在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/06/26
軽症脳梗塞による救急搬送反復を契機に在宅医療体制を構築した高齢世帯の事例
要点サマリー
脳梗塞を発症した95歳男性に対し、救急搬送と帰宅対応を繰り返す中で、訪問診療を導入した事例である。本人は在宅生活継続を希望しており、同居する妻および長男を中心とした支援体制を構築した。在宅医療では脳梗塞再発予防と状態観察を中心に介入し、内服管理や緊急時相談体制整備を行った。ケアマネジャーにとっては、入院適応とならないが在宅では不安定にみえる高齢者に対し、安心して在宅生活を継続できる医療導線をどう作るかが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:95歳・男性
居住地:該当なし
世帯構成:親子
キーパーソン:長男(同居)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険
介護保険:要介護3
診断名
・脳梗塞
導入の背景
軽度の脳梗塞を発症し救急搬送されたが、急性期治療後は入院適応とならず、自宅へ戻る対応が続いていた。
しかし、その後もふらつきや軽度の麻痺症状、食欲低下などを契機に家族不安が強く、救急要請を繰り返す状況となっていた。特に長男が通院介助や受診調整を担っていたが、高齢の妻も同居しており、家族全体の負担が増大していた。
本人はできる限り家で生活したいという希望を持っていたことから、緊急時を含めた在宅医療体制構築を目的として訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、血圧管理や神経症状変化の確認を継続しながら、脳梗塞再発予防を目的とした慢性疾患管理を行った。
また、服薬内容について再整理を行い、本人、家族双方へどの薬が再発予防につながるのかを説明しながら内服管理支援を実施した。
体調変化時には、まず訪問診療側へ相談できる体制を整えたことで、家族のすぐ救急車を呼ばなければならないという心理的不安軽減にもつながった。
長男に対しては、症状観察ポイントや緊急受診が必要な状態について説明を行い、在宅での判断支援も継続した。結果として、不要な救急搬送頻度が減少し、本人希望に沿った在宅生活継続が可能となった。
医療対応の詳細
主病
脳梗塞
対応内容
・血圧管理および脳梗塞再発予防
・神経症状変化の継続的観察
・内服管理および服薬指導
・緊急時相談体制構築
・家族への症状観察指導
・再救急搬送予防を意識した在宅支援
医療処置
該当なし
支援のポイント
・軽症脳梗塞後の在宅医療導入
・入院不要だが不安定な状態への在宅支援
・長男の通院介助負担軽減
・緊急時相談導線を整備した心理的不安軽減
・内服管理を中心とした再発予防支援
・高齢世帯を含めた家族支援体制構築
考察
本症例は、医学的には軽症であっても、在宅側では不安定感が強く、救急搬送反復につながっていた事例である。高齢者では、急性期治療終了後に自宅へ帰れる状態と判断されても、本人、家族にとってはまた悪くなるのではないかという不安が強く残存することが多い。
特に脳梗塞後は、小さな体調変化でも再発を疑いやすく、結果として救急依存傾向につながる場合がある。訪問診療では、単に診察を行うだけでなく、どの状態なら様子を見てよいか、どの状態なら受診が必要かを家族と共有することで、在宅での安心感形成につながる。
ケアマネジャーにとっても、救急搬送を減らすことそのものではなく、家族が安心して在宅生活を続けられる環境を整えることが重要となる症例である。
付記情報
・診療科:内科、神経内科
・病態・症状:脳卒中(脳梗塞、脳出血)
・世帯構成:親子