コラム2022/08/15
せん妄と認知症の違いについて
せん妄とは
せん妄は急性の脳機能不全によって生じる意識障害の一種です。手術後、持病の重症化、高齢者に多くみられ、発症すると自分の居場所や現在の時刻などが急にわからなくなり、辻褄の合わない言動を繰り返すといった症状が現れるようになります。
せん妄と認知症の違い
せん妄と認知症のBPSDの症状は一見すると似たようなものが多く、その判別はときに困難な場合もありますが、いくつかの違いがあります。
発症様式
せん妄と認知症の発症までの経過には時系列において大きな違いがみられます。せん妄の経過は急激で、数時間~数日の間に出現します。また、1日の経過の中でも重症度が変動する傾向があります。それに対して認知症の場合は、潜在性があり、数か月~数年をかけてゆっくりと出現する傾向があります。
初発症状
せん妄と認知症の初発症状にもそれぞれ違いがみられます。せん妄では、「注意集痛が困難・興奮」、「落ち着きのなさ」、「幻視や妄想」、「意識障害・見当識障害」などが見られます。認知症では、「比較的最近のことをを忘れる」というパターンの記憶障害がみられる傾向があります。
経過と持続性
先述の通り、せん妄においては1日の経過の中でも変動性があり、日ごとの変動性もみられます。それに対して認知症では、年単位でゆっくりと進行する傾向があります。
覚醒水準
覚醒水準に関してもせん妄と認知症では違いが見られます。こちらに関しても、せん妄では日内変動や日ごとの変動がみられるが、認知症では正常である傾向があります。
思考内容
思考内容に関しても、せん妄と認知症では受け取りての印象に違いがみられる傾向があります。せん妄では、無秩序で気分による発言をしているような印象を受けるものが多くなる傾向がありますが、認知症では外部とかみ合わないような印象を受けるものが多くなる傾向があります。
経過
経過に関しては、せん妄は急性で可逆的、認知症は慢性で不可逆的と言えます。
せん妄ではまず原因追及を
せん妄が疑われたり、診断がついたりした場合、まずはその原因をはっきりとさせることが重要です。
せん妄の改善は原因の検索と原因治療が第一であるからです。
せん妄の多くは二次的に生じることが多く、その人を取り巻く環境に変化が起きたためにもともと不安定だった精神状態がさらに揺さぶられているイメージがあります。
病院においてはせん妄の第一発見者は看護師であることが多いですが、在宅においては第一発見者は介護者である家族であることが多くなります。
医師の診察の場面だけでは原因追及は不十分なため、家族に患者のようについてじっくりと尋ねることは非常に重要です。
まとめ
せん妄の患者さんにいわゆる精神安定剤を用いると逆効果になることも多いため、認知症としっかりと判別をすることが大切です。
同じような症状があるのか、何か引き金になるような事象がなかったかなどを周りの介護者がしっかりと把握することが大切です。