MENU

医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

室内の観葉植物は空気を浄化する?  

コラム2019/12/11

室内の観葉植物は空気を浄化する?  

室内の観葉植物は空気を浄化する?

インテリアにグリーンを取り入れることで、空気をキレイにして健康に役立つと一般的に言われています。1989年にNASAが発表した「植物は発がん性化学物質を空気から除去するのに役立つ可能性がある」とする研究結果が契機となり、広まったのではないかといわれています。
さて、今回は、「鉢植え植物に室内の空気の質を良くする効果があるのか」というテーマを最新の研究結果をもとにお話しさせていただきます。

鉢植え植物は室内の空気をきれいにする?

一般に空気清浄効果があると考えられている観葉植物ですが、自宅やオフィスの空気の質を良くするには、室内に植物を置くよりも自然換気を行う方がはるかに高い効果が得られることが、米ドレクセル大学建築環境工学准教授のMichael Waring氏らによる研究で示されました。つまり、鉢植え植物に室内の空気の質を良くする効果は期待できないと結論付けたようです。(「Journal of Exposure Science and Environmental Epidemiology」11月6日オンライン版)

研究内容

今回の研究は、過去30年間に実施された、鉢植え植物が室内の揮発性有機化合物(VOC)量に及ぼす影響を検討した12件の研究結果を分析し、これらの研究から得られたデータをクリーンエア供給率(CARD)と呼ばれる空気清浄機の性能を表す指標に換算しました。

研究結果

研究の結果、自然換気か換気装置によるものかにかかわらず、換気によって室内のVOC濃度が低下する速度は、植物が空気中からVOCを除去する速度を大幅に上回っていることが明らかになりました。つまり、自宅やオフィスの空気清浄を目的とするならば、自然換気や空気清浄機を手段にしたほうが、はるかに効率的ということです。ちなみに空気清浄機や自然換気に匹敵する効果を鉢植え植物から得るためには、床面積1平方メートル当たり100~1,000鉢が必要であるとのことです。

まとめ

今回は「鉢植え植物に室内の空気の質を良くする効果があるのか」についてお話させていただきましたが、NASAやその他の研究など、過去の科学的知見がいかに誤解につながりやすいかを示す一例です。「植物には空気をきれいにする効果が高い」という認識というよりは、あくまでもインテリアの1つとして楽しみ、色彩効果からの癒しなど、目的にフォーカスしすぎず、植物自体を愛でる心を大切にすることのほうがハッピーではないでしょうか。