在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/06/24
生活困窮下で病識理解が乏しい家族とともに在宅看取りを支えた肝臓がん末期患者の事例
要点サマリー
肝臓がん末期により全身状態が低下し、自宅で夫に見守られながら最期を迎えたいという希望を持っていた68歳女性に対し、在宅看取りを前提に訪問診療を導入した事例である。在宅医療では苦痛緩和と家族支援を中心に介入し、病識理解が乏しい夫への継続的説明支援を行った。ケアマネジャーにとっては、生活困窮や家族理解力の問題がある世帯において、医療的説明を伝えるだけでなく、理解できる形に翻訳する支援が重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:68歳・女性
居住地:該当なし
世帯構成:夫婦のみ
キーパーソン:夫(同居)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険制度 非課税世帯
介護保険:要介護4
診断名
・肝臓がん末期
導入の背景
肝臓がん末期により全身状態が徐々に低下しており、食欲低下や活動量低下も顕著となっていた。本人は夫の目の届く場所で最期まで過ごしたいという希望を強く持っており、在宅看取りを前提とした支援が検討された。
一方で、同居する夫は病状に対する理解や医療的知識が十分とはいえず、病識理解の乏しさが在宅療養継続上の課題となっていた。また、生活困窮背景もあり、医療、介護、生活支援を含めた包括的介入が必要と判断され、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、疼痛や全身倦怠感、食思不振など終末期症状に対する緩和ケアを中心に介入を行った。
夫に対しては、病状進行や今後起こり得る変化について繰り返し説明を行い、なぜその症状が起きるのか、どのように対応すればよいのかを具体的に共有した。
また、生活困窮背景を踏まえ、必要な制度利用についても多職種で支援を行い、医療継続と生活維持の両立を図った。結果として、本人、夫双方が自宅療養への不安を徐々に軽減しながら、在宅看取り体制を整備することができた。
医療対応の詳細
主病
肝臓がん末期
対応内容
・疼痛コントロールを中心とした緩和ケア
・食欲低下、倦怠感など終末期症状への対応
・在宅看取りを前提とした全身管理
・家族への病状説明および理解支援
・生活困窮背景を踏まえた多機関連携
医療処置
症状緩和目的の薬物調整
支援のポイント
・本人の自宅で最期を迎えたいという希望を尊重する
・病識理解が乏しい夫に対し、繰り返し説明し理解を支える
・生活困窮背景を踏まえた制度利用支援を行う
・医療、介護、福祉を統合した在宅看取り体制を構築する
・家族不安を軽減するため、具体的な情報共有を継続する
・終末期を家族全体の支援課題として捉えて介入する
考察
本症例は、終末期がん患者支援において、病状だけでなく家族理解力と生活背景が在宅看取り成立に大きく影響した事例である。
在宅医療では、医学的説明を一方的に行うだけでは十分ではなく、家族が理解、納得し、実際の介護行動につなげられる形で支援する必要がある。特に生活困窮世帯では、制度利用や生活支援も含めた包括的調整が不可欠となる。
ケアマネジャーにとっては、終末期支援を本人支援だけに限定せず、家族支援、生活支援、意思決定支援を統合して設計する視点が重要である。
付記情報
・診療科:内科、緩和ケア科
・病態・症状:がん
・世帯構成:夫婦のみ