コラム2020/09/09
病院給食について
病院給食について
病院給食は医療の一環として位置付けられ、「入院時食事療養」として運営されています。診断を基にした医師の指示により、管理栄養士が患者の年齢、性、体格、身体活動量、栄養状態、および病状や病期などに合わせて個別に栄養管理計画をたて、アレルギーや嗜好なども考慮した食事を提供するというものです。家庭はもちろん、学校や社員食堂などの食事とは明らかに異なっている病院給食。本日は病院給食業界についてお話をさせて頂きます。
特定多数の患者が顧客
給食事業は外食産業の一分野です。しかし、一般のレストランなどが不特定多数の顧客を対象とするのに対して、給食事業は「学校給食」、「事業所給食」、「病院給食」の3つに分けられます。
学校給食、事業所給食は1日に昼食だけというケースが多く、休日もあるので稼働率が下がります。一方、病院給食は1日3食で年中無休。設備稼働率は他のものに対して圧倒的に高いことは明らかです。それ以外で、最も大きな違いは、病院給食の顧客が健常者ではなく、患者であるという点です。患者の病気の回復具合、アレルギーの状況など、先述の通りきめ細かい配慮が必要になります。
食品トレーサビリティとは
「きめ細やかな配慮」の一環として、“食品トレーサビリティ”のシステムを導入することも大切です。
食品トレーサビリティとは「食品の移動を把握できること」を指します。各事業者が食品を取り扱った際の記録を作成し保存しておくことで、食中毒など健康に影響を与える事故等が発生した際に、問題のある食品がどこから来たのかを調べ、どこに行ったかを調べることができます。
食品トレーサビリティは、記録の整理・保存に手間がかかることや、取り組みの必要性や具体的な取り組み内容がわからないなどの理由から、特に中小零細企業での取り組み率が低いのが現状です。
外部委託の進展と質の改善
過去、“病院給食の三悪”ということが言われたことがありました。三悪とは「早い・冷たい・不味い」です。材料の購入、準備、調理、盛り付けと配膳、後片付け、下膳と洗浄を1日3回繰り返すのだから、病床数が300を超えるような病院ともなると、給食は大変な作業です。スタッフの帰り時間が遅くならないよう早めに配膳するため、作り置きするので冷めてしまう。また、様々な症状の患者に無難なように味付けも平淡となってしまいます。これでは患者が満足する食事は期待できないですね。しかし、1986年の医療法改正で、最終管理責任は病院にあるものの、給食を外部の専門企業に委託できるようになり、病院給食の質の改善も随分と進みました。90年代半ばには20%程度であった外部委託率は15年には70.3%(医療関連サービス振興会調べ)と順調に拡大してきました。また、介護施設の給食にも外部委託が広まり、医療施設、介護施設を合わせて、外部委託の市場規模は約7,000億円と推定されます。
トップ企業は日進医療食品
病院給食の業界団体として、日本メディカル給食協会があります。会員数は227社(20年3月現在)。大手企業は、エームサービス以外はほぼ加入しています。業界トップ企業は日清医療食品で受託病床数の約4分の1を占めています。次のクラスがエームサービス(親会社三井物産、アラマーク・米国)、富士産業、シダックス(ジャスダック)、メフォス(エームサービス子会社)などの企業です。富士産業、メフォスは病院給食が主体だが、エームサービス、シダックスは事業所給食が主業務となっています。
会員全体の受託病床数は15年3月時点で、120万床を超えています。2000年と比べるとその数はほぼ倍増しています。内訳は、病院51.6%、特別養護老人ホーム等33.1%、介護老人保健施設13.7%となっています。
まとめ
今回は、業界のご紹介として、病院給食の業界についてのお話をさせて頂きました。普段あまり気にすることのない業界のお話ではありましたが、これも我が国の医療の一部です。これからの医療介護の取り巻く環境が今まで以上に変化していく中で、関連する業界の動向を知っておくことはサービス設計を考えるうえで示唆を与えてくれるでしょう。