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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

褥瘡について

コラム2023/02/02

褥瘡について

褥瘡の原因

皮膚に生じる赤み(発赤)は様々な原因で生じますが、寝たきりの人の場合、まずは床ずれ(褥瘡)を念頭に置かなければなりません。

褥瘡とは身体と支持面(ベッドや床)との接触部分で、圧迫、ずれなどの機械的刺激により、皮膚や皮下組織の血の巡りが悪くなり、細胞や組織が壊死した状態をいいます。

最初のうちは皮膚の赤みだけなので、褥瘡だと認識されずに見過ごされることが多いのですが、このままにしておくと、あっという間に重度の褥瘡になってしまうことも珍しくありません。

褥瘡ができやすいのは自分の体重によって強く圧迫される身体の突出部分。

この場所に赤みが出てきたら要注意です。

早めに医師や看護師に相談してください。赤みが持続する、という段階であれば、ちょっとした対応で進行を食い止めることができます。

ただの赤みなのか、初期の褥瘡か

健常な人でも同じ部位を長時間持続して圧迫していると、その場所が赤くなることがよくあります。

そして、そのまま圧迫を続けると痛みが生じ、圧迫が解除されるよう、無意識に身体を動かします。

ですから、褥瘡になることはまずありません。

この段階の皮膚の赤みは、圧迫によって色が消え、圧迫を解除すると色が戻るという変化をします。

しかし初期の褥瘡で見られる皮膚の赤みは、圧迫を解除しても赤いままです。

もし、皮膚に赤みが出ていたら、透明な下敷きや定規などで赤い部分を圧迫してみてください。

圧迫して肌色に戻るものは褥瘡ではありませんが、圧迫しても赤みが消えないものは褥瘡と判定します。

褥瘡の危険因子

褥瘡の危険因子は、大きく2つにまとめられます。

1.皮膚、皮下組織の弱さ

皮膚の状態が悪いと、圧迫による損傷をより受けやすくなります。

・栄養状態が悪い

・皮膚が萎縮している

・むくんでいる(浮腫)

・ふやけている(浸軟)

2.外力の影響の受けやすさ

以下の条件があると、圧迫を受けやすく、また圧迫を回避しにくくなります。

・動作能力が低下している(寝返りが打てない、など)

・骨が突出している

・関節が拘縮している

高齢者の場合、老化や体力の低下が関係していることも多いため、これらの危険因子の全てを改善することは現実的には困難です。

これらの因子が多く当てはまる場合は、褥瘡ができやすい状態であると認識し、褥瘡予防

の対策をすることが大切です。

褥瘡は何よりも予防が重要(特に次の3つの点に留意)

1.栄養状態の改善

栄養状態が悪くなると、傷の治りが悪くなるばかりか、皮膚が弱くなったり、浮腫(むくみ)が出たり、褥瘡の危険因子がどんどん出てきます。

栄養管理は褥瘡予防のための最も重要なアプローチですが、口から食事が摂れる人、摂れない人、むせやすい人、原疾患による食事制限がある人など、適切な栄養管理の方法は人それぞれです。

主治医や管理栄養士と相談していく必要があります。

2.皮膚の処置

皮膚の状態が悪いと、褥瘡ができやすくなります。

皮膚はむくみ、ふやけ、乾燥などで損傷しやすい状態になります。

特におむつやパットをしている人は要注意。

皮膚は清潔と適度な潤いを保つことが大切です。

3.圧迫の解除

圧迫の解除には、「体位交換」と「体圧分散」の2つの方法があり、これを組み合わせて対応します。

体位交換

自力で寝返りが打てない場合は、第三者による「体位交換」が必要になります。

体位交換は2時間おきに行えば褥瘡が発生しにくいといわれています。

上向きで左右30度傾けるような姿勢をクッションなどで保持します。

真上や真横向きは、骨の突出部に荷重が強くかかるため、特に痩せている人にとっては好ましくありません。

皮膚のずれや寝具のしわも褥瘡の原因となりますので、体位交換の際には留意が必要です。

体圧分散

体圧分散とは、出っ張ったところに圧迫が集中しないよう、身体全体を均等にサポートすることです。

ご家族だけで体位変換を2時間おきに続けることはまず不可能ですが、体圧分散がきちんとできれば、ここまで頻回な体位交換は必要なくなります。

介護用に、体圧分散に優れた用具が提供されていますので、それを併用していくことをお勧めします。

実際にはエアマットがよく使われますが、水やウレタンなど各種素材を使ったマットもあります。

エアマットは圧力を調整できるようになっていますが、圧が高すぎると体圧分散効果が失われるので注意が必要です。

それぞれ利点、欠点がありますので、導入にあたっては医師や看護師、理学療法士にご相談されると良いと思います。

まとめ

皮膚の圧迫を避けることは当然として、栄養状態や服のシワ、おむつ交換の頻度や栄養状態によっても褥瘡の発生のしやすさが変わってきます。

総合的に環境を確認して、できるだけ床ずれを発生させず、予防することが重要です。