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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

血管性認知症について

コラム2020/05/21

血管性認知症について

血管性認知症について

前回は認知症の70%近い原因となるアルツハイマー病についてお話しました。今回は原因の約20%を占める血管性認知症についての内容になります。

ICD-11: 6D81(脳血管疾患による認知症)

原因は、アテローム(粥状)動脈硬化が最も多く、心臓性静脈血栓、低血圧、外傷などです。脂質代謝異常(コレステロールなど)、高血圧、血小板凝集能亢進、HDL(善玉コレステロール)低下なども関与しています。

症状

  1. 症状のあり方
    1. 急性:発作型…神経症状(大動脈の閉塞時)
    2. 緩徐…精神症状(小動脈の閉塞時)

2.初期症状…頭痛、しびれ、めまいなど 

3.精神症状
1)まだら(斑状)認知症(部分的な認知症)
2)感情失禁(喜怒哀楽に対して、閾値が下がることで、些細なことで泣いたり、怒ったりする状態)
3)人格変化(病前人格の尖鋭化)
4)意欲低下
5)せん妄(夜間せん妄が多い)
6)行動障害
7)幻覚・妄想(被害・関係・心気妄想が多い)
8)失語・失行・失認
4.神経症状
1)仮性球麻痺(發語・嚥下・呼吸などの障害)
2)片麻痺(半身不随)
3)歩行障害、四肢筋力低下、深部反射亢進、病的反射

病理所見

脳内外の血管変化とそれに基づく脳実質の変化との複合です。
  1. 血管変化…アテローム硬化、硝子様変性、血管壊死、血栓、塞栓、動脈瘤など
  2. 血管の大きさとの関係

アテローム硬化…大動脈、中等大動脈
中膜硬化…中等大ないし、小動脈の中膜に石灰沈着、硝子様変性、内膜肥厚
血管壊死…微小動脈、毛細管
3.出血…小ないし微小動脈瘤の破裂が多い好發部位は、被殻、視床、尾状核、内包、大脳皮質など

脳梗塞の発生メカニズム

  1. 血栓…アテローム硬化によるものが多い
  2. 塞栓…心臓性が最も多く、次いで、総頚・内頚動脈、椎骨動脈のアテローム
  3. 血行力学的要因…血圧低下など

まとめ

血圧の薬やコレステロールの薬を飲まれている方は多くいらっしゃるかと思います。そこまで高くないからと自己判断で飲まなくなる方もいますが、それまでの既往歴や年齢による正常範囲などを考えることが大事になります。なぜ薬を飲むのかなどもしっかりお伝えし、適切なケアにつなげられると良いですよね。次回は、認知症の原因の1つであるレビー小体病と前頭側頭型認知症についてご紹介いたします。