MENU

医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

「バイスティックの7原則」って知っていますか?

コラム2022/12/06

「バイスティックの7原則」って知っていますか?

ケアマネジャーさんやソーシャルワーカーさんの仕事は、相談援助職とか対人援助職といわれますが、対人援助職に携わる方の行動規範の一つに「バイスティックの7原則」というものがあります。

今回は、「バイスティックの7原則」をご紹介させていただきます。

バイスティックの7原則とは

1957年にアメリカの社会福祉学者、フェリックス・P・バイスティックが「ケースワークの原則」で記したケースワークの原則です。

相談援助機関の対人援助において、より良い関係を築くための行動規範としてまとめられたものです。

現在では介護職でも活用されており、介護福祉士の国家試験でも出題され、認識されています。

1.個別化の原則

クライエントの抱える困難や問題は、どれだけ似たようなものであっても、人それぞれの問題であり「同じ問題は存在しない」とする考え方です。

この原則において、クライエントのラベリング(人格や環境の決めつけ)やカテゴライズ(同様の問題をまとめて分類してしまい、同様の解決手法を執ろうとする事)は厳禁となります。

例えば、生活保護の人だから…とか、セクハラの多い人だとかの決めつけがあって、勝手に周りがニーズを作ってしまうとかですね。

2.意図的な感情表出の原則

クライエントが感情を自由に表現することを認め、それができるよう“意図的に”対応するという援助者の考え方です。

ネガティブな感情や独善的な感情は抑圧されやすいものですが、それを「表に出していい」ということを認め、クライエント自身が内面や取り巻く問題に向き合えるよう導きます。

話しにくいように圧をかけるなどせず、安心して話せる環境づくりや雰囲気づくりが大切、ということです。

3.統制された情緒的関与の法則

この原則はクライエントに対してではなく、援助者自身の心の在り方の原則です。

援助者は相手の感情に飲み込まれず、自分自身の感情に対して冷静にコントロールする必要があります。

クライエントの問題解決に向けて、感情に共感しながらも客観的な視野で関わり、クライエントが抱く様々な感情に感情移入することなく、冷静に対応しましょう。

そのためには援助者自身が自分の感情に向き合い、自己覚知することが大切です。

4.受容の原則

感情をありのままを受け入れるということです。

ありのままを受けとめてもらえることにより、拒絶や否定されるのではないかという不安や恐れから解放されます。

ただし、非人道的行為や自分や他人を傷つける行為は許すべきではありませんので、すべてを許容・容認するということではありません。

5.非審判的態度の原則

援助者側の価値観でクライエントの行動や感情を評価しない、という原則です。

善悪の問題について、援助者が判断するのではなく、「なぜ、そのような行為・行動に至ったのか、その背景はなにか」を理解する必要があります。

援助者はこれまでの生活歴や状況を分析し、善悪の判断をクライエント自身が考えられるように中立的な立場で物事をとらえサポートします。

6.自己決定

どのような選択をするかはご本人に決定権があるということです。

誰でも自分のことを他人に決められたくはないですよね。

援助者は常にご本人の自己決定を尊重する必要があります。

また、そのために自己決定できる環境を整えることも役割の1つです。

7.秘密保持の原則

クライエントに関する情報を、同意なく他人に漏らさないという原則です。

援助者はクライエントの人生や生活に関わるため、個人情報や内に秘めておきたい問題について知っていますが、個人が抱えている問題や悩みは隠したいものです。

「秘密はきちんと守られる」と実感されることで、より深い相談につながり信頼関係が生まれるでしょう。

まとめ

活字にすると当たり前のことかもしれませんが、7つ全てを意識して完璧に実践できている方は少ないのではないでしょうか。

私たち相談員の現場感覚では、ラベリングやカテゴライズすることで、スピーディーに合理的な判断をしていることは否めませんし、現場での経験が豊富になるほど、バイスティックの7原則を実践することを難しいと感じる部分をより鮮明に認識するのかもしれません。

ただ、ひとつの原理原則をみつめることで、ご自身のバイアスにも気付けるよい機会にもなると思いますので、定期的に自省するきっかけを作ってみてはいかがでしょうか。