えていた。
主介護者である妻も高齢であり、夜間対応による睡眠不足が慢性化していた。転倒への不安に加え、自身が先に倒れてしまうのではないかという切迫感も強く、介護継続の限界が近づいていた。
外来受診時には待ち時間への不安から興奮が強くなり、受診後は疲弊して数日間寝込むこともあった。このため、認知症症状の管理だけでなく、介護者の負担軽減と在宅療養体制の再構築を目的として訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、自宅という本人が落ち着きやすい環境で、幻視や夜間不穏の程度、睡眠状況、生活リズムを継続的に確認した。慢性心不全についても、呼吸状態や浮腫などの身体変化を観察しながら管理を行った。
訪問看護と連携し、不穏時の対応方法を妻へ共有した。また、問題行動を抑えることだけを目的とせず、本人の不安を強めない声かけや関わり方を多職種で統一した。
妻の休息時間を確保するため、ケアマネジャーが中心となってショートステイ利用を調整した。夜間不穏は完全には消失しなかったものの、体調や対応に迷った際に相談できる体制が整ったことで、妻の精神的負担は軽減した。
結果として、施設入所を急ぐことなく、夫婦での在宅生活を継続できるようになった。
医療対応の詳細
主病
レビー小体型認知症、慢性心不全
対応内容
・幻視、夜間不穏および睡眠状況の継続的評価
・認知症症状と生活リズムの確認
・呼吸状態や浮腫など心不全増悪兆候の観察
・訪問看護と連携した不穏時対応の共有
・本人の不安を軽減する声かけ方法の統一
・妻の介護負担および休息状況の評価
・ショートステイを含めた介護者支援の調整
医療処置
該当なし
支援のポイント
・認知症症状だけでなく、主介護者の睡眠不足や精神的負担を評価する
・介護者が限界を迎える前に、訪問診療や訪問看護の導入を検討する
・不穏を問題行動として抑えるのではなく、本人の不安を軽減する関わりを統一する
・介護者が迷った際に相談できる連絡体制を明確にする
・ショートステイなどを活用し、介護者が継続的に休息できる時間を確保する
・施設入所か在宅継続かの二択にせず、在宅生活を支える体制を段階的に補強する
考察
本症例は、レビー小体型認知症による幻視や夜間不穏に加え、高齢の妻による老老介護が在宅生活継続の大きな課題となっていた事例である。
認知症支援では、本人の症状の程度だけでなく、介護者がどの程度眠れているか、相談相手がいるか、介護を継続できる余力が残っているかを評価する必要がある。介護者の負担が限界に近づけば、本人の病状が大きく変化していなくても在宅生活は継続困難となる。
本症例では、訪問診療、訪問看護、ショートステイを組み合わせ、本人への医療支援と妻の休息支援を並行して行った。ケアマネジャーにとっては、認知症の問題行動を減らすことだけでなく、家族が追い詰められずに介護を続けられる環境を整える視点が重要である。
付記情報
・診療科:内科、精神科
・病態・症状:認知症、心不全
・世帯構成:夫婦のみ