コラム2026/05/21
「寝たきりでも快適に」を実現する医療連携 在宅で褥瘡を予防・改善するために必要な視点
在宅療養における大きな課題の一つに、**褥瘡(床ずれ)**があります。
長時間同じ姿勢で過ごすことで、皮膚と骨の間に持続的な圧力がかかり、血流が低下し、皮膚や組織が傷んでしまう状態です。
褥瘡は一度できると治療に時間がかかることが多く、痛みや感染の原因になるだけでなく、本人の生活の質や家族の介護負担にも影響します。
しかし、褥瘡は
「寝たきりだから避けられないもの」
ではありません。
在宅でも、多職種が連携することで予防や改善につなげることが可能です。
褥瘡は傷だけの問題ではない
褥瘡というと、皮膚の傷そのものに目が向きがちです。
しかし実際には、
・長時間同じ姿勢で過ごしている
・体位変換が十分にできていない
・栄養状態が低下している
・全身状態が悪い
・薬の影響で治癒が進みにくい
といった、さまざまな要因が重なって起こります。
そのため、創部だけを処置しても十分ではなく、生活全体を見ながら支援することが重要です。
訪問診療が担う役割
訪問診療では、医師が定期的に創部の状態を確認し、褥瘡の深さや感染の有無、治癒の進み具合を評価します。
必要に応じて、
・外用薬の処方
・処置方法の指示
・感染時の対応
・全身状態の確認
・疼痛管理
などを行い、医学的な管理を担います。
褥瘡は局所だけでなく、栄養状態や基礎疾患、循環状態など全身の影響を受けるため、医師による継続的な評価が重要になります。
訪問看護、栄養、薬剤の支援が改善につながる
褥瘡ケアでは、訪問看護師の役割も非常に大きくなります。
訪問看護では、
・体位変換
・創部処置
・ガーゼ交換
・ご家族へのケア方法の指導
・皮膚状態の継続観察
などを通じて、日々の実践を支えます。
さらに、褥瘡の改善には栄養状態も大きく関わります。
管理栄養士が、
・たんぱく質
・エネルギー量
・亜鉛などの微量栄養素
を意識した食事内容を提案することで、治癒を後押しできることがあります。
また、薬剤師が服薬状況や薬剤内容を確認し、創傷治癒に影響する薬剤や全身状態への影響を見直すこともあります。
多職種で支えるからこそ、在宅でも改善を目指せる
褥瘡は一つの職種だけで支えるものではありません。
医師、訪問看護師、管理栄養士、薬剤師、介護職、福祉用具担当者などが連携することで、
・圧を逃がす
・創部を守る
・栄養を整える
・薬を見直す
・家族の介護負担を軽減する
といった多面的な支援が可能になります。
このように、褥瘡ケアはまさに多職種連携が力を発揮する領域です。
制度のポイント
在宅で褥瘡ケアを支えるうえでは、以下のような制度やサービスの活用が重要です。
訪問診療
医師が定期的に診察を行い、創部管理や全身状態の確認を行います。
居宅療養管理指導
管理栄養士や薬剤師が在宅で療養支援を行う仕組みで、褥瘡改善に必要な栄養・薬剤管理に活用されます。
訪問看護・福祉用具
訪問看護による創部ケアや体位変換支援、さらに体圧分散寝具などの福祉用具を組み合わせることで、総合的な支援につなげることができます。
導入事例
多職種の関わりで褥瘡が改善したケース
88歳女性。
脳梗塞後遺症で寝たきりとなり、仙骨部に褥瘡が出現しました。
ご家族は処置方法が分からず、不安を抱えていました。
訪問診療導入後、医師が創部を診察し、外用薬を処方。
訪問看護師が体位変換やガーゼ交換の方法を支援しました。
さらに、管理栄養士がたんぱく質や亜鉛を意識した食事内容を提案し、薬剤師が内服薬の見直しを実施。
その結果、数か月で創部は改善しました。
ご家族からは、
「もう治らないと思っていたが、在宅でもここまでできるとは思わなかった」
との声が聞かれました。
まとめ
褥瘡は、寝たきりの方に起こりやすい問題ではありますが、適切な支援によって予防や改善を目指すことができます。
重要なのは、傷だけを見るのではなく、体の状態、栄養、薬、介護環境まで含めて支えることです。
在宅療養では、
医療、看護、栄養、薬剤、介護が連携することで、本人の快適さと家族の安心を支えることができる。
その視点を持つことが、褥瘡ケアの質を高める第一歩になります。