在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/06/01
COPD終末期患者に対し、呼吸苦緩和と急変時対応を軸に在宅療養継続を支えた訪問診療導入事例
要点サマリー
長年COPDで治療され、在宅酸素療法を導入されていた高齢男性に対し、呼吸機能低下の進行と入退院反復を契機に訪問診療を導入した事例である。トイレ移動でも強い息切れを認め、頻回通院自体が大きな身体的負担となっていた。在宅医療では呼吸苦緩和、急変時対応、酸素管理を中心に支援し、本人の在宅希望を尊重した療養継続を図った。ケアマネジャーにとっては、COPD終末期では症状管理に加え、家族の不安軽減と介護負担分散を含めた支援設計が重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:84歳・男性
居住地:名古屋市港区
世帯構成:夫婦のみ
キーパーソン:妻(同居)
保険・福祉情報
医療保険:医療保険利用
介護保険:記載なし
診断名
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・慢性呼吸不全
・在宅酸素療法導入中
導入の背景
長年COPDに対して治療を継続しており、喫煙歴も長く、数年前から在宅酸素療法が導入されていた。徐々に呼吸機能低下が進行し、トイレ移動だけでも強い息切れを認める状態となっていた。
ここ1年は肺炎やCOPD増悪による入退院を繰り返しており、本人からは病院に行くたびに弱って帰ってくる気がするとの発言も聞かれていた。
妻としては少しでも長く治療してほしい思いがある一方で、本人はできれば最後は家にいたいという希望を持っていた。病院側から在宅医療について提案があり、呼吸苦緩和と急変時対応を含めた在宅療養支援を目的として訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、呼吸苦に対する薬剤調整を在宅で柔軟に行い、症状変化に応じた対応を継続した。頻回通院による移動負荷を減らしながら、在宅酸素療法の管理と全身状態の観察を行った。
訪問看護と連携し、酸素管理、SpO2の変動、痰量の変化を継続的に観察した。妻に対しては、呼吸苦悪化時の対応方法や夜間不安時の相談体制について繰り返し説明し、急変時に慌てず対応できるよう支援した。
また、介護負担軽減を目的にヘルパー導入も調整し、妻が介護と家事を一人で抱え込まない体制を整えた。結果として、救急搬送回数は減少し、本人は自宅で好きな音楽を聴きながら穏やかに過ごせる時間を持てるようになった。
医療対応の詳細
主病
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性呼吸不全
対応内容
・呼吸苦に対する薬剤調整
・在宅酸素療法の管理
・SpO2変動および痰量変化の観察
・肺炎およびCOPD増悪の早期把握
・急変時対応体制の整理
・家族への症状観察と対応方法の説明
医療処置
在宅酸素療法
支援のポイント
・COPD終末期では、呼吸苦が強くなる前から相談できる体制を整える
・頻回通院そのものが身体的負担となるため、移動負荷軽減を支援目的として明確にする
・訪問看護と連携し、酸素管理やSpO2変動、痰量変化を日常的に把握する
・妻に対しては、夜間不安や急変時対応の見通しを持てるよう繰り返し説明する
・介護負担軽減のため、ヘルパー導入など家事支援も含めた支援設計を行う
・本人の在宅希望と家族の延命希望が併存する場合は、双方の思いを整理しながら方針共有を進める
考察
本症例は、COPD終末期において、呼吸苦と入退院反復が在宅療養継続の大きな課題となっていた事例である。とくにCOPDでは、呼吸苦に対する不安が本人にも家族にも強く、症状の悪化そのものに加え、苦しくなった時にどうすればよいか分からないことが在宅継続を難しくする。
訪問診療を導入することで、在宅での薬剤調整や酸素管理が可能となり、救急搬送回数の減少につながった。また、家族が相談できる体制を持つこと自体が精神的負担軽減に寄与した。ケアマネジャーにとっては、疾患管理のみでなく、呼吸苦への不安、夜間対応、介護負担を一体として捉え、本人の生活の質を支える視点で支援導線を整えることが重要である。
付記情報
・診療科:内科、呼吸器内科
・病態・症状:慢性閉塞性肺疾患、慢性呼吸不全、呼吸苦、痰増加、呼吸機能低下
・世帯構成:夫婦のみ