在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/10/06
脳梗塞後の寝たきりと低栄養を背景に悪化した褥瘡に対し、訪問診療と訪問看護で在宅管理を行った事例
要点サマリー
脳梗塞後の左片麻痺により日常生活の多くに介助を必要とする82歳男性に対し、退院後に臀部褥瘡が悪化したことを契機として訪問診療を導入した事例である。外来受診には家族による移動介助が必要で、継続的な通院が困難であった。また、褥瘡の悪化には臥床時間の増加や食事量低下など複数の要因が関与していると考えられたため、創部処置だけでなく全身状態を含めた医学的管理が必要となった。訪問診療と訪問看護が連携し、創部、栄養状態、感染兆候、疼痛などを継続的に評価することで、在宅で褥瘡を管理できる体制を構築した。ケアマネジャーにとっては、褥瘡そのものだけでなく、その背景にある栄養、活動量、介護環境まで含めて医療側へ共有することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:82歳・男性
居住地:該当なし
世帯構成:その他
キーパーソン:家族
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療制度
介護保険:利用あり
訪問診療、訪問看護、福祉用具貸与、居宅介護支援を組み合わせて在宅療養を支援した。
診断名
・脳梗塞後遺症
・左片麻痺
・臀部褥瘡
導入の背景
脳梗塞後の左片麻痺があり、日常生活の多くに介助を必要としていた。
入院中に臀部褥瘡を認めていたが、治療により一定の改善が得られたため自宅へ退院した。
しかし、退院後はベッド上で過ごす時間が長くなり、活動量が低下した。また、食事摂取量も徐々に減少し、褥瘡の状態が再び悪化するようになった。
ケアマネジャーと訪問看護師が創部の悪化を確認したものの、外来受診には家族による移動介助が必要であり、定期的に医療機関へ通院することは困難であった。
また、褥瘡については局所の処置だけでなく、食事摂取量の低下、長時間の臥床、活動量低下など、治癒を妨げる背景要因を含めて評価する必要があった。
このため、訪問看護による創傷管理に加えて、医師が定期的に創部と全身状態を評価できる体制が必要と判断し、訪問診療を導入した。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、臀部褥瘡の大きさや深さ、滲出液、周囲皮膚の状態などを継続的に確認した。
創部だけでなく、発熱などの感染兆候、疼痛の有無、食事摂取量、栄養状態、活動量などについても併せて評価した。
訪問看護とは創部の状態や処置内容について情報を共有し、状態の変化に応じて処置方法を見直した。医師の診察日以外にも訪問看護から創部の変化を共有できる体制を整えることで、在宅で継続的な褥瘡管理を行えるようになった。
また、臥床時間が長いことを踏まえ、福祉用具を活用しながら褥瘡悪化を防ぐ療養環境についても検討した。
家族にとっても、創部の変化や全身状態について医師・訪問看護師へ相談できるようになったことで、医療的な判断を家族だけで抱え込む必要がなくなり、介護負担の軽減につながった。
医療対応の詳細
主病
脳梗塞後遺症、臀部褥瘡
対応内容
・褥瘡の大きさ、深さ、滲出液、周囲皮膚の評価
・感染兆候の確認
・疼痛の評価
・食事摂取量および栄養状態の確認
・活動量、臥床時間の確認
・脳梗塞後の左片麻痺を踏まえた身体状況の評価
・訪問看護との創部状態、処置内容の共有
・状態変化に応じた処置方法の見直し
・福祉用具を活用した療養環境の調整
・家族への状態説明と相談体制の確保
・ケアマネジャーとの生活状況の共有
医療処置
・褥瘡処置
支援のポイント
・褥瘡を創部だけの問題として捉えず、食事摂取量、活動量、臥床時間など悪化の背景を確認する
・通院困難な患者では、訪問看護による処置と医師による定期的な医学的評価を組み合わせる
・創部の状態だけでなく、感染兆候や疼痛、栄養状態など全身状態を継続して評価する
・ケアマネジャーが把握している食事量や活動量などの生活情報を医療側へ共有する
・訪問看護から医師へ小さな変化を早期に報告できる連携体制を整える
・長時間の臥床がある場合は、処置だけでなく除圧や福祉用具など療養環境も見直す
・家族だけに創部の判断や対応を委ねず、医療職へ相談できる体制を確保する
考察
本症例は、脳梗塞後の片麻痺により活動量が低下した患者において、退院後の長時間臥床と食事摂取量低下を背景として褥瘡が悪化した事例である。
褥瘡への支援では、創部を処置することだけでは十分ではない。活動量低下、栄養状態、除圧環境など複数の要因が治癒や再発に影響するため、患者の生活全体を把握しながら対応する必要がある。
本症例では、訪問看護が日常的な創部変化を確認し、訪問診療が医学的評価と処置方針の調整を担うことで、通院することなく継続的な創傷管理を行う体制を構築した。また、ケアマネジャーから食事量や活動状況などの生活情報が共有されることで、褥瘡悪化の背景を含めた支援につなげることができた。
ケアマネジャーにとっては、「褥瘡ができたから医療につなぐ」という視点だけでなく、「なぜ褥瘡が悪化しているのか」を生活面から整理することが重要である。創傷管理、栄養、活動量、福祉用具、家族負担を一体として評価し、医療と介護で役割を分担することが在宅療養の継続につながる。
付記情報
・診療科:内科
・病態・症状:脳卒中(脳梗塞、脳出血)、その他
・世帯構成:その他