コラム2020/03/27
高齢者の着替えを介助するときのポイント
高齢者の着替えを介助するときのポイント
介護をはじめたばかりの方が戸惑うことのひとつが、着替えの介助。 高齢者の衣類は食事や排泄などで汚れることも多いため、着替えの介助をする機会は頻繁にあります。場合によっては、1日に複数回着替えなわなければならないこともあるでしょう。今回は着替えの介助の手順やコツについて説明させていただきます。
こまめに着替えをしましょう
高齢者の衣類は、汚れていないように見えても、意外と汚れています。汗や乾燥した皮膚の付着など気づきにくい汚れがたくさん付いているのです。とくに下着は汚れやすいので注意が必要。清潔を保つために、こまめな着替えは欠かせません。また、着替えをすることによって、気分転換をさせることができ、生活のメリハリにもつながります。寝るときや外出時には適切な服に着替えることで、高齢者は時間の流れを意識し日常生活への活力が出るのです。このように、体と心、両方の健康を維持していくために、着替えは重要な役割を持ちます。
着替えの介助をスムーズにおこなう2つのコツ
コツ1:着替えやすい衣類にする
着替えの介助をスムーズにおこなうには、着替えやすい衣類を選ぶことが大切になります。着替えやすい衣類とは、以下のようなものです。伸縮性のある生地 ゆとりのあるサイズ 大きめのボタン、あるいはマジックテープを使ったものウエストがゴム製のもの サイズがきつかったり、生地に伸縮性がなかったりすると、窮屈な動きを高齢者に強いることになってしまいます。ある程度余裕を持った動きができる衣類を選ぶと、介助がしやすくなるでしょう。
コツ2:関節をしっかり支える
トレーナーの袖やズボンの裾に体を通すときに、関節をしっかり支えるようにしましょう。関節の可動域が狭まる「拘縮」を高齢者が抱えている場合、無理に腕や脚を引っ張って着替えさせると、怪我につながりかねません。そこで、肘や膝、手首や足首などを支えて関節を安定させましょう。もし自分で身体を動かすことが難しい人の場合は、とくにこの関節に注意して着替えの介助をおこなうとよいでしょう。
半身まひの着替えの介助の基本「脱健着患」
半身まひや身体の片側に障害を持っている方の着替えの介助の際に重要となるポイント、それは「脱健着患」(だっけん・ちゃっかん)です。 「脱健着患」とは、「(衣服を)脱ぐときは問題のない健康なほう(健側)から、着るときは病気や怪我、麻痺などのあるほう(患側)から」という意味。どうしても動きが制限される着替えのタイミングで、高齢者にできる限り負荷をかけないためです。介護職員・看護職員にとっては基本的な原則として知られています。 患側を着るときには、うまく動かせないほうから袖を通す。脱ぐときには、健康な側から袖を抜いていく。これを意識するだけでも、高齢者も介護者も安心して介護をすることができます。以下で、実際の手順を確認しましょう。
脱衣
1.安定した場所に座ってもらう
2.脱がせやすいように、裾をたくし上げておく
3.(可能なら)利用者自身にボタンを外してもらう
4.健側の腕を裾から抜いていく
5.患側は利用者本人に脱いでもらう
6.(トレーナーなど被るタイプの衣類の場合)あごなどに引っかからないように頭側を脱ぐ
着衣
1.患側から、衣服の袖口に手を入れて迎え手をしながら着せる
2.健側の腕を袖に通していく
3.(トレーナーなど被るタイプの衣類の場合)頭側を衣類に通す
4.(可能なら)利用者自身にボタンを留めてもらう
座った状態を保てない場合は、寝た状態で着替えをおこないます。そのときも、「脱健着患」を意識することは変わりません。ただし、患側を下にした横向きの姿勢は避けたほうがよいので、その点は注意するようにしてください。 ズボンなど下半身の着替えを行うときも、「脱健着患」を意識して上記と同様の手順で行っていきます。立位が保てる方であれば、手すりなどにつかまってもらいながら、立位が保てないようであれば横になった状態でおこなうとよいでしょう。
まとめ
着替えの介助は、毎日のことだからこそ、できるだけ負担を軽減したいものです。まずはゆっくりでいいので、ひとつずつ手順を確認しながら、着替えの介助をおこなってみてください。また、着替えをすべて介護者が手伝うのではなく、できる限り高齢者にも自身で着替えてもらうようにしましょう。ADL(日常生活動作)を衰えさせないことが大切です。