コラム2023/02/03
日本における糖尿病とインスリン
インスリンといえば糖尿病と連想される方が多いかと思います。
そんな糖尿病は一時期、「金持病」と呼ばれ、治療を受けられない人が多くいたことはご存知でしょうか。
今回は、日本におけるインスリンの歴史をご紹介します。
インスリンとは
インスリンは血糖を下げる働きのあるホルモンです。
インスリンの作用が不足した状態になっているときに、インスリン注射で外部からインスリンを補うことによって血糖を下げます。
糖尿病とは
血糖値が高い状態が続く病気です。
肥満、食べすぎや飲みすぎ、運動不足等によりインスリンの分泌や働きに障害が起こると糖尿病を発症します。
高血糖が続くと、全身の血管が痛めつけられ、さまざまな合併症を引き起こします。
インスリンの歴史
1921年、カナダの整形外科医であるフレデリック・バンティング(ウィリアム・バンティング〈William Banting〉の遠縁の親戚)と、医学生のチャールズ・ハーバート・ベストの2人が、ジョン・ジェイムズ・リッカード・マクラウド(John James Rickard Macleod)の研究室で働いていたとき、インスリンを共同で発見しました。
1922年には1型糖尿病患者に世界で初めてインスリンの投与が行われ著効しています。
日本での歴史
1924年3月、現代之医学社から平川公行著『糖尿病のインスリン療法』という治療マニュアルが発売され、アメリカからの輸入が始まっています。
当時の価格は50単位4円50銭、100単位8円と極めて高価であり、絶対適用の患者の場合は薬代だけで当時の平均賃金の3倍近くも必要になりました。
このため「世界一の高貴薬」と呼ばれ、糖尿病は「金持病」と揶揄されたのです。
国産化に成功したが…
1935年に帝国社臓器薬研究所(帝国臓器製薬→現あすか製薬株式会社)から国産初のインスリン製剤が発売されますが、ウシやブタの膵臓から抽出精製した物だったので非常に高価で生産量も少なく、輸入品と比べても安くは無かったため国産化は進みませんでした。
外交関係の悪化でインスリン不足に
1938年に外交関係の悪化によりインスリンを初め医薬品の輸入が完全に停止し、日本国内は深刻なインスリン不足に陥りました。
魚からインスリンの抽出に成功!
1941年5月14日に魚のハラワタを原料とした魚インスリンを生産するために清水製薬(現EAファーマ)が設立され、同6年7月に出荷を開始しています。
第二次世界大戦中にもかかわらず国産インスリンの生産量は増え続け、国内需要を国産のみで満たせるようになると同時に十分の一以下にまで値下げされ、戦時中に値下げされた唯一の医薬品となっています。
清水製薬五十年史より
まとめ
いかがでしたでしょうか。ヒト・インスリンの登場まで日本は西洋とは異なる独自の魚インスリンの製造販売を続けて今に至ります。