コラム2020/01/08
有料老人ホームやサ高住はさらなる透明性が重要
有料老人ホームやサ高住はさらなる透明性が重要
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などが急速に増加してきたことを背景に、サービスの質の担保を目的として、厚生労働省は来年度から「外部の目」を入れる取り組みの強化に乗り出すことを決定しました。今回はその具体的な内容についてご紹介させて頂きます。
介護相談員と入居者数の現状
2017年のデータによると、介護相談員の人数は全国で約4300人。実際に派遣している市町村は25%ほどとなっています。また、昨年度の全国の入居者数は有料老人ホームが51万4017人、サ高住が23万4971人。合計すると、特養の61万人よりも多くなります。入居者の重度化も進んでおり、厚生労働省は行政の関与を強めていく方向で、検討を進めてきました。
橋渡しを担うのは「介護相談員」
取り組み強化の具体的な内容は「介護相談員」を現場に派遣し、利用者の声を実際に聞く事を可能とするために制度を改める事です。市町村が人材確保にあたって財政支援を受けられるよう、介護サービスの整備などに使える基金の使い道のルールも見直す方針です。既に来年度の予算案などにも反映されており、入居者が不当な扱いを受けることがないように有料老人ホームやサ高住などの透明性を高めることを狙いとしています。
介護相談員は何をする人?
そもそも介護相談員とは何をする人なのでしょうか。介護相談員の仕事は、まず利用者から苦情や不満等をよく聞いた後、単なる行き違いや情報不足によるものか、個人の好き嫌いによる要望なのか、介護の質に関わるものなのか、虐待・詐欺などにあたるのか、など事実確認を経てみきわめます。その上で、本人への助言や、事業者側と意見交換を兼ねて問題のありかを提示し、サービスの質の改善につながる提案ををします。また、行政の関与が必要な場合は、市町村の事務局を通じて適切な対応策を取ります。介護相談員はサービス利用者・サービス提供者・行政機関の橋渡し役なのです。また、声なき声を聞くのも大切な仕事となっており、たとえ相談を受けなくても、利用者との何気ない会話や行事に参加する事などを通じて、問題や改善点などを発見したら、必要に応じて施設・事業者に伝えるのも、介護相談員の役目です。
介護相談員とは、市町村が「事業の実施にふさわしい人格と熱意をもっていると認めた人で、一定水準以上の養成研修を受けた人」と定められています。養成研修は、介護保険制度の仕組み等高齢者福祉に関する事項から、高齢者の身心の特性、コミュニケーション技法まで、40時間に及ぶ内容です。また既に活動している介護相談員を対象とする現認研修では、最新の介護保険制度の情報や認知症の人への対応法など、相談活動の現場に即した技術の習得、スキルアップを目指しています。
今後の改善点
介護相談員が担うのは橋渡し役。入居者と事業者の間に入りコミュニケーションをとって問題の解消を図り、必要に応じて行政への通報や情報提供なども行います。現行の制度では、特養や老健、グループホームなど、介護保険のスキームで運営されている施設・事業所に介護相談員を派遣できます。また、事業所側は運営基準などで介護相談員の努めに協力する努力義務が課されている為、介入を拒否することは困難となっています。一方で、現行の制度では、有料老人ホームやサ高住などは、派遣先として十分に想定されておらず、努力義務の規定もありません。厚労省はこうした状態を改善したいと考え、来年度に向けて改正を準備しています。また、厚労省は同時並行で、介護相談員の人材確保を行う為、研修費の補助など、基金のリソースを割けるようにする計画をしています。
まとめ
急増する有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅。多くの高齢者が利用できるようになることはこれからの超高齢化社会に向けて必要な事ではありますが、数が増えれば、質の低下が懸念されるのは介護業界に限ったことではありません。これから私たち介護医療の従事者は「より多くの人にサービスの提供をする事」と「質の良いサービスの提供」を同時に高い水準でこなしていくことが求められます。