MENU

医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

「認知行動療法師」の新たな資格認定制度が開始 ~心の健康増進、精神保健福祉策の充実に寄与するか~

コラム2019/12/13

「認知行動療法師」の新たな資格認定制度が開始 ~心の健康増進、精神保健福祉策の充実に寄与するか~

「認知行動療法師」の新たな資格認定制度が開始~心の健康増進、精神保健福祉策の充実に寄与するか~

ストレス関連疾患への精神心理的アプローチとして注目される認知行動療法ですが、先日、一般社団法人日本認知・行動療法学会は、「認知行動療法師」の資格認定制度を創設すると発表しました。
http://www.qlifepro.com/news/20191202/cognitive-behavioral-therapy-qualification.html
同資格制度は、同学会の会員にとどまらず、対人援助に携わる各種専門職に開かれた資格制度です。今回は、認知行動療法についてお話させていただきます。

認知行動療法って?

認知行動療法とは、うつ病や不安症、ストレス関連疾患をはじめとする多くの心の健康問題への精神心理的アプローチのことをいいます。医療保健、教育、福祉、産業労働、司法犯罪分野等で広く普及している治療方法です。

内容は?

認知行動療法では、自動思考と呼ばれる、気持ちが大きく動揺したりつらくなったりした時に患者の頭に浮かんでいた考えに目を向けて、それがどの程度、現実と食い違っているかを検証し、思考のバランスをとっていきます。それによって問題解決を助けていくのですが、こうした作業が効果を上げるためには、面接場面はもちろん、ホームワークを用いて日常生活のなかで行うことが不可欠です。

具体的な方法は?

患者さんを一人の人間として理解

その方の悩みや問題点、強みや長所を洗い出して治療方針を立て、それを患者さんと共有して力を合わせながら面接を進めていきます。

生活のリズムを作る

まず、毎日の生活を振り返って無理のない形で、下記のカテゴリーに分類して、活動の優先順位をつけていきます。

  1. 日常的に行う決まった活動
  2. 優先的に行う必要のある活動
  3. 楽しめる活動ややりがいのある活動

とくに、楽しめる活動ややりがいのある活動を増やしていくことは効果的です。また、一定の身体活動や運動を用いて自信やコントロール感覚を取りもどし、他の人との関わり体験を持てるようにします。症状に影響していると考えられる問題を解決していく過程で適応力を高めていくようにします。

認知の偏りを修正する

自動思考に焦点をあてて、その根拠と反証を検証することによって認知の偏りを修正します。このときに、本やネット、動画を使うこともできます。

詳細な面接の流れは、下記、厚生労働省「こころの健康」。治療ではありませんが、技法の練習には「認知療法活用サイト」をご参照ください。
・こころの健康( http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/
・認知療法活用サイト( https://www.cbtjp.net/

簡易的な認知行動療法もある?

定型的な認知療法・認知行動療法の他に、一人の方に使用する人や時間を効率的に少なくしながら効果が得られる簡易型の認知行動療法が開発され、地域や職域の精神保健や福祉、法律や教育の各分野で活用されるようになってきています。具体的には、下記のような内容などがあります。
・当事者や仲間がお互いに支え合うサポートグループ・プログラム
・短時間で相談に乗る相談センターや電話相談
・認知療法、認知行動療法の原則に準拠した個人のセルフヘルプ
・行動活性化(やりがいのある行動や気持ちが楽になる行動を増やす)
・運動療法
・問題解決技法、
・コンピュータ支援型認知行動療法

(保健、医療、福祉、教育にいかす 簡易型認知行動療法実践マニュアル)
http://www.kizuna-pub.jp/book/9784907072797/

まとめ

今後ますます認知行動療法への期待が高まり、簡易的な認知行動療法も広がりみせるなか、一方で認知行動療法を行う者の知識、技能、質の保証が重要な課題となっています。「認知行動療法師」という資格を認定する制度が整備されることによって、今まで以上に、認知行動療法の質・普及・発展がつながっていくことに期待を寄せましょう。