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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

高齢者の骨折とその対応

コラム2024/01/23

高齢者の骨折とその対応

骨折が高齢者によく見られる理由

高齢者には脊椎圧迫骨折、ぎょう骨逆位端骨折、大腿骨近位部骨折、上腕骨近位端骨折などが多く見られます。特に大腿骨近位部骨折は、日常生活や生命予後に重大な影響を与える骨折であり、患者が寝たきりになりやすい特徴があります。初発の骨折がドミノ効果を引き起こし、第二・第三の骨折が続くことがよく知られています。大腿骨近位部骨折を発症する前に脊椎圧迫骨折を経験する人の割合は80%であり、脊椎圧迫骨折を経験した人の45%が大腿骨近位部骨折を発症しています。このリスクは脊椎圧迫骨折のない人の3〜5倍であり、片方の大腿骨近位部骨折を経験した人が反対側の大腿骨近位部骨折を引き起こすリスクは通常の人の4倍とされています。

 初発骨折後のアプローチ

大腿骨近位部骨折を大幅に減少させるためには、初発骨折後の適切な骨粗鬆症治療が重要です。ビスホスホネート製剤の使用は反対側の大腿骨近位部骨折を約70%抑制できることが示されています。初発骨折後のリハビリテーションと運動療法も非常に重要です。

大腿骨近位部骨折

大腿骨近位部骨折は特に生活や生命予後に重大な影響を与える骨折です。この骨折により、高齢者での1年以内の死亡率の増加(10〜20%)、歩行機能の低下(介護や杖・車椅子の必要性)、QOLの低下(外出が制限され社会的なつながりが希薄になる)が見られます。

 診断

在宅医療では、大腿骨の骨折の有無を確認する必要があるケースがよくあります。X線撮影が必要かどうか、また病院への緊急紹介が必要かどうかを判断するためには、往診時に検討する必要があります。患者は立位が困難になり、患肢は外旋し短縮して自発的な動きができなくなることが一般的です。腫れや皮下出血は少ないこともあります。患者が他動的に患肢を動かし、特に内外旋で股関節の痛みがあるかどうかを確認する必要があります。転倒後数日は痛みを訴えながらも歩行可能な場合もありますが、転倒の有無を確認する際には認知症の患者に注意が必要です。股関節周囲の痛みがあれば大腿骨近位部骨折を疑いますが、痛みの部位がはっきりしない場合は慎重な判断が必要です。

 治療

治療は可能ならば手術が選択され、実際には9割以上のケースで手術が行われています。手術後のリハビリテーションは歩行能力に大きな影響を与えるため、非常に重要です。また、骨折の再発を防ぐためにも骨粗鬆症の治療が必要です。

腰痛と脊椎圧迫骨折

 診断

高齢者の腰痛において、椎体の圧迫骨折が原因かどうかを判別することは困難です。無症候性の椎体骨折が3分の2を占め、患者が骨折に気づかないことがよくあります。受傷直後にはX線検査でも診断が難しいことがありますが、しばらく経過すると圧潰し変形して診断がつくことがあります。新しい骨折による痛みの症状は体動時の痛み、椎体骨折レベルでの圧痛と叩打痛です。背部の叩打痛がある場合、新しい圧迫骨折を疑うべきです。腰痛診察では、背部の叩打痛の有無を確認することが非常に重要です。

 治療

新しい骨折に対する初期治療は局所の安静、体幹ギプスやコルセットの着用、銀杏薬の投与です。通常の脊椎圧迫骨折では神経損傷はないことが一般的ですが、強い外力がかかった場合には神経損傷を伴うことがあります。下肢の麻痺がないかどうかを確認し、そのような症状があれば専門医に紹介する必要があります。圧迫骨折が安定した段階では椎体が圧潰し変形し、変形性脊椎症に進展します。治療の主体は骨折の痛みよりもその後の慢性腰痛への対処となりますが、新しい骨折かどうかを判別せずに過度な安静にすることは避けるべきです。