コラム2022/11/08
誤嚥性肺炎について
誤嚥性肺炎とは
食べ物が食道ではなく気管に入ってしまった場合、通常はむせて気管から排出する反射機能が働きます。しかし、この機能が鈍ってしまうと、気管に入り込んでしまった食べ物を排出できずに肺炎を起こすことがあります。
このように、食べ物や唾液などが、気管に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)といい、誤嚥が原因で起こる肺炎を誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)といいます。
食べていなくても誤嚥性肺炎になってしまうこともあります。
原因
誤嚥には2種類あります。
食べ物や飲み物、あるいは唾液などを飲み込むことを嚥下(えんげ)といいます。
健康な人であれば、嚥下すると口から食道を通って胃に入っていきます。
しかし嚥下機能が低下すると、食べ物などが口から気管に入ってしまいます。
これが誤嚥(ごえん)です。
誤嚥性肺炎は、細菌が唾液や食べ物などと一緒に誤嚥され、気管支や肺に入ることで発症する疾患です。
誤嚥性肺炎を起こすのは、高齢の人や、脳梗塞の後遺症やパーキンソン病などの神経疾患を抱えている人が多いです。
また、口腔内に存在している細菌が原因であることが多いとされており、口腔内が十分清潔に保たれていない場合、肺炎の原因となる細菌がますます繁殖し、発症するリスクがさらに高まります。
顕性誤嚥(けんせいごえん)
食事を誤嚥すれば、当然肺炎になります。
これを「顕性誤嚥」といいます。
しかし、実際には、食事を誤嚥すると、直ちにムセが起こり、誤嚥しそうになった食物を吐き出すことができます。
実際に食事をよくむせる人でも、肺炎にかかることはそんなにありません。
不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)
口腔内には、常時無数の細菌がいます。
「不顕性誤嚥」とは、主に寝ているときに、これらの細菌を多く含んだ唾液などを誤嚥して起こるものです。
唾液は食事よりも気管に垂れ込みやすく、ムセの反射も起こりにくくなります。
寝ている間、知らぬ間に肺炎にかかってしまうのです。
早期ならば内服薬で改善できます
いつもとちょっと様子が違う、と感じたら、早めに主治医に連絡してください。
診察や動脈血酸素飽和度のチェック、血液検査などで診断をつけることができます。
誤嚥性肺炎は怖い病気ですが、早い段階で診断できれば、入院せずに内服薬だけで治療することもできます。
内服薬だけで治療が難しいと判断した場合、在宅で点滴や注射による抗菌薬の投与を行うこともできます。
次の3つに該当する場合には、原則として入院をお勧めしますが、介護体制によっては、在宅での治療継続も検討します。
食事や水分が安全に摂取できない:点滴による水分補給を行います
勤脈血酸素飽和度が90第以下:一時的に酸素吸入を実施します
見守ってくれる人がいない:急変時の対応ができないため、入院が必要です
肺炎は高齢者の死因第3位、特に誤嚥性肺炎が多い
高齢者にとって肺炎は他人事ではありません。
肺炎による死亡者数は年間約10万人。
そのうち95%は63歳以上の高齢者です。
肺炎は高齢者の死因第4位です。
普通、「肺炎」と聞けば、高熱や激しい咳・寝、息苦しさなどを想像しますが、高齢者の肺炎は症状がはっきりせず、重症化するまで気付かれないこともよくあります。
いつもより元気がない、食欲がない、だるい、微熱がある、などの些細な症状が肺炎の初期症状である可能性があります。
高齢者の肺炎のもう1つの特徴は「誤嚥性肺炎」が多いことです。
誤嚥性肺炎とは、その名の通り、口腔内のものを誤って気管や肺に落としてしまい、それが原因で肺炎が起こるものです。
お休み前の「口腔ケア」で発症率を大幅に下げる
誤嚥性肺炎の大部分は、食事時ではなく、夜間や就寝時に起こっています。特に就寝前には口腔ケアをきちんと行うことが大切です。
一度は歯科医師・歯科衛生士の指導を受けてみましょう。
口腔内、嚥下機能に問題のある方は、定期的に診察、指導を受けることで、口腔内の菌の量が1000分の1程度まで大幅に減少することがわかっています。
また、口腔ケアをきちんと実施する場合としない場合を比較して、誤嚥性肺炎の発症率が大幅に下がることがわかってきました。
まとめ
誤嚥は、高齢者には、皆起こりうる老化現象とも考えられます。
いずれはご家族・ご自身に起こりうる問題ですから、少しでも誤嚥性肺炎を理解し、考え、予防に努めていきましょう。