膵頭部がんによる消化管閉塞に対し、在宅緩和ケアを導入したケース
要点サマリー
膵頭部がんによる閉塞性黄疸および十二指腸閉塞を来し、積極的治療は行わずBSC方針で在宅療養を選択した症例である。
ステント留置後の全身状態悪化に対し、疼痛緩和と点滴による支持療法を中心に訪問診療を導入した。
通院困難例において、症状コントロールと家族支援を軸に在宅療養を維持することが重要である。
基本情報
年齢・性別:70歳 男性
居住エリア:名古屋市千種区
家族構成:本人・妻の二人暮らし(KP:妻)
保険・福祉情報
医療保険:生活保護
介護保険:申請中
診断名
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膵頭部がん(BSC方針)
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十二指腸潰瘍
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膵がん浸潤による十二指腸閉塞
導入の背景
白色便、肝機能障害、黄疸を主訴に消化器内科を受診し、精査で膵頭部がんによる閉塞性黄疸が疑われた。胆管ステントを留置し、治療方針について本人・妻と協議の結果、手術・化学療法は行わずBSC方針を選択した。
その後、嘔吐および食欲不振が出現し、十二指腸閉塞疑いで救急搬送。胃十二指腸ステント留置後に一時的に経口摂取が可能となり退院したが、在宅復帰後に全身状態が悪化し症状コントロール目的で再入院となった。
退院後は通院が困難であり、自宅療養を希望されたため訪問診療導入となった。
介入内容と経過
在宅緩和ケアを中心とした診療方針とし、疼痛・倦怠感・食思不振への対応を継続した。
訪問診療により全身状態の定期評価を行い、必要に応じて点滴による支持療法を実施した。
妻を主介護者として家族支援を行いながら、在宅での療養継続を支えた。
医療対応の詳細
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オピオイドによる疼痛コントロール
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点滴による水分・栄養補助
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消化管ステント留置後の状態観察
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倦怠感・食欲低下への緩和的対応
支援のポイント
・通院が困難な終末期がん患者に対して、早期から訪問診療を導入することが在宅生活維持につながった。
・主介護者が妻単独であるため、身体的・心理的負担の把握と声かけを継続した。
・症状変化時に迅速対応できる体制を整え、家族の不安軽減を図った。
考察
進行がんによる消化管閉塞を伴う症例では、根治的治療ではなく緩和ケアを選択することで、生活の場を病院から自宅へ移行できる。
通院困難例では、医療処置の調整だけでなく、家族の介護負担と意思決定を支える関わりが在宅療養継続の鍵となる。
付記情報
・診療科:緩和ケア科
・病態・症状:がん
・世帯構成:夫婦のみ