コラム2020/04/13
薬と飲み合わせ、食べ合わせの注意点
薬と飲み合わせ、食べ合わせの注意点
現代の75歳以上の後期高齢者の方々は、生まれてから成人になるまで、抗生物質をのんだことがありませんでした。抗生物質がまだこの世に存在してなかったのです。現在、私たちが当たり前に飲んでいる薬さえも、昭和初期のころにはほとんど登場していません。一方で、今の若い世代のほとんどの方々は、幼児のころから抗生物質をはじめとする様々な薬に慣れています。また食品についても、様々な人工の添加物、高カロリーの食事が普通になり、現在の高齢者が若かった時代とは口にするものが異なっています。つまり、外的な環境の変化と同じように、あるいはそれ以上に、私たちの内的な環境も変化しています。こういった環境変化に対しての体の反応についてのエビデンスは特にありませんが、高齢者と薬について考える際には少し気に留めておく必要があるかもしれません。
代表的な薬と飲食物 避けた方が良い組み合わせ
複数の薬を同時に服用したときに影響しあうことが薬物相互作用ですが、それと同じことが飲食物と薬の間においても発生する場合があります。高齢者は、腎臓や肝臓などの機能が衰えているので、十分な注意が必要です。
◆グレープフルーツ
高血圧症や狭心症に使う薬の中の、カルシウム拮抗薬といわれる種類の薬を服用中に、グレープフルーツやグレープフルーツジュースを摂取すると、薬の代謝が阻害され、作用が強くなることがあります(オレンジやミカンなどは影響しませんが、交配種や新種には注意しましょう)。
<薬品名>
●アダラート
●コニール
●カルスロット
●ペルジピン
◆牛乳や乳製品
抗菌薬の一部(テトラサイクリン系)や骨粗しょう症に使われる薬の中には、乳製品と一緒に服用すると吸収が阻害され、作用が低下するものがあります。
<薬品名>
●テトラサイクリン
●ダイドロネル
◆アルコール類
睡眠薬、抗不安薬、抗てんがん薬、糖尿病薬などは、酒を飲むと作用が強くなります。中には大変危険な場合もあるので、注意が必要です。
●ハルシオン
●ベンザリン
●ロヒプノール
●ウインタミン
●デパス
●セルジン
◆セント・ジョーンズ・ワート
<薬品名>
●ワーファリン
●ジゴキシン
●テオドール
●フェニトイン
●リスモダン
◆ビタミンKを多く含む食品
抗血栓薬であるワーファリンを飲んでいる場合、ビタミンKを含む食費印を摂取すると、作用を弱めます。この薬の服用中は、納豆を食べたりクロレラ(サプリメント)を摂ることは絶対に中止して、緑黄色野菜も大量には食べないようにしましょう。
<薬品名>
●ワーファリン
薬の副作用について
日ごろから高齢者の持っている病気やその症状の様子などを理解していることが大切です。◆高齢者の代謝機能と薬上記でも述べたように、高齢になればどうしても、いくつかの疾患を併せ持つようになる為、飲む薬の種類が増えていくことはやむをえません。なかには症状に合わせて医者から薬をもらっていたら、自然と薬の量が増えてしまったという方もいるでしょう。
飲む薬が増えれば、その副作用も増えていきます。副作用の発生頻度は高齢者の方か若い人よりも高いのです。高齢なると脂肪の量は増え、一方で、水分は減少します。服用した薬を希釈する水分が足りなくなり、薬の濃度が高くなるのです。また、薬を貯蔵する脂肪組織が多いため、脂肪に溶け込む薬も多くなります。
また、老化により腎臓の機能も低下し、尿中にうまく薬を排泄できなくなります。薬を代謝する肝臓の機能も低下していきます。このように様々な理由により、高齢者では体内に蓄積される薬の量が多くなってしまうのです。つまり、高齢者は若い人と比較して、薬が長時間にわたり体内にとどまり、その作用を長引かせ、副作用のリスクを高めてしまうのです。
こういった理由から、薬の量を減らす必要がある場合が多くなります。例えば、高血圧に使う薬の一部では若い人に見られないほど、劇的に血圧が下がる場合があります。睡眠薬などでも効果が長時間続いたり、筋弛緩作用が強く出て転倒したりすることも少なくありません。長生きしているという事は丈夫な証拠です。薬を使う場合には、本当に必要なのかどうかをよく確認すること、薬を少ない量から使うことが求められます。