コラム2023/06/07
この時期は溶連菌感染症にご注意ください
溶連菌は、例年4月から患者数が増加傾向となり、6月頃にピークを迎えることが多い感染症です。
溶連菌は小児にかかる印象が強いかと思いますが、大人にも感染します。
今回は、溶連菌感染症についてお話させていただきます。
現在、福岡県内で感染拡大中
福岡県内の『溶連菌』の感染者は5月上旬から増え始め、5月22日から28日までの1週間では、1医療機関あたり4.41人と、前の週の約1.3倍に増加しました。
小郡市やうきは市など筑後地方北部で1医療機関あたり15.80人、福岡市東区で13.20人など、警報レベルとなっています。
溶連菌感染症ってどんな病気?
溶連菌とは、正式には溶血性連鎖球菌と呼ばれる細菌で、α溶血とβ溶血を呈する2種類があり、後者でヒトに病原性を有するものは、A群、B群、C群、G群などです。
溶連菌感染症の90%以上がA群によるものです。
そのため、一般にはA群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)による感染症を溶連菌感染症として理解されているといってもよいです。
主に“のど”に感染して、咽頭炎や扁桃炎、それに小さく紅い発疹を伴う場合があります。
劇症型溶連菌感染症(人食いバクテリア)
溶連菌の中に劇症型というものがあり、日本では1992年にはじめて報告され、現在までに100人以上の患者が確認され、約30%が死亡するという重い病気です。
この疾患は元気な人に突然発症し、急激に進行します。数十時間で足などが腐り、腎不全、ショック状態になります。
30-70歳代の大人に多いのですが、小児でもみられます。
滅多にない病気ではありますが、今程医療が進んだ世の中でも健康な人が感染症で死ぬという怖い病気があるものですので気にとどめておくのが良いです。
溶連菌感染症の症状は?
症状の代表的なものは、発熱(38〜39℃)と“のど”の痛みです。
しかし、3歳未満ではあまり熱があがらないと言われています。
そして、体や手足に小さくて紅い発疹が出たり、舌にイチゴのようなツブツブができたりします(イチゴ舌)。
そのほかに頭痛、首すじのリンパ節の腫れ、腹痛や嘔吐などの腹部症状もみられます。
急性期を過ぎますと、発疹のあとには落屑(皮むけ)が認められるようになります。
風邪と違って咳や鼻水が出ないというのもこの病気の特徴です。この病気には潜伏期間があり、実際に感染してからだいたい2〜5日で症状がでます。
検査とお薬
まず、年齢、熱の程度、“のど”の発赤の具合、体や手足の発疹の程度から溶連菌に感染している疑いがあれば、確認のために検査を行います。
最近は、“のど”についた細菌の検査の中で、溶連菌については、5〜10分以内に結果が出るので、すぐに溶連菌かどうかわかります。
この検査については、簡易検査キットがあり、インフルエンザの簡易ワクチンのようなものなので市販購入可能となっています。
医療機関においても診察日当日に検査が可能です。
約15分程度で検査結果の確認が可能です。
この検査が必要なのは、後でお話するお薬の服用期間と大きく関係してきます。
溶連菌の感染とわかれば、熱やのどの痛みといった症状をやわらげるお薬のほかに、抗菌薬が出されます。
抗菌薬は病気の原因になっている溶連菌を退治する大変重要なお薬です。
溶連菌は人にうつるの?会社や学校に行ってもいいの?
感染力の強い病気ですから、他の人に感染する可能性があります。
基本的には抗生物質を飲み始めてから24時間経過すれば感染力はなくなると言われており、症状も2~3日で治まります。
熱が下がり、他の症状もなければ出社することは可能ですが、職場や学校で規定がある場合は規定に従ってください。
まとめ
溶連菌感染症は、風邪と症状が似ているため、発見が遅れることも少なくありませんが、正しく治療が行われないと重症化や合併症のリスクが高まります。
疑わしい症状がある場合は、早めに病院を受診しましょう。