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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

人材不足の対策 ~看護職2025年に6万~27万人不足と予想~

コラム2019/11/22

人材不足の対策 ~看護職2025年に6万~27万人不足と予想~

人材不足の対策 ~看護職2025年に6万~27万人不足と予想~

医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ(概要)
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000567798.pdf

さて、ここでの配信でも何度か取り上げさせていただきましたが、人材不足は、日本全体としての大きな課題の一つでもありますが、とりわけ介護医療業界は深刻といわれています。
先日、(11/18)社会保障審議会医療部会において、以下の発表がありました。

厚生労働省の推計によれば、2025年の看護職員の不足は、最大で27万人、最少で6万人不足する。
領域別にみると、特に、訪問看護や介護分野における看護ニーズが大きく増加、この領域においての人材不足のインパクトは大きい。
さらに、訪問看護の領域は、経験が必要との懸念が根強く、新卒看護師等が訪問看護へ就業する選択肢はまだ確立されていないのが現状。

今回は、人々の療養の場が多様化し地域包括ケアが推進される現状において、これまでの対策提言と先日の「看護職員需給分科会」で加えられた対策をまとめさせていただきます。

◆対策

医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000567799.pdf

1.新規養成

教育の充実、新規養成時からの多様なキャリアデザインに関する教育や一層の支援が必要

具体策
・学生時代から地域のなかでさまざまな施設においてインターンシップなどの支援
・看護職員の地域毎の充足状況を踏まえた奨学金支援等に係る取組
・ 学生が主体的にキャリアデザインを描くことを支援する教育の充実。
・「看護職のキャリアと働き方支援サイト」の周知・活用の促進
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/nurse/
・「看護職の多様なキャリアと働き方応援サイト ナースストリート」の周知、活用の促進
https://nurse-st.jp/

2.復職支援

看護職員はおよそ 9 割が女性であり、出産や子育て、介護など休職・離職の機会が多く、長く働き続けられるようなキャリア形成支援を行うことが必要。また、「※看護師等免許保持者の届出制度」の認知度向上と届出者数を増やしていくことが必要。
※(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000095486.html)

具体策
・都道府県労働局及びハローワーク、ナースセンターへの好事例の周知
・相談の質を高めるためナースセンター相談員や職員がキャリアコンサルティングの専門
・知識や技術を習得するための支援
・ナースセンターでの相談対応等について必要なアドバイスを受けられる体制づくり

3.定着促進

看護職員の離職率は正規雇用 10.9%、新卒では 7.5%であり、横ばい傾向が続いているとされるが、今後の需要の増加に伴い、看護職員が少ない夜勤時の繁忙度が増し、夜勤従事者不足や夜勤従事者への負担増大が重大な問題となっており、労働環境の整備が必要。

具体策
・ 医療従事者の勤務環境改善に取り組む医療機関への支援
・ 交代制勤務の看護職員に適した勤務間インターバル制度など、労働時間・勤務環境 改善に関する研究
・ 医療施設における暴力・ハラスメントの実態調査の実施と課題の明確化
・ 看護補助者の入職研修プログラム(e-ラーニング等)などの環境整備
・ 看護補助者の確保キャンペーンの展開(パンフレット、PR動画、シンポジウムなど)
・ 看護補助者の実態調査を踏まえた看護補助者の定着促進策の検討

4.領域・地域別偏在の調整

現在、訪問看護に従事する看護職員は約 5 万人であり、 訪問看護事業所の求人倍率は 3.78 倍と病院と比して高く、職員を十分に確保できていない状況である。また、訪問看護は、社会経験の少ない若者におけるハードルの高さが依然として懸念され、新卒看護師等が訪問看護事業所へ就業する選択肢はまだ確立されているとはいえない。 しかし、適切な教育により、新卒や経験の浅い看護職員も含め、訪問看護 の人材を育成することが必要。

具体策
・ 新卒看護師対象の訪問看護人材養成の教育実施状況の把握、好事例の情報共有
・ 訪問看護事業所と地域の病院等と連携した教育研修体制構築のための支援の検討
・ 病院等で働く看護職員が、多様なキャリアを選択できるよう訪問看護事業所や介護保険施設等での研修等の実施
・「在宅医療関連講師人材養成事業」の促進
http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/main/highlevel-trainingprogram.html

・地域医療介護総合確保基金を活用した訪問看護や介護保険サービス等の人材育成等
愛知県計画 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000496986.pdf

・訪問看護事業所等に従事する看護職員に関する勤務環境改善
・ICT 活用の推進、継続教育支援等の処遇に係る環境整備、特定行為研修の推進
・介護保険施設等における看護職員の役割や業務内容に関する情報提供に係る取組

まとめ

人材不足の対策として、現状での国の対策をご紹介させていただきました。今後さまざまな取組が行われると思いますが、「この対策を選べば、解決する」という魔法杖は存在しないものの、各病院やクリニック、訪問看護ステーション、学校などがそれぞれの取組から、知見を積み重ねていく必要があるのではないでしょうか。
当法人においても地域包括ケアを推進し、地域の病院であり続けるためには、看護師を、必要で十分な数だけ確保し続けなくてはなりません。外来・病棟・訪問など、どの部門が不足しても、医療の質やサービスの低下を招き、最も重要な医療の安全が損なわれてしまいます。いずれ直面するであろう人材問題についても、早急に対策を実行し、地域医療を担う使命感をこれまで以上に強く持ち続けて、安心できる医療をご提供させていただきたいと思っております。