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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

認知度低い?「混合介護」Vol.1 ~利用者が主体となって選択するサービス~

コラム2019/11/26

認知度低い?「混合介護」Vol.1 ~利用者が主体となって選択するサービス~

認知度低い?「混合介護」Vol.1
~利用者が主体となって選択するサービス~

介護保険が適用されるサービスとされないサービスを組み合わせる「混合介護」(選択的介護)ですが、2018年度から国家戦略特区を活用して、東京都豊島区で始まりました。
この豊島区による「混合介護」の実施は、衆議院議員時代に豊島区を地盤としていた「小池百合子都知事」の肝いりで始まりました。
当時一般マスコミもこの動きを大きく報じましたが、小池都知事の人気が急落したことを受けて、一般マスコミも「混合介護」を報じなくなり、世間一般の「混合介護」に対する認知度・関心は薄いようです。
今回は、各市区町村などが提供しているサービスは省き、介護サービス事業者が行う保険外サービスと組み合わせた場合の混合介護について解説します。
内容が多いため3回に分けて、お話します。今回は、「混合介護」について基礎的なお話になります。

混合介護ってなに?

「混合介護」とは、介護保険が適用される「介護保険サービス」と、介護保険が適用されない「介護保険外サービス」を合わせた介護サービスのことを言います。言い換えると、介護保険サービスを利用している要介護者が、介護サービス事業者が提供する介護保険外サービスを全額自費で利用するものとなります。

どういうものが混合介護?(豊島区モデル事業主な保険外サービス)

通院の付き添いは介護保険サービスを利用し、病院内の待ち時間・診察の付き添い、トイレ介助などは介護保険外サービスを利用するときに混合介護が行われています。また、いわゆるデイサービスの「お泊りデイサービス」は、昼間は介護保険によるデイサービスが行われ、夜間の宿泊は保険外サービス利用になるので、これも混合介護と呼べます。

混合介護って複雑?

実は、混合介護には大きなハードルがあります。それは、厚生労働省が「混合介護は、保険内サービスと保険外サービスが明確に区分されていること」という考えを示していることです。そのため、介護保険サービスと介護保険外サービスは「同時・一体的」に利用してはならないことになっています。一方で、2016年9月に公正取引委員会が公表した「介護分野に関する調査報告書」  によると、多くの市区町村では、混合介護は「同時・一体化」は認めないが「連続」ならば可能としています。わかりにくいですよね。

「連続」を認めるってどういうとき?

「同時・一体的」に利用してはならず、「連続」であれば利用可能とは、例えば下記のような状を生みます。

<事例1>
高齢者世帯の夫婦のうち、夫が要介護者の家庭。ヘルパーが訪問し、介護保険サービスとして夫の食事の支度、洗濯、部屋の掃除を行うことはできても、それと同時に介護保険外サービスとして妻の食事の支度、洗濯、部屋の掃除はできない。ただし、夫の家事支援が終わった後に、改めて(連続して)妻の家事支援をするのは可能。

<事例2>
独居の要介護者の家にヘルパーが訪問し、介護保険サービスとして掃除をするついでに、介護保険外サービスにあたる庭の花木の水やりをすることはできない。

<事例3>
介護保険でデイサービスを利用しているときに、介護職員に簡単な買い物に付き合ってもらうことは介護保険外サービスにあたるのでできない。

利用者のさまざまな要望が、厚生労働省が示す「同時・一体的」に当たるのか、それとも当たらないのかを介護サービス事業者が判断するのは難しく、利用者の利便性を欠く状況になっています。この「同時・一体的」であるかどうかの判断は、各市区町村に任されていることから、運用に曖昧さが起こっているのが現状です。

東京都豊島区モデル事業はどういう内容なの?

上記のような曖昧な対応もあって国は混合介護の規制緩和に動き出しました。混合介護の実態調査を実施した公正取引委員会が「介護保険サービスと保険外サービスを同時・一体的に提供することを可能にすること」「介護サービス事業者が質の高いサービスを提供するために価格を自由化し、多様なサービスの提供を可能にすること」を提言し、いわゆる「混合介護の弾力化」を図るよう示しました。これを受け、東京都が国家戦略特区制度を活用し、モデル事業の対象となった豊島区では2018年4月から次の2つが可能になりました。

(1)介護保険サービスと介護保険外サービスを同時一体的に提供する
(2)介護保険サービスの付加価値をつけた部分に料金を上乗せ設定する

(1)は、先の例でいえば、要介護者の夫の食事と、要介護者ではない妻の食事の支度を一緒にできるようになります。
(2)は、医療や健康に関する資格やコミュニケーションスキルをそなえたヘルパーに対する指名料を上乗せできるようにするものです。

また、忙しい時間帯の料金を高くし、そうでない時間帯を安くすることなどの価格の自由化も検討されています。

まとめ

豊島区の取り組みは名称の通り「利用者が主体となって選択するサービス」です。その「サービス」を必要とする人々のためにも、今後も内容を充実させ、「新たな介護サービス」を成功モデルとして提示することによって、他の市区町村でも拡大していく可能性があります。次回は、混合介護を導入することによるメリット・デメリットに分けてご紹介させていただきます。