在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/06/09
慢性心不全と糖尿病を有する高齢男性に対し、老老介護世帯全体を支える目的で訪問診療を導入した事例
要点サマリー
慢性心不全と糖尿病で長年治療を継続していた高齢男性に対し、心不全増悪による入院を契機に訪問診療を導入した事例である。本人の病状管理に加え、主介護者である妻も高齢で歩行障害を抱えており、夫婦世帯全体の支援体制再構築が課題となっていた。在宅医療では慢性心不全と糖尿病の管理を継続しながら、訪問看護、ヘルパー、ケアマネジャーと連携し、妻の介護負担軽減と急変時対応体制の整備を進めた。ケアマネジャーにとっては、患者本人のみでなく介護者も高齢者である現実を踏まえ、世帯単位で支援設計を行うことが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:86歳・男性
居住地:名古屋市千種区
世帯構成:夫婦のみ
キーパーソン:妻(同居)
保険・福祉情報
医療保険:医療保険利用
介護保険:要介護2
診断名
・慢性心不全
・糖尿病
導入の背景
妻と二人暮らしの高齢夫婦世帯で生活していた。本人は慢性心不全と糖尿病で長年治療を継続していたが、ここ数年で体力低下が目立つようになっていた。
一方で、主介護者である妻も83歳と高齢であり、膝関節症による歩行障害を抱えていた。本人の通院付き添いや買い物、家事全般を担っていたが、自身の通院すら後回しにする状況が続いていた。
心不全増悪による入院を機に退院支援カンファレンスが開催された際、妻から主人も心配だが、自分も最近しんどいという本音が聞かれた。ケアマネジャーも、どちらか一方が倒れると生活が成り立たないという危機感を抱いていた。このため、本人の疾患管理だけでなく、夫婦世帯全体を支える視点が必要と判断され、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、慢性心不全と糖尿病の状態を定期的に確認しながら、在宅での病状安定化を図った。訪問看護と連携し、全身状態や体調変化を継続的に把握できる体制を整えた。
また、ヘルパー導入により家事負担を軽減し、妻が介護と生活を一人で抱え込まないよう支援した。妻自身の体調変化についても関係職種間で情報共有を行い、支援が片方だけに偏らないよう調整した。
さらに、緊急時連絡先やショートステイ利用についても早期から整理し、急変時の備えを整えた。結果として、本人の病状安定のみでなく、妻の精神的負担も軽減し、夫婦ともに住み慣れた自宅での生活継続につながった。
医療対応の詳細
主病
慢性心不全、糖尿病
対応内容
・慢性心不全の継続的評価と病状管理
・糖尿病管理
・訪問看護と連携した体調確認
・急変時対応体制の整理
・介護者である妻の負担状況把握
・多職種連携による在宅支援体制調整
医療処置
該当なし
支援のポイント
・患者本人だけでなく、介護者も高齢であることを前提に支援設計を行う
・老老介護世帯では、どちらか一方の体調悪化が生活全体の破綻につながることを意識する
・訪問看護やヘルパーを導入し、家事と介護の負担を分散させる
・妻自身の体調変化も支援対象として継続的に把握する
・ショートステイや緊急時連絡先の整理を早期から進め、急変時の備えを具体化する
・世帯全体で在宅生活を維持する視点を持ち、支援を個人単位で分断しない
考察
本症例は、慢性心不全と糖尿病を有する本人の病状管理に加え、主介護者である妻の高齢化と身体機能低下が在宅継続の大きな課題となっていた事例である。老老介護世帯では、本人の病状だけで支援の必要性を判断すると、介護者側の限界を見落としやすい。
訪問診療は、本人の疾患管理を行うだけでなく、介護者の負担や世帯全体の脆弱性を把握し、多職種と連携して生活基盤を支える役割を担う。本事例では、夫婦だけで抱え込まない支援体制を整えたことで、本人の病状安定と妻の負担軽減の両立が可能となった。ケアマネジャーにとっては、患者単独ではなく、夫婦世帯全体を一つの支援単位として捉える視点が重要である。
付記情報
・診療科:内科
・病態・症状:心不全
・世帯構成:夫婦のみ