在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/07/27
化学療法後の体調不良と不安を抱える肺がん患者に対し、月1回の訪問診療で在宅療養を支えた事例
要点サマリー
左上葉肺がんに対する化学療法後に体調を崩しやすく、外来受診や体調不良時の医療相談に不安を抱えていた74歳女性に対し、月1回の訪問診療を導入した事例である。本人は自宅に人が訪れることへの抵抗感があり、一般的な月2回の訪問は心理的負担になると考えていた。そのため、基幹病院と協議し、本人が受け入れられる月1回の訪問から支援を開始した。ケアマネジャーにとっては、標準的な支援頻度を一律に当てはめるのではなく、本人の治療状況、生活背景、受け入れ可能性に応じて医療との接点を調整することが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:74歳・女性
居住地:名古屋市昭和区
世帯構成:親子
キーパーソン:長女(同居)
保険・福祉情報
医療保険:国民健康保険、前期高齢者医療2割
介護保険:要介護1、負担割合1割
診断名
・左上葉肺がん
導入の背景
左上葉肺がんに対して基幹病院で化学療法を受け、定期的な外来受診を継続していた。しかし、化学療法後には体調を崩す傾向があり、その状態で自力受診することは困難であった。
同居する長女は仕事をしており、体調不良時に毎回通院へ付き添うことは難しかった。そのため、本人は化学療法後に体調が悪化した際、十分な医療支援を受けられないのではないかという不安を抱えていた。
基幹病院から訪問診療を提案されたが、本人は自宅に人が来ることを苦手としており、月2回の定期訪問は心理的な負担になると考えていた。
そこで、本人の意向と治療状況を踏まえ、基幹病院と訪問診療側で協議を行った。専門的ながん治療は基幹病院で継続し、在宅での体調確認と不安軽減を月1回の訪問診療で補完する方針を本人へ提案した。本人の納得が得られたため、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、月1回の定期訪問により、化学療法後の体調変化や食事摂取状況、倦怠感、呼吸状態などを確認した。
基幹病院での化学療法と専門的評価は継続し、訪問診療では日常的な体調管理と療養上の不安への対応を担った。必要な情報は医療機関間で共有し、治療方針に齟齬が生じないよう調整した。
本人が負担に感じない訪問頻度としたことで、訪問診療を継続して受け入れることができた。定期的に相談できる医師との関係が構築され、化学療法後の体調不良に対する精神的な不安も徐々に軽減した。
長女にとっても、仕事を続けながら本人の療養を支えやすい体制となり、現状であれば在宅療養を継続できるという安心感につながった。
医療対応の詳細
主病
左上葉肺がん
対応内容
・化学療法後の全身状態および症状の確認
・倦怠感、食欲低下、呼吸状態などの経過観察
・療養生活に対する不安への継続的支援
・基幹病院との診療情報共有
・本人の受け入れ可能性に配慮した月1回の訪問
・長女の通院介助負担を踏まえた支援体制調整
医療処置
該当なし
支援のポイント
・化学療法後の体調不良と、外来受診の困難さを具体的に把握する
・基幹病院でのがん治療と訪問診療による日常管理の役割を明確にする
・標準的な訪問頻度を一律に適用せず、本人が受け入れられる頻度を検討する
・自宅への訪問に抵抗がある場合は、支援の必要性と心理的負担の両方を評価する
・月1回の訪問であっても、相談先ができることによる安心感を支援効果として捉える
・同居家族の就労状況を確認し、通院介助を家族だけに依存しない体制を整える
考察
本症例は、化学療法後の体調不良に対する支援が必要である一方、自宅への訪問自体に心理的抵抗を持つ患者に対し、月1回という受け入れ可能な頻度から訪問診療を開始した事例である。
訪問診療では、病状だけでなく、本人がどの程度の支援であれば無理なく受け入れられるかを確認する必要がある。必要性が高いことを理由に訪問回数を一方的に増やせば、支援そのものを拒否され、医療との接点が失われる可能性もある。
本症例では、専門的ながん治療は基幹病院が担い、訪問診療は化学療法後の体調確認と不安軽減を担う役割分担を行った。月1回であっても継続的な医療接点を確保したことで、本人の安心感と家族の負担軽減につながった。
ケアマネジャーにとっては、支援量の多さだけで評価するのではなく、本人が継続して受け入れられる支援方法を多職種で調整する視点が重要である。
付記情報
・診療科:内科、呼吸器内科、腫瘍内科
・病態・症状:がん
・世帯構成:親子