コラム2023/03/06
多系統萎縮症について
現在、様々な神経難病と分類される疾患が存在していますが、同じ神経難病ではあるものの当然ではありますが疾患ごとにその特徴は異なります。
本日は神経難病の中でも「多系統萎縮症」にフォーカスをあててお話をしたいと思います。
多系統萎縮症の軌道
神経難病はその疾患によって、辿る軌跡が全く異なります。
大きく分けると、急激に症状が悪化するが、自然または治療により寛解する経過を繰り返す増悪(再発)寛解型と良くなるフェーズがなく、徐々に進行していく慢性進行型があります。慢性進行型はさらに、進行のスピードにより数年で致命的になるような比較的早く進行するタイプと、緩徐に進行するタイプに分けることができます。
多系統萎縮症は慢性進行型の中でも緩徐に進行するタイプにカテゴライズされます。同じカテゴリーの疾患としては、パーキンソン病、進行性核状性まひ、皮質基底核変性症、脊髄小脳変性症、筋ジストロフィー、アルツハイマー病などがあります。
多系統萎縮症を含めたこれらの疾患は、進行としては一貫した進行をみせますが、予後が10年以上のロングスパンで見込めることが特徴です。
最期は、感染症などの合併症で亡くなることが最も多く、転倒、骨折といったイベントがあるかないかで予後が大きく変わることも大きな特徴と言えます。
共通して言えることは、いかに日常生活の中にリハビリテーションを取り入れ、廃用症候群も含めて運動能力を落とさないようにするかが重要となってきます。
多系統萎縮症の特徴
発症は50代~60代が最も多く、パーキンソン症状が前面に出る綿条体黒質変性症(MSA-P)(約30%)と、小脳症状が中心のオリーブ小脳橋萎縮症(MSA-C)(約70%)に分かれます。
他に自律神経症状が主となるシャイ・ドレーガー症候群(SDS)(約16%)があります。欧米圏では、MSA-PとMSA-Cに分類し、SDSはMSA-Pに含める立場をとります。三者とも、進行するとそれぞれの症状を生じてくるので、進行期の病像が似てきます。しかし、予後を比較するとSDSが最も短くケアも異なるため、別で扱う必要がでてきます。
SDSを中心に早くから自律神経障害が強く生じる場合があり、血圧の変動が激しくなったり、呼吸パターンが異常になったりすることがあります。不整脈や声帯開大不全をきたすと突然死のリスクが増加します。進行期の多系統萎縮症ではしばしば起こることなので、患者や家族にもその可能性について言及し、希望があれば気管切開などの予防処置を講じる必要があります。
知的機能は比較的保たれますが、無動が強くなってくると意思疎通が極端に難しくなります。意識もあり、認知もできても、自分の意思を表出できないという状況になる可能性があります。調子のよい時間帯や、まだ表示できる部位や方法を何とか探してコミュニケーションを図る努力が必要となります。
まとめ
最近、在宅でも神経難病の方に出会う機会が本当に多くなってきたなと実感しております。
どのような軌道をとる疾患なのか、使える制度や条件など、正しい知識を身に着けて、少しでも患者さんのQOL向上のお手伝いができると良いですね。