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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の基礎知識 胃瘻造設と管理について

コラム2020/03/25

在宅医療の基礎知識 胃瘻造設と管理について

在宅医療の基礎知識 胃瘻造設と管理について

食事の経口摂取が困難となった場合、別の方法での栄養摂取を考えなければなりません。そういった場合に、選択肢と一つとして「胃瘻」があります。先日、当院が4月1日より全床地域包括病床へ移行することで、今後のちくさ病院の胃瘻に関しての対応に関してのご質問を頂きました。そこで今回は、当院での対応方法も含めて、胃瘻の増設と管理についてお話をさせて頂きます。まずは下記動画を閲覧いただき、詳細をご理解いただれば幸いです。

長期栄養法について(ちくさ病院摂食嚥下障害支援チーム)

胃瘻カテーテルの種類とメリット・デメリット

一言に胃瘻といってもカテーテルに種類があるのは皆さまご存じでしょうか。胃瘻カテーテルは胃の内部の形状によって2パターンに分けられます。

◆バンパータイプ

形状:傘を閉じたような状態で胃の内部へ挿入し、胃の内部で傘を開くようにすることで、
抜けないようにしているのがバンパータイプの特徴です。
管理:カテーテルが抜けにくく、交換頻度が低いです。交換頻度はおよそ半年ごとの交換
となります。
交換:交換時に内視鏡等の設備が必要なため、在宅での交換ができません。交換のために
病院に行く必要があります。

◆バルーンタイプ

形状:胃の中で風船を膨らませるようにすることで抜けないようにするのがバルーンタイプの特徴です。
管理:バンパータイプと比べると抜けやすいのが特徴です。また交換頻度も高く、交換頻
度は1~2か月ごとの交換が必要になります。
交換:バンパータイプが交換時に通院が必要なのに対し、バルーンタイプは在宅での交換が可能です。

長所と短所のまとめ
・バンパータイプは在宅交換ができないが、抜けにくく交換頻度が低い。
・バルーンタイプは在宅交換が可能だが、抜けやすく交換頻度が高い。

「ボタン型」と「チューブ型」

胃の内部の形状の種類とは別に、体外の形も「ボタン型」と「チューブ型」があります。

◆ボタン型

形状:蓋(ボタン)をあけて、都度チューブを装着するようなタイプ。逆流防止弁が付いている。
見た目:目立たない。
管理:毎回ボタンを開けて、チューブを接続する必要がある。自己抜去のリスクは低い。

◆チューブ型

形状:チューブを外に出しているタイプ。
見目:目立つ。
管理:栄養チューブとの接続が簡単。自己抜去のリスクは高い。

長所と短所のまとめ
ボタン型:見た目は目立たず、自己抜去のリスクも低いが、都度栄養チューブを接続する必要があるため、接続に手間取る可能性がある。
チューブ型:見た目が目立つ。自己抜去のリスクも高い。栄養チューブとの接続が簡単。

胃瘻をどのタイプにするかは、ご本人様の状態、介護をする方のニーズに合わせて選択をする必要があります。胃瘻造設の際は、普段の生活のご様子や、在宅へ帰った後の生活のイメージを医師と共有し、どのタイプにするのがよいのかを決めましょう。

ちくさ病院の胃瘻に関するルールのご紹介

胃瘻造設、ペグ交換のルールは病院によって異なります。当院も新病院への移転に伴い、病床変更がある為、ルールの変更があるのではないかとご質問を頂いたため、この場をお借りしてご紹介をさせて頂きます。

◆胃瘻造設について
全床地域包括ケア病床への移行に伴い、胃瘻造設ができなくなるのではとご質問を頂きましたが、当院ではこれまで通り、胃瘻造設もご対応させていただきます。ご安心ください。

◆ペグ交換について
定期的なペグ交換に関しては、外来での対応をさせて頂きます。事前に外来予約を入れて頂き、交換後はそのままご帰宅頂けます。

経腸栄養剤の種類と特徴

胃瘻のお話に付随して、経腸栄養剤の種類と特徴についてご紹介をさせて頂きます。
ペグへ栄養剤を注入する際、胃食道逆流や、下痢を防ぐために、専用の補助食品などを用いて半固形化することがあります。最近では、リフラノン(ヘルシーフード)、イージーゲール(大塚製薬)、ソフティアENS(ニュートリー)など、経腸栄養剤に添加して使用できる半固形化補助食品が市販されています。ご本人様の状態に合わせて、利用することで負担を軽減することができるため、チーム内で情報を共有し、模索していくことが大切です。経腸栄養剤をどれにするのかの選択に関しては下記の栄養療法と投与経路のアルゴリズムをご参照ください。

まとめ

今回は胃瘻に関して改めてお話をさせて頂きました。誤嚥性肺炎のリスクや、栄養状態、介護者の負担などを考慮して、胃瘻カテーテルの形状や栄養剤を決めていく必要があります。最適解を導き出すためには、介護と医療の両面からの視点が必要です。在宅での胃瘻などを開始する際には、退院前カンファレンス、サービス担当者会議などでよく話し合って決めていく必要がありますね。