在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/05/20
海外在住キーパーソンと連携しながら独居高齢者の在宅療養を継続した事例
要点サマリー
気管支喘息および高血圧症を有し、外来通院継続が困難となった80歳独居女性に対し、訪問診療を導入した事例である。キーパーソンである長女はオーストラリア在住であり、主な連絡手段はメールであった。在宅医療では慢性疾患管理を継続しながら、遠隔家族との情報共有体制を構築し、本人希望を尊重した在宅生活継続を支援した。ケアマネジャーにとっては、家族が近くにいるかではなく、どのように連絡導線を設計するかが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:80歳・女性
居住地:該当なし
世帯構成:独居
キーパーソン:長女(別居、オーストラリア在住)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険
介護保険:要介護3
診断名
・気管支喘息
・高血圧症
導入の背景
以前より気管支喘息および高血圧症に対して外来通院を継続していたが、加齢による体力低下や移動負担増加により、徐々に受診継続が困難となっていた。
独居生活であったものの、本人は住み慣れた自宅での生活継続を強く希望していた。
一方で、キーパーソンである長女は海外在住であり、日常的な訪問支援が難しい状況であった。そのため、医療と介護の双方で情報共有体制を整理しながら、在宅療養を支える目的で訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、喘息症状や血圧変動、全身状態を継続的に確認しながら慢性疾患管理を行った。
呼吸状態悪化時の対応方法について本人へ繰り返し説明を行うとともに、服薬状況や吸入管理についても継続的に確認した。
また、長女とは主にメールを用いて定期的に病状共有を行い、急変時対応や今後の支援方針について情報共有を行った。
時差や距離の問題から即時連絡が難しい場面も想定されたため、ケアマネジャーや訪問看護など地域支援者との連携を密にし、本人が孤立しない支援体制を整備した。結果として、大きな再入院なく在宅生活継続につながっている。
医療対応の詳細
主病
気管支喘息、高血圧症
対応内容
・喘息症状および呼吸状態の継続的評価
・血圧管理および慢性疾患管理
・吸入管理および服薬状況確認
・急変時対応の整理
・海外在住家族との情報共有
・地域支援者との多職種連携
医療処置
該当なし
支援のポイント
・独居高齢者に対する在宅療養支援を、家族の距離だけで判断しない
・海外在住家族を含めた支援導線をあらかじめ具体的に構築する
・メールなど継続可能な手段を用いて、定期的な情報共有体制を整える
・家族不在ではなく、連携方法を工夫するという視点で支援設計を行う
・地域支援者を含めた多職種支援体制を整備し、即時対応が必要な場面に備える
・本人希望を尊重した在宅生活継続支援を行う
考察
本症例は、独居高齢者支援において、家族が遠方にいるという課題に対し、連絡手段や支援導線を工夫することで在宅生活継続につながった事例である。近年では、家族が海外や遠方に在住しているケースも増加しており、頻回に来られないことのみで支援困難と判断できない場面が増えている。
重要なのは、家族が物理的に近くにいるかではなく、必要時に誰とどう連絡を取るか、どの情報をどのタイミングで共有するかを具体的に整理することである。訪問診療は、医療管理のみならず、遠隔家族との橋渡し役としても機能しうる。ケアマネジャーにとっては、家族距離を理由に支援を諦めるのではなく、多職種連携と情報共有設計を行う視点が求められる症例である。
付記情報
・診療科:内科、呼吸器内科
・病態・症状:気管支喘息、高血圧、呼吸状態不安定
・世帯構成:独居