在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/08/18
夫婦同時介入を見据えた事前調整により、認知症高齢夫婦の在宅療養体制を円滑に構築した事例
要点サマリー
認知症を有する88歳女性に対し、夫の訪問診療導入を契機として本人にも訪問診療を開始した事例である。夫婦ともに認知機能が低下しており、夫の外来通院継続が困難となったことから、長男より訪問診療について相談があった。本人にも短期記憶障害がみられていたため、夫の初診時に本人から診療希望が示される可能性を想定し、事前に夫婦同時介入が可能な体制を整えた。ケアマネジャーにとっては、認知症高齢夫婦では一人ずつ支援を考えるのではなく、夫婦を一つの生活単位として捉え、今後の変化を予測して支援を準備することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:88歳・女性
居住地:該当なし
世帯構成:夫婦のみ
キーパーソン:長男(別居)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険1割
介護保険:要介護1
診断名
・認知症
導入の背景
同居する夫が認知症と診断され、認知機能低下により外来受診の継続が困難となったことから、長男より訪問診療導入について相談があった。
一方、本人にも短期記憶障害を中心とした認知機能低下がみられ、日常生活への影響が徐々に認められていた。しかし、定期的な医療介入には至っておらず、本人の認知機能や生活状況を継続的に評価する機会が十分に確保されていなかった。
相談内容から、夫の初診時に本人からも診療希望が示される可能性が高いと考えられた。このため、医療側では夫婦双方への介入をあらかじめ想定し、必要な準備を整えたうえで初回訪問を行った。
本人の意向を確認した結果、本人についても訪問診療を開始することとなり、夫婦を一体として継続的に支援する体制を構築した。
介入内容と経過
初回訪問では、夫婦それぞれの認知機能や生活状況を確認し、在宅生活を継続するうえでの課題を整理した。
本人は自身の認知機能低下について十分な自覚がみられなかったが、生活状況や服薬状況を確認すると、短期記憶障害による影響が認められた。このため、訪問診療では認知機能の変化を継続的に評価するとともに、服薬状況や日常生活上の困りごとについて確認することとした。
また、夫婦双方に認知機能低下があることから、どちらか一方をもう一方の安定した支援者として位置づけることは難しいと判断した。夫婦それぞれの状態を把握しながら、世帯全体として生活が維持できているかを確認する体制を整えた。
別居する長男とも継続的に情報共有を行い、今後の認知症進行や介護負担増加を見据え、必要な支援について早期から相談を進めた。事前に夫婦同時介入を想定していたことで、導入時の混乱を避けながら円滑に在宅医療体制を構築することができた。
医療対応の詳細
主病
認知症
対応内容
・認知機能低下の継続的な評価
・短期記憶障害による日常生活への影響確認
・服薬管理状況の把握
・夫婦双方の生活状況の継続的な評価
・夫婦を一つの生活単位として捉えた在宅療養支援
・長男への病状説明および情報共有
・将来的な認知症進行と介護負担増加を見据えた支援調整
医療処置
該当なし
支援のポイント
・認知症高齢夫婦では、一方の相談を契機にもう一方の支援ニーズも確認する
・初回訪問時に追加の支援希望が生じる可能性を予測し、事前に対応できる体制を整える
・夫婦双方に認知機能低下がある場合、互いを安定した介護者として前提にしない
・本人ごとの状態だけでなく、食事、服薬、受診、生活管理が世帯として維持できているかを評価する
・別居家族と早期から情報共有し、認知症進行後の支援体制を準備する
・問題が顕在化してからではなく、将来的な介護力低下を予測して医療・介護体制を整える
考察
本症例は、本人への訪問診療導入だけでなく、夫婦双方の認知機能低下と今後の生活維持を見据え、事前に夫婦同時介入を想定したことが円滑な支援につながった事例である。
認知症高齢夫婦では、現在は二人で生活できていても、一方の認知機能や身体機能が低下することで、もう一方の生活も急速に不安定となる可能性がある。特に双方に認知機能低下がある場合、どちらかを介護者として固定的に捉えるのではなく、夫婦全体の生活機能を評価する必要がある。
本症例では、夫への訪問診療相談の段階で本人にも医療ニーズがあることを予測し、初回訪問前から対応を準備したことで、本人の希望が示された際に速やかに介入することができた。
ケアマネジャーにとっては、一人の支援依頼を個別の問題として完結させず、同居家族の認知機能や介護力にも目を向け、世帯全体で今後起こり得る変化を予測して支援を設計する視点が重要である。
付記情報
・診療科:内科
・病態・症状:認知症
・世帯構成:夫婦のみ