コラム2019/09/06
ダブルケア~キーワードは情報収集~
ダブルケア~キーワードは情報収集~
子育てと同時に親の介護を担うダブルケアに直面するケースが増えています。皆様はこのような事態に陥っているご利用者様、患者様に出会ったことはございますか?先日、相談員の大塚さんはケアマネさんからこのダブルケアのお話を聞いたそうです。ご利用者様、患者様に限らず私たちも直面する可能性のある「ダブルケア問題」。今回はこれから更に増えていくだろう「ダブルケア」について考えていきたいと思います。
ダブルケアの実態
ダブルケアに悩む方は全国にどれくらいいるのでしょうか。2016年4月に発表した内閣府の調査によると、ダブルケアをする人は全国で少なくとも25万3000人(女性16万8000人、男性 8万5000人)にのぼることがわかりました。この調査における「育児の対象」は未就学児であり、小学校まで含めれば更に人数が多いことが予測されます。年齢別では、40~44歳が27.1%で最も多く、次いで35~39歳が25.8%、30~34歳が16.4%と、30~40代が80%を占めています。
ダブルケアの背景
ダブルケアの背景としては、女性の社会進出などによる晩婚化と出産年齢の高齢化が挙げられます。その結果、同時期に介護と育児の両面に直面するというダブルケアの問題が生じてきます。また、少子化により兄弟姉妹も少なく、親戚との関係も薄れている状況から、介護の分担ができず一人で抱え込むケースも増えてきます。団塊の世代全員が75歳以上になる2025年以降には、団塊ジュニアと呼ばれる世代がダブルケアに直面し、ダブルケア経験者のボリュームは更に大きくなると言われています。
ダブルケアの問題点
ではダブルケアの問題点としてどのようなことが考えられるのでしょうか。
◆女性への負担が大きい
「育児と介護は女性がやるもの」という価値観のもと、女性が問題を抱えがちになる
◆一人にかかる負担の重さ
兄弟姉妹や親せきの助けを得られず、育児・介護という負担が一人に集中する傾向にある
◆孤立化
ダブルケアの経験者や相談機関がそれほど多くなく、悩みを共有できる人が少ないため孤立しがちになる
◆離職
負担が重く仕事と両立が困難になり、離職してしまう。世帯収入も減少し家計にも影響する
◆育児への影響、介護への影響
仕事との両立を図るために、施設入居など介護に費用がかかったり、育児への時間が削られ子供への影響が懸念される
ダブルケアと仕事の両立
育児・介護と仕事の両立が問われ続けてきたが、ダブルケア視点からワーク・ライフ・バランスを見直すと、三段階が考えられます。第一段階が「子育て・仕事の両立問題」、第二段階が「介護・仕事の両立問題」、多くの企業が第二段階までで、社員の支援策を導入・拡充しているのが現状であるが、これからはさらにもう一歩前進し、第三段階「子育て・介護・仕事のダブルケア問題」の視点からワーク・ライフ・バランスを考えていく必要があるとされています。
ダブルケアへの支援
現在、ダブルケアの支援にはどのようなものがあるのでしょうか
◆ダブルケアサポート横浜
ダブルケアラーやそれを取り巻く人、地域サポートを目的として設立された民意団体。ダブルケアの実態と地域における支援ニーズを明らかにするための調査や、ダブルケアラーに寄り添い支えるサポーターを増やすための「ダブルケアサポーター養成講座」のプログラム企画、立案。ダブルケアに役立つ情報がつまったハンドブック「ダブルケアハッピーケアノート」の制作などに取り組んでいます。
◆経済的負担の軽減
ダブルケアの三大負担は精神・肉体・経済という調査結果が出ています。先述の5つの問題点に置き換えてもやはりこの三大負担が問題になっていますね。経済的負担に関し、ソニー生命保険株式会社がライフプランニングを通じて、この先の人生においてダブルケアが起こりうる可能性や、直面する前の対策・備えを促進するための活動を行っています。
◆悩みの共有
ダブルケア当事者が育児や介護の体験談や悩みを共有できる「ダブルケアカフェ」を開催する地域も増えてきています。ダブルケアへの対策として、直面する前の事前準備をしておくことが非常に大切です。その為にはダブルケアを身近な問題としてとらえて頂く必要がありますが、現時点ではダブルケアの認知度も低く、全国な取り組み事例は多くありません。国や自治体の積極的な取り組みに期待したいですね。
今回はダブルケアについてお話をさせて頂きました。まだまだ相談窓口や取り組みも少なく、サービスや支援が充実しているとは言えません。だからこそ、今後の最新情報に常にアンテナを張り、発信共有をしていく事がサポートをしていく上でもっとも重要になってくるでしょう。