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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

“ウトウト”に要注意~傾眠傾向の原因と対策~

コラム2019/09/13

“ウトウト”に要注意~傾眠傾向の原因と対策~

“ウトウト”に要注意~傾眠傾向の原因と対策~

「最近、あの人ずっとうとうとしてるな。寝不足なのかな?」そんな高齢者の方は周りにいらっしゃいませんか?実はそれ「傾眠傾向」かもしれません。今回は高齢者の病気の兆候である場合もある「傾眠傾向」についてお話をさせていただきます。

「傾眠傾向」とは

傾眠傾向とは、声かけや肩をポンと叩くといった弱い刺激で意識を取り戻す程度の軽度の意識障害の一種です。一見、睡眠不足の人が日中眠気に襲われ、うとうとしているのと同じようにも見えますが、ただの居眠りとは異なります。傾眠傾向の症状は高齢者によく見られ、病気の兆候である場合もあります。意識障害には意識清明・傾眠・混迷・昏睡の4段階があり、傾眠傾向は2番目に位置付けられている意識障害です。傾眠自体は単にうたた寝しているように見えることから、そのまま放置してしまいがちですが、食事をとらないで脱水症状や栄養不足に陥ったり、運動不足が筋力低下を引き起こしたりするおそれがあり、実際はとても危険な症状です。居眠りは若いい人でもありますが、これが「明らかに多い」「ある時を境に急速に増えた」という場合は、傾眠傾向の可能性があります

傾眠傾向6つの原因

では、傾眠傾向の原因にはどのようなものがあるのでしょうか。高齢者の傾眠傾向の原因はいくつかありますが、その中でも代表的なものを6つご紹介致します。

◆認知症

認知症の症状の一つに「無気力傾向が強くなること」があります。この無気力が原因で、起きている時間に脳の興奮作用が起きにくくなり、傾眠傾向が強くなります。

◆脱水症状

高齢者は体内に水分を貯めておく機能が弱くなっています。そのため、脱水症状が若い世代より起きやすくなります。脱水症状になると脳や全身の機能が低下、傾眠傾向に繋がります。

◆内科的疾患

臓器などに何らかの問題が起きている時も、傾眠傾向がおきやすいものです。たとえば、発熱のような基本的な症状から、代謝異常のような重度の症状まで、いずれも傾眠傾向の原因となります。特に風邪のような軽度の症状の場合、体が治療のために睡眠を求めている可能性もあります。こうしたケースでは傾眠傾向を阻害するより、本格的に睡眠を取る方がよいこともあります。内科的疾患が原因の場合、疾患が治れば傾眠傾向も止まります。

◆薬の副作用

風邪薬や痛み止めを飲むと眠くなるというのは皆様も経験があるのではないでしょうか。これと同じように高齢者の場合も薬の副作用によって傾眠傾向が出ることがあります。

◆慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫とは頭を打ったことが原因で硬膜と脳の間に血が溜まるという状態が慢性的に続く病気です。頭を打った直後は何もなくても、1~2カ月程度経過してから症状が出ることも多く、注意が必要です。血腫が小さい場合には自然治療の可能性もありますが、一定以上の大きさであれば、外科手術などの治療が必要となります。

◆加齢

高齢になれば多少の傾眠傾向は自然に起こることがあります。急激に傾眠傾向が出てきたというわけではなく、その他の部分の健康で問題がないのであれば、加齢が原因という可能性もあるでしょう

傾眠傾向への4つの対策と対処法

傾眠傾向は先述の通り、栄養不足や脱水症状、深刻な病気のサインなど、大きなリスクをはらんでいます。正しい対策と対処法を知り、適切に対応しましょう。

◆医師・医療機関に相談する

真っ先にすべきことは、医師や医療機関に相談する事です。慢性硬膜下血腫のように早期発見、早期治療が必要なものもあります。たとえ病気が原因ではなかったとしても、脱水症状や栄養不足が別の病気を招く可能性もあります。ひょっとしたら、服用中の薬の量を調整することで改善がみられるかもしれません。まずは医師の判断を求めましょう。

◆長期的に支える

手術で治るものや、脱水症状のような一時的な原因でなければ、傾眠傾向が改善されるまでには時間が必要です。長期的に症状の改善を見守り、高齢者を支えるようにしましょう。

◆小まめな水分補給を意識する

適切かつ小まめに水分を摂取することは、熱中症の予防にも繋がります。特に、午前中の早い時間に意識して水分を摂取すると、日中の覚醒度合いが高まりやすくなります。

◆話しかける・外に連れ出す

外部からの弱い刺激でも気が付くようであれば、積極的に話しかけ、会話の機会を増やして眠る隙を与えないようにすることが効果的です。また外に連れ出して散歩をするのも良いでしょう。日中活発に動き回ることで夜はぐっすり眠れるようになります。

今回は傾眠傾向の原因と対策についてお話をさせて頂きました。傾眠傾向は陥っている本人は対応できないことも多く放っておくと重症化する可能性もある為、「うとうとしているだけだから」「大した事ないだろう」と考えるのではなく医療と連携しながら適切に対応をしていくことが必要です。