在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/12/25
通院困難となった高齢独居女性に対し、訪問診療で在宅生活を安定して維持した事例
要点サマリー
複数の慢性疾患と認知症を抱え、転倒や体調不良を契機に通院が困難となった独居高齢者に対し、訪問診療を導入。医療処置を最小限にとどめ、服薬管理と定期的な状態把握を中心とした支援により、家族の見守りと連携しながら在宅生活の安定維持を実現した。
基本情報
年齢・性別:87歳・女性
居住地:名古屋市中川区
家族構成:独居。キーパーソンは隣接市在住の長女。長男は他県在住。
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護3(1割負担)
福祉給付金あり
診断名
腰部脊柱管狭窄症
右変形性膝関節症
右股関節痛
末梢性神経障害性疼痛
脂質異常症
アルツハイマー型認知症
鉄欠乏性貧血
慢性胃炎
気管支喘息
導入の背景
夫の死後も独居生活を継続していたが、転倒による骨盤骨折や体調不良を契機にADLが低下した。外来通院が困難となり、入退院を経て自宅へ退院。訪問看護導入後も受診継続は難しく、本人が在宅生活の継続を強く希望したため、訪問診療へ切り替えた。多疾患を抱える中で、生活機能の維持と安全性の確保が課題であった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は大きな体調変動もなく、安定した在宅療養が継続できている。医療処置は行わず、服薬管理、全身状態の定期的モニタリング、生活動線や住環境の調整、生活習慣に関する助言を中心に支援を実施した。隣接市在住の長女が定期的に訪問し、見守りと日常支援を行うことで、無理のない在宅生活が維持されている。
医療対応の詳細
主病:腰部脊柱管狭窄症、変形性膝関節症、神経障害性疼痛、認知症 ほか
医療処置:特別な医療処置は行わず、服薬管理と経過観察を中心に対応
支援のポイント
身体機能・認知機能に応じた生活動線と住環境の調整を行い、転倒や生活上のリスクを軽減した。
キーパーソンである長女との情報共有を継続し、状態変化に即応できる体制を構築した。
医療負担を最小限に抑えつつ、定期訪問による早期対応で急性増悪の予防を図った。
介護保険および福祉給付制度を適切に活用し、生活の安定につなげた。
考察
複数の慢性疾患と認知症を抱えながらも、医療処置を必要としない形で在宅療養を安定して継続できた症例である。支援の要因として、本人の生活状況に合わせた支援設計、家族との緊密な連携、訪問診療による定期的な状態把握と早期対応が挙げられる。通院が困難となった段階で訪問診療へ移行することにより、本人の希望に沿った生活を継続できた点は、今後の支援判断においても重要な示唆となる。
付記情報
診療科:内科、整形外科、その他
病態・症状:認知症、その他
世帯構成:独居