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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

秋に気を付けるのは食中毒!?

コラム2019/09/05

秋に気を付けるのは食中毒!?

秋に気を付けるのは食中毒!?

最近、夜は涼しくなり、ようやく夏も終わりそうですね。暑い夏が終わることで、少しずつ気温が下がってきています。季節の変わり目には体調を崩される方も多いのではないでしょうか。特に体力、免疫力が低下している高齢者の方は体調の変化が起きやすい時期です。今回はその中でも食中毒についてお話いたします。

秋にかかりやすい病気って?

秋にかかりやすいと言われるのは大きく4つだそうです。

1.食中毒
気温や湿度が高い夏に食中毒は多くなると思われがちです。しかし、意外にも、食中毒が最も多く発生しているのは9~10月にかけての時期です。秋は、行楽や運動会、お祭りなどの行事が多く野外で調理をしたり、野外で食事をする機会が多いことが食中毒の原因と言われています。

2.風邪や花粉症
夏バテなどで体力や免疫力が低下しているまま『秋』を迎えてしまい、夏の生活スタイルを続けることで、風邪や花粉症にかかる方が多いと言われています。

3.喘息
秋は気温が低下するのに加えて湿度も低下します。空気の対流が上手く行われず汚れた空気が地表付近に停滞しやすくいため、喘息の症状が出やすくなると言われています。

4. うつ
秋になると日照時間が短くなり、太陽の光を浴びることが少なくなります。人の体は太陽の光を浴びると『セロトニン』という、気持ちを明るくしたり、やる気を出すためのホルモンを生成します。太陽の光を浴びることが少なくなり、セロトニンが減少し、うつになりやすくなります。

食中毒になる原因は?

夏バテが抜けずに免疫力が低下
理由のひとつに、この時期の免疫力低下が挙げられます。近年、酷暑が続いている影響などで、9月に入っても夏バテを引きずり、体力が低下している人は少なくありません。さらに秋に入ると気温は低下し、その温度差に体がうまく適応できず、体調を崩しやすくなります。このことが、秋に食中毒が発生しやすくなる下地となっていると考えられます。

野外調理での加熱不足も原因に
行楽シーズンである秋は、野外での食事の機会が多くなります。例えば、キャンプやバーベキュー、ピクニック、運動会などです。特に野外での調理の際、加熱が足りない場合は食中毒の原因菌を十分に殺菌できず、発症のリスクが高まります。また、気温や湿度が高い状態が続くと、弁当の中で雑菌が繁殖し、食中毒を起こす原因になります。

食中毒の原因菌って何があるの?

原因になりうるものは次のようなものがあります。症状としては、いずれも下痢や嘔吐、吐き気、腹痛、発熱などを伴います。

カンピロバクター菌
カンピロバクター菌は牛や豚、鶏など多くの動物が保有しています。中でも多いのが鶏肉です。鶏肉を調理する際は、十分に加熱してください。潜伏期間は2~5日です。

腸管出血性大腸菌
O-157などの腸管出血性大腸菌によって発症する食中毒です。大腸菌は家畜や人の腸内にも存在し、ほとんどが無毒ですが、そのうち出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群を起こすものを腸管出血性大腸菌と呼びます。生や加熱が不完全な状態の食肉が主な原因になります。潜伏期間は2~8日程度です。

サルモネラ菌
夏から秋にかけて多く、食肉や生卵が主な原因です。加熱が十分でない場合、発症しやすくなります。犬や猫などのペットから感染することもあるため、ペットに触れた後は忘れずに手を洗いましょう。潜伏期間は半日から3日程度です。

腸炎ビブリオ菌
生魚や貝など、主に魚介類が原因です。また、生の魚介類を調理した後、調理器具や手指などを介して汚染された食品でも食中毒が発生します。真水や熱には弱い性質があり、潜伏期間は短く、6~12時間程度です。

ウェルシュ菌
無酸素状態でも増殖します。煮込み料理が原因となるケースが多く見られ、カレー、シチュー、スープなどを大量に調理する給食施設などで発生することもあります。時間をおいてから食べる場合は鍋のまま常温で放置せず、速やかに冷蔵庫に入れましょう。潜伏期間は短く、6~18時間程度です。

自然毒
秋は旬を迎えるキノコやふぐにも注意です。食中毒を起こすキノコは、ツキヨタケ、クサウラベニタケ、テングタケなどです。キノコ狩りで採取したキノコも、安全だと鑑定されたもの以外は食べないようにしましょう。また、ふぐによる食中毒は致死率が高く、素人判断での調理は禁物です。

子供の食中毒は重症化しやすい?

子供は免疫機能や消化能力が十分ではないため、食中毒菌に対抗する力が弱く、大人では問題にならない場合でも重症化することがあります。子供は少量の菌でも食中毒を発症しやすく、特に脱水症は命取りになりかねません。子供の体は水分が占める割合が高く、下痢や嘔吐がひどい場合は、体から水分がどんどん失われていきます。内臓の働きが低下し、意識が朦朧となり、命に関わる危険性も出てきます。治療法やできるセルフケアについては、以下のような対応が挙げられます。

症状が重ければ、即受診
嘔吐がひどくて水も飲めないなど、症状が重い場合は早めの受診が必要です。症状が軽い場合は、市販の整腸剤を服用して様子を見ます。下痢止めは食中毒菌を体内に閉じ込めてしまうため、安易な服用は避けるべきです。症状が改善されなかったり、悪化したりした場合は、医療機関を受診してください。

子供の食中毒は脱水に注意
子供の食中毒は重症化しやすく、特に脱水に気をつける必要があります。下痢や嘔吐など、食中毒の症状が見られたら、湯冷ましなどを30分~1時間おきに与えるなどして脱水を防ぎ、早めに医療機関で診てもらってください。また、O-157などの感染力が強い食中毒菌は、おもちゃやタオル、よだれかけなどを介して子供にうつることがあります。子供が手にしたり、身につけたりするものは、清潔に保つようにしましょう。

食中毒を防ぐ3原則

食中毒を防ぐには「つけない」「増やさない」「やっつける」の3つが原則です。

つけない(洗う、密閉する)
手にはさまざまな雑菌が付着しています。調理や食事の前、残った食品を扱う前には十分に手を洗います。まな板などの調理道具も、しっかり洗浄してください。残った生肉の保管は密閉容器かラップを使用し、菌が他の食品につかないようにしましょう。

増やさない(低温で保存する)
細菌の多くは高温多湿になると増殖が活発化します。しかし、10℃以下になると増殖のスピードは鈍り、マイナス15℃以下では増殖が停止します。食べ物に付着した菌を増やさないためには、冷蔵庫を活用して、低温で保存することが重要です。

やっつける(加熱処理する)
ほとんどの食中毒菌は加熱によって死滅します。肉や魚、野菜なども加熱すれば安全です。特に肉料理は中心部までよく加熱してください。中心部を75℃以上で1分間、加熱するのが目安です。また、包丁やまな板などの調理道具も洗浄後に熱湯で殺菌することを心がけましょう。

まとめ

「食欲の秋」と呼ばれるように、多くの食材が旬を迎える秋は、サンマや鮭などの魚介類は海水の温度が下がって身が締まり、りんご・柿などの果物も豊富に収穫されます。また、秋・冬はあたたかい鍋物やおでんなどの煮込み料理に、ぴったりの野菜が旬を迎えます。食中毒にならないように気を付け、採れたての旬の食材を楽しみ、食欲の秋を満喫しましょう!