コラム2026/05/15
血液検査から読み解く「腎機能・糖代謝・炎症」の見方
在宅・施設で役立つ検査値の理解
高齢者医療や在宅医療の現場では、
「なんとなく食欲がない」
「むくみが増えた」
「元気がない」
といった変化の背景に、腎機能低下や糖代謝異常、炎症が隠れていることが少なくありません。
血液検査は、こうした目に見えにくい体内の変化を数値として可視化できる重要なツールです。
特に在宅や施設では、日常生活の変化と検査値を結び付けて考える視点が重要になります。
今回は、介護・医療職が押さえておきたい「腎機能」「糖代謝」「炎症反応」などの血液検査について、現場での見方も交えながら整理します。
腎機能検査で何がわかるのか
腎臓には、体内の老廃物や余分な水分を尿として排泄する役割があります。
この働きが低下すると、不要物が体内に蓄積し、全身状態に影響を及ぼします。
腎機能をみる代表的な項目には、以下があります。
・BUN(血中尿素窒素)
・クレアチニン
・eGFR(推算糸球体濾過量)
・尿酸
クレアチニンを見るときの注意点
クレアチニンは筋肉の代謝によって生じる老廃物で、通常は腎臓から排泄されます。
腎機能が低下すると血液中の値が上昇します。
ただし、高齢者では筋肉量が少ないため、腎機能が低下していてもクレアチニン値があまり上がらないことがあります。
そのため、在宅医療ではクレアチニンだけで判断せず、eGFRや全身状態も含めて総合的に評価することが重要です。
eGFRは腎臓の働きを示す指標
eGFRは、腎臓がどれだけ血液をろ過できているかを示す数値です。
一般的には、
・90以上:正常
・60未満:腎機能低下
・30未満:高度低下
の目安で考えられます。
高齢者では加齢による低下もありますが、
・脱水
・心不全
・糖尿病
・感染症
・NSAIDsなどの薬剤
によって悪化することもあるため注意が必要です。
BUN上昇は脱水のサインであることも多い
BUNは蛋白代謝によって生じる老廃物ですが、腎機能低下だけでなく、
・脱水
・発熱
・消化管出血
・高蛋白摂取
などでも上昇します。
在宅や施設では、
「食事量低下」
「水分不足」
「脱水」
という流れのなかでBUNが上がることがよくあります。
特に夏場や感染後には、水分摂取状況の確認が重要です。
高齢者で注意したい電解質異常
血液中には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質が含まれています。
これらは、神経・筋肉・心臓の働きを維持するうえで不可欠です。
低ナトリウム血症は見逃されやすい
高齢者では、
・食欲低下
・水分バランス異常
・利尿薬
・心不全
・SIADH
などにより低ナトリウム血症を起こしやすくなります。
症状としては、
・倦怠感
・ふらつき
・傾眠
・意識障害
・せん妄
などがみられます。
「最近ぼんやりしている」
「転倒が増えた」
という場合に採血すると、低Na血症が判明することもあります。
高カリウム血症は重篤化に注意する
カリウムは心臓の電気活動に深く関与しています。
腎不全やACE阻害薬、ARB、スピロノラクトンなどの影響で高カリウム血症になることがあります。
重度になると、
・不整脈
・徐脈
・心停止
につながる危険があります。
在宅医療では、
・尿量減少
・食欲低下
・強い倦怠感
などがある場合に、カリウム異常を疑う視点が重要です。
糖尿病は血糖値だけで判断しない
糖尿病の評価では、
・空腹時血糖
・随時血糖
・HbA1c
などを確認します。
HbA1cは、過去1~2か月程度の平均血糖を反映する指標であり、慢性的な血糖状態を把握するのに有用です。
高齢者では低血糖にも注意が必要
介護現場では高血糖に目が向きがちですが、実際には低血糖のほうが危険なこともあります。
特に、
・食事摂取量低下
・腎機能低下
・インスリン使用
・SU薬内服
がある高齢者では、低血糖リスクが高まります。
低血糖では、
・発汗
・手の震え
・眠気
・意識障害
・転倒
などが出現します。
「急に元気がなくなった」
「反応が鈍い」
という場合、感染症だけでなく低血糖も鑑別に入れる必要があります。
炎症反応と組織障害の見方
血液検査では、炎症や組織障害の程度も把握できます。
CRPは炎症の代表的な指標
CRPは感染症や炎症で上昇します。
ただし高齢者では、重症感染でもCRPが大きく上がらないことがあります。
特に、
・超高齢者
・低栄養
・免疫低下状態
では注意が必要です。
そのため、CRPが低いから安心とは言い切れず、バイタルサインや全身状態もあわせて評価することが大切です。
CKは筋障害の指標になる
CKは筋肉が壊れると上昇します。
たとえば、
・転倒後に長時間動けなかった
・横紋筋融解症
・強い脱水
などで高値になることがあります。
高齢者では、長時間の転倒が重大な筋障害につながることもあるため、発見時には採血評価が重要です。
介護職・医療職が検査値を見る意味
血液検査は単なる数字ではありません。
その背景には、
・水分摂取量
・食事量
・活動量
・排泄状況
・感染兆候
・服薬状況
など、日常生活の情報が密接に関係しています。
つまり、介護職が日々観察している生活情報が、検査値の解釈に直結するということです。
在宅・施設で特に重要な視点
高齢者では、
・症状が出にくい
・悪化しても訴えが少ない
・数値だけでは重症度が分かりにくい
という特徴があります。
だからこそ、
・いつもより食事量が少ない
・元気がない
・反応が遅い
・浮腫が増えた
・尿量が減った
といった小さな変化を拾えるかが重要になります。
血液検査は、その変化を裏付ける客観的な情報として非常に有用です。
まとめ
腎機能、糖代謝、電解質異常は、高齢者のADL低下や急変に直結します。
特に在宅や施設では、
「なんとなくおかしい」
「いつもと違う」
という感覚が早期発見につながります。
血液検査の意味を理解することで、医療・介護職間の情報共有はより具体的になり、早期介入にもつながります。
日々の観察と検査値を結び付けながら、多職種で状態変化を支えていくことが大切です。