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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

食事介助と嚥下障害 段階別理解と実践的な対策

コラム2023/12/28

食事介助と嚥下障害 段階別理解と実践的な対策

「食べること」は、生命を維持するための栄養の側面だけでなく、生きる活力にも関連しています。同時に、食事時の団らんや食べる楽しみなどの社会的な活動も重要です。障害が進み、言葉を発することができなくなっても、食事の好みや食べ方を通して本人らしさが表現されます。従って、その人らしさを最後まで保つ手段の一つともいえます。この節では、摂食・嚥下障害においてどの段階で障害が生じ、それに対する対策として何をすればよいかを理解し、在宅の状況で具体的かつ実践的なアドバイスができるよう目指します。

高齢者は嚥下状態が悪化している可能性が高い

摂食・嚥下に問題があり、対策が必要な対象者をどのように見つけるか。高齢者は特に嚥下

状態が悪化している可能性があります。

また、脳血管障害や神経難病などの特定の状態がある人も摂食・嚥下の問題を抱えている可能性が高いです。疾患自体からくる症状もありますが、普段の食事の様子で気づくことが重要です。

摂食・嚥下に問題がある人に生じやすい症状

  • 食事中に咳き込んだり、むせたり、「ぜーぜー」という呼吸音が聞かれる
  • 食後、口の中に食べ物が残っている
  • 食後、ガラガラ声(痰が絡んだような声)になる
  • 食事中に苦しそうな表情をする。食事に時間がかかる
  • 特に原因がなく熱が出る

家族や介助者にこれらの症状を伝え、気づいたら連絡してもらうようにすることが良いでしょう。

誰がどのように対策を進めていくのか

では、その連絡は誰がどのように受け、その後は誰がどのように対策を講じるのが適当でしょうか。また、情報共有はどうすべきでしょうか。この摂食・嚥下障害の対策には携わる職種が多く、主導権をどの職種が握り、どのように対策を進めるかは個々の状況に依存します。さらに、地域によって在宅で活動できる職種にも違いがあるため、対策の方法に関しては地域や関係者のチームで事前に検討しておくべきです。

嚥下5期モデルの各段階が障害されうる病態とその対策

摂食・嚥下は、食物を認識し、箸などを使って口に運び、嚥下反射が起こり食道に送り込まれる過程を指します。この一連の流れを5つの段階に分けて考えることで、対策がしやすくなります。

1.先行期(認知、補食期)

先行期は食物を認識し、口に選ぶ段階です。視力低下や麻痺による動作障害がある場合、口まで食物を選ぶことが難しいことがあります。対策としては、自助具や食事介助、食事時の姿勢の見直しなどが考えられます。認知症の場合は、匂いを活かしたアプローチや数口食事介助を通して食事の認知を促す方法が有効です。

2.準備期

準備期は口の中に取り込んだ食物を明瞭にし、飲み込みやすい形に整える段階です。口内炎や歯の問題がある場合、食物の摂取が困難になります。対策としては、口腔内の状態を評価し、歯科治療や口腔ケアを優先する必要があります。

3.口腔期

口腔期は食物を口腔内から明頭へ移送する段階です。口腔内に問題があると、食物の処理が難しくなります。対策としては、食材の変更や特定の姿勢で食事介助をすることが考えられます。

4.咽頭期

咽頭期は吸頭から食道への移送段階で、誤嚥のリスクが高まります。脳血管障害や認知症の進行によって吸頭機能が低下することがあります。食物の形態調整や食事時の姿勢の工夫が対策として考えられます。

5.食道期

食道期は食物が胃まで移送される段階で、食道の機能障害が逆流を引き起こす可能性があります。対策としては、食後の体位の維持や食材の変更が挙げられます。

食べにくい食事・食べやすい食事

凝集性、付着性、硬さ、均一性、粘度といった食事の特性について考察し、それに合わせた調理法や食事介助のアプローチが必要です。たとえば、歯が弱い場合は噛み砕きやすい食材を選び、付着性の高い食材は避けるなどの工夫が求められます。