在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/08/18
急性のADL低下を契機に訪問診療を導入し、脳梗塞後の生活再建と家族支援を進めた事例
要点サマリー
心原性脳塞栓症により右半身麻痺を呈し、急激にADLが低下した82歳男性に対し、月1回の訪問診療を導入した事例である。発症前は自立した生活を送っていたため、本人・家族ともに突然の身体機能低下を受け止めるまでに時間を要した。在宅医療では、脳梗塞後の全身状態と身体機能を継続的に評価し、リハビリテーションと連携しながら生活再建を支援した。ケアマネジャーにとっては、急激なADL低下を身体機能の問題だけで捉えず、本人・家族の受容過程と実際に支援できる家族体制を踏まえて在宅生活を再設計することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:82歳・男性
居住地:該当なし
世帯構成:親子
キーパーソン:長女(別居・近隣在住)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(想定)
介護保険:要介護4
診断名
・心原性脳塞栓症
・脳梗塞後遺症(右半身麻痺)
導入の背景
心疾患に対する手術後、心原性脳塞栓症を発症した。発症前はADLが保たれ、自宅でも概ね自立した生活を送っていたが、脳梗塞により右半身麻痺が出現し、移動や日常生活動作に大きな介助を必要とする状態となった。
それまで自立していた生活から急激に状態が変化したため、本人・家族ともに今後の生活に対する不安が大きかった。
長男と同居しているものの、長男は単身赴任のため日常的な介護を担うことが難しく、近隣に住む長女を中心に実際の支援体制を構築する必要があった。
家族からは、急な体調変化時に相談できる医療体制を確保しながら、定期的に状態を確認してほしいとの希望があり、脳梗塞後の慢性期管理と在宅生活再建を目的として月1回の訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、脳梗塞後の全身状態、右半身麻痺、活動状況、ADLの変化を継続的に確認した。
活動性低下に伴う廃用の進行を防ぐため、リハビリテーションサービスと連携し、本人の身体機能に応じた活動を継続できるよう支援した。
本人・家族に対しては、脳梗塞後の身体機能回復には個人差があることを踏まえ、現在の状態と今後の見通しについて繰り返し共有した。発症前の生活への回復のみを目標とするのではなく、現在の身体機能でどのように生活を再構築するかという視点で支援を行った。
また、長男が日常的な支援を担いにくい状況を踏まえ、近隣に住む長女と情報共有を行いながら、多職種で在宅療養を支える体制を整えた。
医療対応の詳細
主病
心原性脳塞栓症、脳梗塞後遺症(右半身麻痺)
対応内容
・月1回の定期訪問による全身状態の評価
・右半身麻痺およびADLの継続的評価
・脳梗塞後の二次的合併症の確認
・活動性低下および廃用の進行予防
・リハビリテーションサービスとの連携
・本人、家族への病状説明と今後の見通しの共有
・長女を中心とした家族支援体制の調整
医療処置
該当なし
支援のポイント
・急激なADL低下では、身体機能だけでなく本人・家族の心理的な受け止めを確認する
・発症前の生活とのギャップが大きい場合は、回復への期待と現在の状態を整理しながら支援する
・同居家族がいても、就労や居住状況を確認し、実際に介護を担える人物を明確にする
・近隣家族と多職種で情報共有し、一人の家族へ支援が集中しない体制を整える
・リハビリテーションと連携し、身体機能の回復だけでなく現在の能力に合わせた生活再建を進める
・定期的な訪問と相談体制を整え、本人・家族が状態変化を抱え込まない環境を作る
考察
本症例は、心原性脳塞栓症による右半身麻痺そのものに加え、それまで自立していた生活が突然失われたことへの適応が大きな支援課題となった事例である。
脳梗塞後の在宅療養では、麻痺やADLのみを評価するのではなく、本人と家族が発症前の生活との違いをどのように受け止めているかを確認する必要がある。回復への期待が大きい一方、思うように身体機能が改善しない場合には、本人・家族双方の落胆につながることもある。
そのため、リハビリテーションによる機能回復を支援しながら、現在の身体機能でどのような生活が可能かを具体的に整理し、生活そのものを再構築する視点が重要である。
ケアマネジャーにとっては、急性期治療終了後を単なる退院支援として捉えず、本人・家族の受容過程、実際の家族介護力、リハビリテーション、医療支援を組み合わせながら、新たな生活を作り直す支援として捉えることが重要である。
付記情報
・診療科:内科、リハビリテーション科
・病態・症状:脳卒中(脳梗塞、脳出血)
・世帯構成:親子