在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/06/24
かかりつけ医不在の認知機能低下高齢者に対し、介護保険申請を契機として訪問診療を導入した事例
要点サマリー
認知機能低下が進行している80歳女性に対し、介護保険申請に必要な主治医不在という課題を契機に訪問診療を導入した事例である。夫への訪問診療介入がすでに行われていたことから、夫婦単位での支援体制を構築し、認知機能評価と介護保険申請支援を実施した。高齢夫婦による老老介護の状況を踏まえ、長女とも連携しながら在宅生活継続を支援した。ケアマネジャーにとっては、認知症診断の有無だけでなく、介護保険申請前段階から医療介入につなげる視点が重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:80歳・女性
居住地:該当なし
世帯構成:夫婦のみ
キーパーソン:長女(別居・車で約1時間)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険2割
介護保険:未利用(申請予定)
診断名
・認知機能低下
・認知症疑い
導入の背景
以前より物忘れや判断力低下がみられていたが、定期的に受診している医療機関はなく、かかりつけ医不在の状態であった。
日常生活においても、服薬管理や金銭管理に不安がみられ、家族からは認知症の進行を心配する声が聞かれていた。介護保険申請を進める方針となったものの、主治医意見書を依頼できる医療機関がなく、医療介入が課題となっていた。
また、同居する夫も高齢であり、夫婦のみでの生活継続には限界が見え始めていた。夫はすでに訪問診療利用者であったことから、本人についても訪問診療導入を行い、認知機能評価と介護保険申請支援を進める方針となった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、認知機能や生活状況の評価を実施し、日常生活への影響を確認した。
本人は病識が乏しく、医療介入の必要性について十分な理解が難しい場面もあったが、夫や長女と情報共有を行いながら関係構築を進めた。
介護保険申請に必要な主治医意見書を作成し、介護サービス導入に向けた準備を実施した。また、高齢の夫による介護負担が増大しないよう、夫婦双方の生活状況を確認しながら支援方針を調整した。
長女とも継続的に連絡を取り、将来的な支援体制や意思決定支援について共有を行った。結果として、医療と介護双方の導入準備が進み、在宅生活を継続するための基盤整備につながった。
医療対応の詳細
主病
認知機能低下、認知症疑い
対応内容
・認知機能評価
・生活状況評価
・主治医意見書作成
・介護保険申請支援
・服薬管理状況の確認
・家族への病状説明および助言
・将来的な認知症進行を見据えた支援体制整備
医療処置
該当なし
支援のポイント
・かかりつけ医不在の状態から医療介入を開始する
・介護保険申請と並行して訪問診療を導入する
・老老介護世帯へ早期介入する
・長女を含めた家族支援体制を構築する
・認知症診断前段階から継続的評価を行う
・夫婦単位で在宅支援を設計する
考察
本症例は、認知症そのものではなく、かかりつけ医不在と老老介護が在宅生活継続上の大きな課題となっていた事例である。
認知機能低下が進行している高齢者では、介護保険サービスの必要性が高まる一方で、医療との接点が途切れていることも少なくない。特に主治医不在の場合、介護保険申請や今後の医療的支援導入が滞る要因となる。
訪問診療は疾患治療だけでなく、介護保険制度利用への入口として機能することも多い。また、本症例では高齢の夫が主たる支援者であり、本人だけでなく介護者の負担や将来的な支援限界を見据えた関わりが重要であった。
ケアマネジャーにとっても、認知症診断の有無にかかわらず、生活上の困りごとが生じ始めた段階で医療介入を検討することの重要性を示す症例である。
付記情報
・診療科:内科、老年内科
・病態・症状:認知症
・世帯構成:夫婦のみ