在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/07/15
外来通院が不定期化した独居高齢女性に対し、精神科的支援を含めた在宅医療介入を行った事例
要点サマリー
不安神経症により外来受診の継続が不安定となっていた71歳独居女性に対し、訪問診療を導入した事例である。在宅医療では、不安症状と生活状況を継続的に確認し、服薬管理や別居家族との連絡体制を整えながら在宅生活を支援した。通院を前提としない医療体制へ移行したことで、受診できないことへの心理的負担が軽減し、医療との接点を維持できるようになった。ケアマネジャーにとっては、通院困難を単独の問題として捉えず、不安による閉じこもりや生活全体の不安定化を早期に把握することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:71歳・女性
居住地:該当なし
世帯構成:独居
キーパーソン:三男(別居)
保険・福祉情報
医療保険:国民健康保険、自立支援医療
介護保険:要介護1
診断名
・不安神経症
導入の背景
以前より不安感が強く、精神状態の変動により外来通院が不定期となっていた。受診予定日に外出できないことも増え、服薬管理や症状把握が十分に行えない状況がみられていた。
独居生活であり、不安症状が悪化した際に相談できる相手が限られていた。生活リズムの乱れや閉じこもり傾向もみられ、受診中断だけでなく、生活全体が不安定になることが懸念された。
本人は住み慣れた自宅での生活継続を希望していたため、通院を前提とせず、精神科的支援を継続できる体制を構築する目的で訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、不安症状の程度や精神状態、睡眠、食事、生活リズムなどを継続的に確認した。服薬状況も把握し、必要に応じて薬物調整を行いながら症状の安定化を図った。
通院を前提としない医療体制へ移行したことで、本人が抱えていた「受診できなかった」という心理的負担が軽減した。自宅で定期的に医療者と接する機会を確保したことで、徐々に関係構築が進み、体調や不安について話せるようになった。
また、別居する三男とも適宜情報共有を行い、体調悪化時の連絡先や対応方法を整理した。必要時には精神科専門医と連携できる体制を確保しながら、孤立予防と在宅生活継続を支援している。
医療対応の詳細
主病
不安神経症
対応内容
・不安症状の継続的な経過観察
・精神状態および生活状況の確認
・睡眠、食事、生活リズムの評価
・服薬状況の確認および薬物調整
・精神科との連携を見据えた支援体制構築
・別居家族との情報共有および緊急時連絡体制の整理
・独居生活における孤立予防支援
医療処置
該当なし
支援のポイント
・外来受診の不定期化を、在宅医療介入を検討する早期サインとして捉える
・通院できない理由を本人の意欲だけに求めず、不安症状や生活状況を確認する
・不安の増悪に伴う閉じこもり、服薬中断、生活リズムの乱れを一体的に評価する
・通院を前提としない医療体制を整え、医療との接点を維持する
・別居家族と連絡方法や緊急時の役割を共有する
・必要時に精神科へつなげられる連携体制を確保する
考察
本症例は、不安神経症による外来通院の不安定化が、医療アクセスの低下だけでなく、閉じこもりや生活リズムの乱れ、社会的孤立につながっていた事例である。
独居高齢者では、受診できない状況が続いても、その変化を日常的に把握する家族や支援者がいないことがある。そのため、単に受診日を守れているかを確認するだけでなく、食事、睡眠、服薬、外出状況など、生活全体の変化を評価する必要がある。
訪問診療の導入により、通院に伴う心理的負担を軽減しながら、精神状態と生活状況を継続的に確認できるようになった。ケアマネジャーにとっては、通院中断を本人の拒否や意欲低下として処理せず、安心して医療とつながり続けられる環境を整える視点が重要である。
付記情報
・診療科:内科、精神科
・病態・症状:その他
・世帯構成:独居