コラム2019/12/12
認知症カフェの新しいかたち~スタバでも認知症カフェ?~
認知症カフェの新しいかたち~スタバでも認知症カフェ?~
先日、藤田医科大学は、認知症カフェに関する大規模調査の結果を発表しました。
藤田大学プレスリリース( https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv00000048l4.html)
認知症カフェは1997年にオランダで開始されたアルツハイマーカフェに発端があるともされていますが、世界中に広がりを見せていて、日本では地域限定ですが、スタバでも認知症カフェが開かれています。今回は、認知症カフェの現状と課題についてお届けいたします。
認知症カフェとは
認知症カフェとは、福祉先進国であるオランダの「アルツハイマーカフェ」をモデルに誕生し、認知症高齢者とその家族が集える場所です。名前の通りお茶や軽食を楽しみながら参加者同士が交流を図り、介護にまつわる専門家が情報提供をしてくれます。当事者だけではなく、地域の住民や大学などに通うボランティアサークルの学生といった一般の人の参加も可能で、肩肘張らずにコミュニケーションを楽しむ場として機能しています。
2015年に厚生労働省が定めた認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で認知症地域支援推進員の役割として明記されたことで、その数を増やすと共に認知症高齢者とその家族にも広く知られるようになりました。
運営団体は?
社会福祉法人や医療法人、自治体、NPO団体、個人の有志者など様々で、会場も介護施設の共有スペースから公民館、個人宅、レストランやカフェなど実に多岐にわたります。飲食店でなくてはダメといった決まったルールはありません。参加費用も1人につき100円程度で、これに飲食費・材料費などがプラスされるくらいなので個人負担が非常に少ないのもうれしいポイントです。
スタバでも認知症カフェ?
社会の関心の高まりと共に企業が慈善事業の一環として取り入れるケースもみられる様になりました。2019年4月、町田市(東京都)は大手コーヒーチェーンのスターバックスコーヒージャパンと連携協定を結び、市内の同店舗で定期的に出張認知症カフェを開いています。この協定締結によって、同社は従業員に認知症サポーター養成講座の受検を推進し、認知症カフェのほか高齢者の見守りや来店する客への普及啓発を進めるとしています。
https://www.starbucks.co.jp/press_release/pr2020-3220.php
認知症カフェの参加方法は?
認知症カフェが毎日開催されていることは稀で、中には月に1回程度の頻度というところもめずらしくありません。そのため、主催団体のホームページや市区町村が発行する広報誌、町内の掲示板などで気になる認知症カフェのスケジュールを把握しておくとよいでしょう。
満員でない限り飛び込み参加が可能なところも多いようですが、事前に電話やメールできちんと予約しておく方が無難です。下記、名古屋市での認知症カフェ情報がまとめられていますので、ご参照ください。(NAGOYAかいごネット)
http://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/kaigo/docs/2019070400045/
認知症カフェの活動内容とは?
カフェタイム
主催者がお茶やお菓子を用意して、喫食しながら参加者同士が会話を楽しむ場を提供するものです。オープン時間は会場によって異なりますが、参加者の行動は自由で途中入退室も可能です。おしゃべりが大好きな人も多く、つい長居してしまう高齢者も少なくありません。家族にとっても相手の家族と情報交換できるメリットもあります。
介護相談
介護福祉士や看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)といった専門家が介護についての悩みを聞いたりアドバイスをしたりします。参加する専門家たちも、地域との連携や多職種間連携を図り自らの知見を広げられるといったメリットもあります。
アクティビティ
上記専門家やボランティアの性質により会場ごとに内容は異なってきますが、認知症予防のための脳トレーニング、ロコモティブシンドローム解消のための簡単なエクササイズ、料理・手芸・ガーデニングのレクチャーや囲碁・将棋サロン、パソコン・タブレット教室など多岐にわたります。
認知症カフェが抱える課題
自治体によっての温度差
高齢者救済の福祉サービスは、認知症カフェ以外にもあるため、すでに他の施策を試みている自治体では、認知症カフェへの理解が乏しくあまり力を入れていないところもあります。
企業や個人経営者が参画しにくい
企業や個人経営者による認知症カフェが成功し軌道に乗っている事例が少なく、いざ始めたはいいが赤字になるリスクも考えられます。つまり、持続可能性を追求したビジネスモデルを構築しにくく、認知症カフェに興味がありや社会的に意義が高いことをやりたいという想いはあっても、お金を回すしくみの構築が足枷となっています。
「認知症カフェ」という名前への偏見
年齢や認知症の有無を問わず多くの人が集まる場所ですが、認知症の人しか入れないと間違った認識をしている人が少なからずいて、地域住民など一般の人が参加することへの障壁になっていることがあります。
まとめ
今回は広がりをみせつつある認知症カフェについて、ご紹介させていただきました。
「誰でも参加できる」とこが認知症カフェの大きな特長であり、新たな福祉サービスの利用を希望していた人たちにとって認知症カフェは必要とされていることは間違いないでしょう。しかし、出入り自由の環境にはやはりリスクが伴います。2016年に相模原市の障がい者施設で起きた殺傷事件を機に、各福祉施設では門扉の施錠や監視カメラの設置を徹底する動きがみられました。ガードを徹底したことによって外部との交流が弱まってしまったということもあります。地域の交流を活性化させるためには、安全を確保しつつ、開かれた場であることを両立していくことが、今後の大きな課題と言えそうです。