コラム2021/03/02
マナーを守ろう!~携帯電話がペースメーカーに与える影響~
マナーを守ろう!~携帯電話がペースメーカーに与える影響~
スマートフォンが普及し非常に便利になった反面、歩きスマホ、運転中のスマートフォンの操作によるトラブル、イベント会場での撮影マナー違反など、ユーザーのマナー意識の低下も問題となっています。電車内などの公共交通機関での携帯電話の利用もその一つです。私も毎日地下鉄に乗っていますが、半数以上の人がスマホを見ているといった印象です。時間が空くとついつい触っちゃいますよね(笑)今日はスマホがペースメーカーに与える影響についてお伝えします。
携帯電話の使用についての基本的なルール
携帯電話の使用に関して、きちんと決まっているルールはあるのでしょうか?公共交通機関や病院内など、場所によってルールは細かくは違いますが、その全てのルールの基準となっているのが総務省が発表している「15CM指針」です。内容は、植え込み型心臓ペースメーカーや植え込み型除細動器をお使いの場合は、装着部分からスマートフォン・携帯電話を15CM以上離して携行および使用して下さいというものです。現在、様々な場所で聞くペースメーカー利用者の方々への配慮の為の携帯電話の利用に関する注意喚起のアナウンスはこの「15CM指針」が基準になっています。
基準の変化の歴史
それでは、この「15CM」という距離はどのように決まったものなのでしょうか。日本国内のおいて携帯電話を使用する上での一般的な注意事項が指針として公表されたのは、平成8年3月でした。平成7年頃には、当時急速に普及し始めていた携帯電話の電波で、病院内の医療機器等が干渉を受け、その機器に障害を引き起こす、いわゆる「電波干渉」の実例についての報道を、国内外で見かけるようになっていました。その為、実業把握をする為に不要電波問題対策協議会(現在の電波環境協議会)で、携帯電話の電波が医療機器や植え込み型ペースメーカー等に与える影響の調査を行うようになったのです。この調査の結果に基づき、「病院内では携帯電話の電源を切る」「植え込み型ペースメーカー利用者は植え込み部位から22CM離してしようする」との指針が日本では公表される事となりました。尚、この頃に発表された国際的な指針は「15CM」でしたが、当時の日本の携帯電話で使用されていた電波の周波数に、日本独特のものがあり、他の国々よりも大きな影響が見つかった為、「22CM」という指針が設けられたようです。その後、総務省が中心となり、平成12年から「電波の医療機器等に与える影響の調査研究」が毎年継続的に実施されてきました。また、この調査が始まった頃には植え込み型ペースメーカー等の電波干渉に対する耐性の国際規格が制定されました。これらの活動のさなか、携帯電話の中で最も影響が大きかった、第2世代と言われていた方式が、平成24年7月で運用停止となることが決まり、総務省が「22CM指針」の見直しに着手をしました。販売されている植え込み型医療機器は国際基準に適合しているという確認を考慮して、平成25年1月以降、国際的指針である「15CM」に調和するように改められました。
名古屋市市営地下鉄での案内アナウンス
携帯電話の利用に関して、名古屋市市営地下鉄車内でのアナウンスはどういった内容でしょうか?頻繁に利用をする方でも、思い出せないという方は意外に多いかもしれませんね。現在流れているアナウンスはこのような内容です。「車内では携帯電話はマナーモードに設定の上、通話はご遠慮下さい。また優先席付近では混雑時には電源をお切りください。」ペースメーカー等への影響を踏まえて、優先席付近の更に混雑した状況では電源を切るように注意喚起をしています。ちなみに「22CM指針」の中で運用をしていた平成25年1月以前は、「優先席付近では電源をお切りください」というアナウンスでした。
配慮を忘れずに!
以上のように、技術の進歩と確かな安全調査により、現在使用されているスマートフォン・携帯電話の電波が植え込み型ペースメーカー等に与える影響は非常に小さなものであることがわかりました。実際に、これまで携帯電話の電波が原因で、ペースメーカー使用者が死亡した例はありません。だからといって、「じゃあ気にせず使って大丈夫だね!」ではなく、「これからも事故の起こらないようにルールを守って使用していこう!」が正しい意識であることは言うまでもありません。身動きが自由に取れないほど混雑した状況等、付近に植え込み型心臓ペースメーカーや植え込み型除細動器を装着している可能性があり、スマートフォン・携帯電話との装着部位との距離が15CM程度確保できない恐れがある場合は事前にスマートフォン・携帯電話が電波を発射しない状態に切り替えましょう。
今回は携帯電話の電波がペースメーカーに与える影響についてお伝えしました。技術の進歩によって、安全性は非常に高い次元で確保されている事は間違いありませんが、「周りへの配慮」を疎かにしないよう、普段の心がけも大切ですね。