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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

縟瘡ケアのカギ「チームワーク」

コラム2020/03/16

縟瘡ケアのカギ「チームワーク」

縟瘡ケアのカギ「チームワーク」

高齢者の在宅生活を支えていくうえで、縟瘡ケアは大きな問題のひとつです。関係者の皆様は、縟瘡ケアに関して様々な工夫をされているかと思います。「そもそも縟瘡なんて作らせません!」なんて心強いご意見を下さる方もみえられるかもしれません。縟瘡を作らせないための工夫ももちろん大切ですが、実際にできてしまった後のケアもやはり大切!!という事で、今回は縟瘡ケア開始までの流れのお話をさせて頂きます。

縟瘡はなぜできるのか 原因

縟瘡はなぜできるのでしょう。健常者は無意識のうちに一点に長時間圧力がかからないように寝返りをうったりしますが、自身で体位変換のできない寝たきりの方などは、自身の体重で長時間圧迫された皮膚の細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり、縟瘡ができます。また、皮膚だけではなく、皮膚の中にある骨に近い組織が傷ついている場合もあります。これが縟瘡ができる基本的な原因です。

縟瘡はなぜできるのか 要因

「原因」と「要因」の使い分けには諸説ありますが、ここではわかりやすくするため、「要因」=ある事象に影響するもの(=推定)と定義し、褥瘡を作り出す要因はどこにあるのかを考えてみます。縟瘡を発生させる要因には大きく分けて二つ。「個体要因」と「環境・ケア要因」です。
個体要因とは、基本的日常生活自立度、病的骨突出、関節拘縮、栄養状態、浮腫、多汗、尿・便失禁を指します。
環境・ケア要因とは、体位変換、体圧分散用具、頭側挙上、座位保持、スキンケア、栄養補給、リハビリテーション、介護力を指します。
これらを総合的に評価し、要因を探ることで、再発や重症化を防止することにつながります。また、疾患によっては縟瘡発生につながりやすい疾患もあるため、注意が必要です。縟瘡ガイドブックでは、縟瘡発生の危険因子として特に注意すべき疾患として、うっ血性心不全、骨盤骨折、脊髄損傷、糖尿病、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患を挙げています。また、考慮すべき疾患としては、悪性腫瘍、アルツハイマー型、関節リウマチ、骨粗鬆症、深部静脈血栓症、パーキンソン病、末梢血管疾患、尿路感染症が挙げられています。どの疾患も在宅で過ごす要介護者に多くみられる疾患ではありますが、「特に注意すべき疾患」がある場合は、予防に一層気を使う必要がありそうです。

縟瘡ができてしまったら・・・

縟瘡らしきもの発見したら、皆様ならまずは体位変換、30度側臥位の体勢を取らせるなどして縟瘡部分に圧がかからないようにする、その後医師や看護師に連絡といった基本的な流れは押さえているかと思います。次にチームとしての縟瘡ケアを行っていくうえで共有すべきことをお伝えします。

患者の全体像をもう一度見直す
先述の縟瘡発生の要因の探るうえで、もう一度、患者の全体像を見直しましょう。基礎疾患は何をもっているのか、普段のお食事はしっかり摂れているのか(栄養状態の把握)?、骨突出や関節拘縮はあるのか?、家族の介護の状況はどうだったのか?、排せつの状況は?など、あらゆる情報をもう一度整理して、まずは「なぜ縟瘡が発生したのか」の要因を深堀することが大切です。ここでのストーリーの把握がしっかりできるかが、今後のケアの方向性に大きく関わってくるため、じっくりと見直す必要があります。

情報共有と全体へのアプローチ
全体を把握し、チーム全体で共有できた後は、実際のケアの方向性を決める必要があります。ここでいうケアとは、塗り薬に何を使うのか、ドレッシング材を使って対応するのかなどの医療的なケアの方針だけではなく、環境整備も含めた全身的なケアを指します。基本的なこととしては、症状のコントロールの方法、体圧分散・ポジショニングのコントロール、栄養状態のコントロールなどが挙げられますが、急性期の疾患の有無、患者の性格、患者・家族のライフサイクル、家族の意向・心情、介護力、利用可能なサービスなど、考慮すべき点は数多くあります。

役割分担の必要性

チームでケアにあたる上では役割分担をしておくことも大切です。

訪問看護ステーション
訪問看護を活用することで、日常的な縟瘡の観察、全身状態の把握をすることが可能になるため、訪問看護がまだ入っておらず介入が可能な患者の場合はすぐに調整を行いましょう。異常の発見や、治療法の提案が可能なため、縟瘡ケアチームにおけるリーダー的な役割を担います。

薬剤師
縟瘡にあった適切な薬剤選択のアドバイス、薬剤の管理します。

訪問歯科・ST
嚥下低下で、栄養状態が不良の場合は、訪問歯科やSTを利用して、経口摂取を維持することも大切です。

福祉用具
体圧分散寝具の種類の選定など、患者にあったものを選定します。

医師
全身状態を把握し、ケアの方向性を提示します。縟瘡のアセスメントを行い、必要な物品、薬剤の提供をします。また感染発生時の抗生剤の投与、ばあによってはデブリを行うケースもあります。

ケアマネージャー
方向性を決めるためのサービス担当者会議の設定、各種サービスの調整、サービス担当者会議に参加できなかった事業所への連絡などを行います。

まとめ

今回は、チームとしての縟瘡ケアの開始までの流れのお話をさせて頂きました。縟瘡は重症化すると、治癒までに数か月かかります。入院な必要なケース、命にかかわる問題にまで発展するケースもあります。日々の生活が発生要因に直結していることもあり、スムーズな連携と包括的ケアが再発防止、重症化の防止につながります。縟瘡を重症化させない、再発させないチームを作っていきましょう。