在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/12/25
COPD・慢性呼吸不全により通院困難となった独居高齢者に訪問診療を導入した事例
要点サマリー
COPDと慢性呼吸不全により労作時のSpO₂低下が著明となり、外来通院が困難となった独居高齢者に対し、訪問診療へ切り替えを行った事例である。
在宅酸素療法を継続しながら、通院負担を解消し、本人の「主治医への挨拶をしたい」という思いにも配慮した支援を行った。独居であっても、キーパーソンとケアマネの連携により在宅医療への移行が円滑に進んだケースである。
基本情報
年齢・性別:80歳・男性
居住地:名古屋市千種区
家族構成:本人独居。姪が別市在住。キーパーソンは姪。
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要支援2
福祉給付金資格者証あり
診断名
COPD
慢性呼吸不全
左肺底部結節(肺がんの可能性あり、精査・加療は行わず)
導入の背景
従来はA病院へ月1回の外来通院を行っていたが、立ち上がりや歩行などの軽い動作でもSpO₂が70%台後半まで低下するようになり、通院自体が大きな負担となっていた。
居住環境はエレベーターのないアパート2階であり、外出時の転倒や低酸素リスクも高い状況であった。
最終受診は12月で、翌1月は通院が困難となり、姪が代わりに薬のみ受け取りに行った際、主治医より訪問診療への切り替えを提案された。
その後、ケアマネジャーより当院へ相談があり、訪問診療導入の検討が進められた。
介入内容と経過
訪問診療導入にあたり、本人は「訪問に切り替えたい」という意向を示しつつも、「長年診てもらった主治医に最後に挨拶をしたい」という気持ちを持っていた。
体調を見ながら、可能であれば外来受診、困難な場合はビデオ通話等での挨拶も選択肢とし、本人の思いを尊重した対応とした。
在宅では、在宅酸素療法(安静時・労作時ともに3~4L/分)を継続し、呼吸状態や日常生活動作への影響を中心に経過観察を行っている。
医療対応の詳細
主病:COPD、慢性呼吸不全
既往:気管支喘息、胸膜プラーク(アスベスト曝露歴)、糖尿病、高血圧
感染関連所見:喀痰Mycobacterium lentiflavum陽性、MAC抗体陽性(治療介入なし)
医療処置:在宅酸素療法(HOT)
対応方針:呼吸状態の安定維持を最優先とし、過度な通院負担を避けた在宅管理を実施
支援のポイント
通院困難を早期に評価し、訪問診療へ切り替えた点
独居であっても、姪をキーパーソンとして明確化し、連絡体制を整備した点
医療的判断だけでなく、「主治医に挨拶したい」という本人の心理的ニーズにも配慮した点
居住環境(階段・低酸素リスク)を踏まえた在宅移行判断
考察
本事例は、呼吸器疾患を背景に外来通院が限界に近づいた段階で、訪問診療へ移行したケースである。
通院が「できなくなってから」ではなく、「危険性が高まった時点」で切り替えを検討したことが、本人の安全確保につながった。
また、在宅医療への移行は医療的合理性だけでなく、本人の感情や納得感を丁寧に拾い上げることで、受け入れが円滑になることを示している。
ケアマネジャーが早期に医療側とつながることで、独居高齢者でも在宅医療という選択肢を現実的なものにできることが再確認された。
付記情報
診療科:内科、その他
病態・症状:COPD、慢性呼吸不全
世帯構成:独居